第17部
全員がさっきまで死にかけていたのが嘘のように、猛然とスープとクロワッサンをパクついていた。
飽きれたことに、三人の王子は愛の告白だけ逞しい。のぶ美の周りの席で、食事をパクつきながら、のぶ美に向かって「のぶ美、愛してるよ♪」「のぶ美、君が一番魅力的だよ♪」「のぶ美、最愛の人よ♪」と愛の告白を続ける。1回の愛の告白をするとハートマークが1個出る。愛の告白をしまくる王子たちの周りにはハートマークが飛び交っている。のぶ美もにやけてハート目のままである。
「愛の告白なんて一生に1回で十分じゃね? 愛の告白するか食事するかどっちかにしろよ」とジョーとボンボンが見かねて三人の王子に注意したが三人から無視された。
クロワッサンをパクつきながらジョーが皮肉っぽく言った。「リインの町で普通は旅人の服くらい買ってくれるもんだよな。武器だって盗賊には鉄のナイフと僧侶には鉄のこん棒くらいはね」 ボンボンも、ポタージュスープを飲みながら、のぶ美を非難するように睨みながら頷いた。
オラクルの宿で夕食をたらふく食べた後、女勇者のぶ美はPTメンバーを引き連れて武器屋へ直行した。
ジュノが言った「お風呂行きたいんだけど」「このあとにしてね」と女勇者のぶ美。
武器屋で女勇者のぶ美はみかわしの服を3着買い、魔法使いジュノと盗賊ジョーと僧侶ボンボンに渡した。
そして、聖なるナイフとモーニングスターを買い盗賊ジョーと僧侶ボンボンに装備させた。
盗賊ジョー「OKOK~こうでなきゃいけねぇぜっ♪」
僧侶ボンボン「わぉ、あ・り・が・と・だぜっ♪」
ーー仲間ではあってもあくまで傭兵なので、バイト料の延長料金も前払いで払わねばならないっ。
そこらあたりはこのVRMMOはシビアである。すべてはリアルなのだっ!
勇者は『雇用者』なのだ。傭兵への福利厚生も考慮しなければならないっ。
VRMMOのこの世界ではAI仲間も非戦闘NPCも全員、生きているのだっ!
既婚者となった男女勇者にはそれぞれ配偶者への責任も問われるーー
逆ハーレムにメロメロでーーこんなことなら、助ける王子は一人にしとけばよかったーーとは絶対に思わないのぶ美女勇者である。
ジュノの武器を買おうとして、のぶ美はジュノが樫の杖とは違うりっぱな杖を装備しているのに気が付いた。
「ジュノちゃん、その杖どうしたの?」「山道の途中にあった宝箱に入ってたよ」とにこやかに言うジュノ。彼女は宝箱から雷の杖を見つけていたのだった。
「あらら、それならそうと言ってよね。よかったわ」これで魔導士の杖は買わずに済んだ。
女勇者のぶ美は自分のために魔法の鎧セットを買った。
女勇者のぶ美は自分に破邪の剣を買った。
盗賊ジョーが言った「魔法使いにはみかわしの服より魔導士のローブの方が攻撃魔力が上がっていいんじゃねーのか?」「俺もそう思うぜっ」僧侶ボンボンもそれに同意した。「いいや、ジュノちゃんはたぶんみかわしの服セットのが良いと思う」と女勇者のぶ美。「なんでもいいよっ」とジュノはお風呂に行きたくて不機嫌。武器屋で武器を買っている間も、三人の王子たちはのぶ美の周りを取り巻いて愛の告白を止めない。
「ああ、のぶ美僕の最愛の人よっ♪」「おお、愛しい人よのぶ美♪」「愛してるよっのぶ美♪」武器屋にハートが飛び交いまくっている。ここでは人間の気持ちはグラフィックに正直に表示されるので、のぶ美の眼はハート目のままである。
全員のグラフィックが変わり、みかわしの服セットを着たジュノ、ジョー、ボンボンは頭から足先まで緑の制服を着ている妖精のようである。
のぶ美は「なんかマッチョ戦士みたいでやだーっ!ちっとも可愛くないっ」魔法の鎧を自分で買ったのにご機嫌斜めである。
残金が千ゴールドちょっとになってしまった。そのお金をジュノに渡して「あとバニラグラン行く準備お願いね」と頼み込む。ジュノは快く引き受けた。
ようやっと宿屋の大きな露天風呂で全員が気持ちよく入浴する。(男女混浴であるが、そこはご愛敬こだわらないとするっ♪)
ジュノはお風呂に入れて大満足だけれど、ふとのぶ美に聞いた。「オラクルじゃあ、魔物使いの転職クエストがあったはずだけど、どうするの?」「めんどくさいからもういいやっ」とのぶ美。
「転職クエスト片しても、勇者はいないとだめだからあなたしかなれないし、転職したらまたレベル1から育てないとダメだしね」「そうだね、めんどいね、やめとくか」とジュノも乗り気ではない。
大きなパンと水の用意に回復アイテムや薬の用意はジュノに任せた。
次の日の朝、準備万端に整え、愛の告白を止めないハート飛び交う三人の王子の逆ハーレムを引き連れて、ハート目の女勇者大山のぶ美のPTはついに、呪われたバニラグラン王国の解放に立ち向かう(キリッ)




