第19部
もうじき一年生の夏休みである。
中間試験は散々で全教科赤点でクラスで唯一全教科の追再試を受けたのぶ美であった。
のぶ美を追試再試に合格させるため、サヨちゃん先生は、放課後に、のぶ美を居残りさせて個人授業してくれた。
サヨちゃん先生は誠心誠意一生懸命尽くしてくれたーーのぶ美を教えるのに、のぶ美より半べそかきながら、必死で教えてくれたーー
しかし期末試験はサヨちゃん先生の新恋人とのデートを心配した、ジュノの忍耐強い家庭教師のおかげで、のぶ美はなんとか合格点が採れて、サヨちゃん先生の手をわずらわせずに終業式の日に無事に家に帰れるようになった。
すべてはジュノのおかげだが、のぶ美も頑張ったのだった。
一学期の終業式の日、通知表の配布があり、今日、みんな実家に帰る日。クラブ活動を優先する子や、実家の事情でずっと学生寮で過ごす子もいることはいるが、ほとんどの生徒は実家に帰省する。
のぶ美のパパがオンボロ軽自動車で、のぶ美を迎えに来てくれた。
女子寮の自室に帰ったら、室内にパパが待っていた。
「パパ、わーい、気が利くね。ありがとーね」とのぶ美が言ったが
パパはなにか「ジュノちゃんとお前に重要な話がある」と難しい顔をしている。
「実は、ジュノちゃんは僕の亡くなった姉さんが産んだ子供で赤ちゃんの時に外国に養子に出されたんだ。
のぶ美、お前のいとこだよ。ジュノちゃんはっ!」
ーーアンドロイドを産んだパパの姉ってだれっ? 笑止っ!
そもそも パパは一人っ子のはずじゃ!--
ジュノがしれっと一言「私の持ち主から、設定が変わったから、という連絡が入ったんだ」と。
ーー設定ってなんだよ?! とにかく、その養子縁組を取り持ったという宣教師の人から先週パパへ手紙が来たそうだーー
『大山信夫パパさんのお姉さま信子さんのお産みになったお子さんでアレクサンドロス家に養子行かれたジュノ・アレクサンドロスさんが12歳になられて、フォローレンス学園に入学することになりました』というお手紙だった。
ーー未来人が過去の世界の人間の記憶を操作するのはあまり気分の良いことではない。しかも私のパパの記憶を……ジュノに文句を言っても仕方がないのだが……まぁ、私を成長させて幸せにするためにジュノを派遣してくれたのだ。好意的に取ろう。それしか仕方がない……
パパが言った
「きみの日本名……いいや本名は大山樹野と言うんだよ。この夏休みは良かったら、ずっと我が家で過ごしてくれればいいよ」
……結果往来。ジュノと夏休み中ずっと一緒にいられるなら、のぶ美に文句は無いっ!……
ジュノはのぶ美に付いて大山家にやってきた。
大山のぶ美のパパとママを前に「おじさま、おばさま、この夏休みはお世話になることになりました。よろしくお願いします」と家のドアのところで、深々と頭を下げて笑顔で挨拶をした。
そして、その日のうちにジュノはやらかしたっ!--パパとママが三つ子の妹、一重、二重、三重を
連れて小学校のPTA懇談会に行っている隙にーー
ジュノは、いきなりのぶ美の観ている前で、パパのオンボロ軽自動車を半透明なドームで覆い、数分後には、パパの軽自動車は製造直後のピカピカの新車になっていた。
我が家……庭付き一戸建ての借家だが、台風のとき雨漏りがひどいのだが、大家さんに電話しても中々直しに来てくれないでママが困っていたのだが、家を大きな半透明のドームで包み、時間を逆転させて、のぶ美たちの大事な我が家(借家だが)は……オンボロな築40年モルタル木造瓦拭きは、新築間もないピカピカの真新しい家に変わってしまった……
ーー小学ニ年生の三つ子の懇談会が終わって、パパとママが帰ってきたら、車と家を見て、二人は何と言うだろう!?--のぶ美は、わくわくすると言うより、少し怖かったーージュノは家の電気製品をすべて半透明のドームで覆い数秒でピカピカの新品にしてしまった。テレビ炊飯器冷蔵庫アイロンコンピュータミシン掃除機洗濯機冷房機etc……
「ジュノちゃん、やり過ぎかも」とのぶ美はジュノに苦笑いしながら言ってみた。
しかし、張本人の仕掛け人のジュノは無邪気に笑って、そのまま、のぶ美を誘って、のぶ美の唯一の得意料理であるカレーの製作に二人で取り掛かったのだった。
ジュノが笑って言った「今夜はカレーだよっ!」……ご飯を忘れずに炊いておこう……うちのママはカレーのとき、よくご飯を炊き忘れる……
そろそろ夕方でパパとママと三つ子たちが小学校から帰ってくる。




