第14部
日曜日に学生食堂でジュノと大山のぶ美は朝ごはんを食べ終えた。
大山のぶ美が自室でジュノに言った。
「この時代にまだ実現していないもので、あなたが来てくれたら、私が一番体験したいもの、何かわかる?」
「何かな?」
「もちろん、VRMMOだよ。あるんでしょ? ねえねえ?」
「ああ、あるよ。でも私の持ってるツールは、VRMMOのRPGツクールしか無いよ。有名ゲームは参加料金が高いし」
「キャーー!! VRMMOのRPGツクールなんて最高ーーだよっ。それ一人プレイ用?」
「いや、参加者は何人でもいけるよ。この時代のどんなゲームも素材にしてVRMMOに自由に設定できるよ」「じゃあ、友達全員で参加とかもOK?」
「いいよ、でもゲーム作ってから呼んであげた方がいいと思うけど」ジュノは自分の携帯をカチャカチャと操作している。「じゃあ、友達誘うのは、またこんどにしよう」とのぶ美はあっさり言った。
のぶ美の目の前の空中に小さなコマンドが現れた。
「そのコマンドで自由にゲームが創れるよ」
「キャーー素敵っ」とのぶ美はコマンドの前に立ったが、固まっている。
「どうかしたの?」
「こんなむずかしい操作盤、出されてもどうしろと? ジュノちゃん、一番簡単な『イージーモード』って無いの?」
「まったく、のぶ美は仕方ないなぁ」ジュノは操作盤を自分の前に引き寄せた。
「携帯ゲームで是非VRMMOにしたいゲームってない?」「あるある」
「なに?」「ファンタジークエクエだよ」
「じゃあ、そのゲームを出してスタンバイしてくれるかな」
のぶ美は携帯電話の特設ダウンロードサイトから、自分のアカウントを呼び出してファンタジークエクエをダウンロードしていつでもプレイできる状態にした。
「絵柄はドット絵かアニメ調か写実的か、どれがいい?」
「アニメ調がいいな。モンスター倒す時リアルだと可哀そうで嫌だから」のぶ美はすこし身震いするように言った。
「じゃあ行くよ」ジュノが笑いながら「ぽちっとな」と言った。
「ああ、言っとくけど、タイプ文明の時代にはVRMMOの世界にいる間は自分のリアル時間が止まってるんで、好きなだけゲームは楽しめるから」転送される直前に、ジュノが素晴らしい事をさりげなく言った。
ーータイプ4文明万歳!--のぶ美は正直にそう思った。
のぶ美とジュノは初期町のアランハットの酒場にいた。
「二人プレイモードでは、勇者は一人しかなれませんよ」と酒場のマスターがすまなさそうに言った。
「で、どちらが勇者をなさいますか?」「わたしーー」のぶ美がはち切れんばかりに元気よく答えた。
「はい女勇者さまですね。ではもう一人の方は、戦士か僧侶か魔法使いか、それとも盗賊か海賊か、吟遊詩人か、どれがいいですか」
「私は何すればいい?」「なんでも好きなのしてくれていいよ」「だってPTバランスがあるでしょ?」
酒場のマスターが言った。「足りない職業はあと二人を1階か2階にいる人の中から自由に誘えますよ」とにこやかに言ってる横から、「親父さん、ジンカクテル2つ頼むよ」と離れた席から2人のお客が注文を叫んだ。「はいよ、いま直ぐ作るよ。じゃあ、決めといておくれ。私はオーダ入ったんでね、カクテルを作らないと」
のぶ美はジュノに言った「ねえ、ファンクエにこんな場面ないよ?」「VRMMOは未来のメガロコンピュータが創り出した仮想世界だからだよ。この世界はほぼ実際の世界と変わらないよ。ストーリはファンクエだけどね」「そうなんだ、わくわくするね。少し街の様子を見てみるね」とのぶ美を外へ出た。そして「あれっ!この町は、ファンクエ5だ!」とすっとんきょうな声をあげた。「しまった、ファンクエ3のつもりで5を立ち上げたんだ……げえっ!」「どうかしたの?」「このストーリはファンクエ3から500年後の世界なんだけどね……結婚イベントがあるんだよっ! ぎゃあ~~~っ!」
「へえ、べつにいいじゃん、仮想現実なんだから」「しかも子供がそのあと2人産まれるんだよっ!!」
「あははは……」「よりにもよって、VRMMOでそんなのいやだっ! 私まだ12歳だよっ!」
「じゃあ、リセットする?」「うん」「OK,ちょっとまってね……あれ、おかしいなリセットできない?」
空中にコマンドが現れ『サーバーの負担が大きくなるため強制終了はできません。ストーリクリアまでゲームの中断はできません』という文字が浮かんだ。
「あららっ」「げえっ!」
ジュノが「たしかこのゲームは完全マルチストーリーだから、結婚しない選択肢でもエンディングまでいけるはずだよ」「それだとね、この町で最弱のタメネギお化けでレベル上げしてlv50で強制ワープで最後の町へ行くっていうストーリになるよ」とすでにクリア済み経験ありののぶ美。「それ縛りプレイじゃない?」「それもいやだっ」




