第13部
ポピがのぶ美の携帯電話のデモ画面から勝手に出て、お腹空いたと「ポピポピ」鳴いている。
「あ、ごめんね」のぶ美はあわてて部屋へ戻りカップラーメンを取り出しお湯を入れたが待てど暮らせどラーメンができない。「時間止まってるんですけど」ジュノが言った。
「あ! じゃあ戻して!」「エネルギーを食うんで、スイッチちょい切ったり入れたりは勘弁して。」仕方ないので、大事にしていたメロンパンをあげた。
ポピは美味しそうに食べると、外に出て大きくなり、「ポピポピ」と鳴く。
自分に乗れ、と言っているようだ。「何か要らない機械はないかな?このままじゃポピは実体がないので乗れないよ。エンカウントして移動干渉できないのよ。」ジュノが言ったので、「?!」引き出しの奥に入れてた、中国製の卵っちの壊れた物(パパに大昔夜店で買ってもらった思い出の品)を出した。「これでもいい?」「OK」「エアマシンで機能を拡張する」とか言ってポピに与えるとポピはそれを食べてしまった。そして、理屈はわからんが、とにかく、ポピは乗れるようになった。
なんだかそのときのぶ美の心の中でファンファーレが♪ぱっぱかパーンと鳴ったような気がした。
ポピに乗るとジュノが言った「のぶ美も非実体のステルス状態になって移動できるようになるよ」だそうだ。
時間を止めたまま、ポピに乗るとそのまま壁をすり抜け、時間の止まった世界を、二人は大駅前ビルに向かって一直線に飛行した。途中のどんな建物もすり抜けて行けるのが不思議な感覚だ。
しかし途中の繁華街で東野順平が若いラメ生地の派手な衣装の女と手を組んで歩いている状態でフリーズしているのを目撃した。二人は何も見なかったことにしようと心に決めた。
墓骨芸能ビルの中へポピに乗って壁を易々とすり抜けてはいると、新人芸能人の卵たちのダンスレッスン教室や、歌のレッスン教室が開かれていた。
ステージ練習が行われて、つぎに売り出される新人歌手のグループらしい人たちの特訓が行われているスタジオセットもあった。
ポピに乗って二人は上に上がっていった。
「一ノ瀬渚さんはどこにいるの?」
「いまは、地下の最下層の倉庫に反応があるね」「ただし携帯電話は破壊されてるけど」「げ!」「じゃあ、そこへ行ってみよう」
ジュノは時間を戻した。一瞬でまわりが動き始めた。
地下の最下層の倉庫へ行ってみると、そこは、かび臭い下水の匂いのする澱んだ空気の暗闇だった。
錆びた階段の非常灯のランプだけがあたりを照らしていた。
なんと一ノ瀬渚さんと、小宮長閑さんと知らないおじさんが拘束具で縛られていた。
小宮長閑を庇うように知らないおじさんは小宮長閑の身体に自分の身体を密着させて、笑い声を漏らしている向こうの影の人物たちを睨みつけていた。
一ノ瀬渚は服が泥だらけになり所々破けていた。そして二重三重に拘束道具でがんじがらめにされていた。おじさんと小宮長閑さんより少し離れたとこに転がされていた。
暗闇に目が慣れてくると笑い声を漏らしいる影の人物たちの顔が見えてきた。
真ん中に整形手術のヒアルロン酸注射でパンパンに膨れ上がった顔をした墓骨芸能プロの女社長が薄ら笑いを浮かべて椅子に座っていた。もう60歳のはずだが顔にしわは一つもない。しかし満月のようなパンパン顔だ。厚化粧に浮かびあがった顔は薄笑いを浮かべて楽しそうだ。周りにはスーツを着たがっしりした体つきの男たちが女社長と同じように薄ら笑いを浮かべている。マッチョなスーツを着た男がスタンガンを持ち、おじさんに近づいていく。女社長の周りで薄ら笑いを浮かべている男たちは顔が痣だらけで目の周りが赤黒く腫れ上がり時々痛いのか、顔を歪める時がある。笑うのか痛いのかどっちなんだとツッコミたくなる感じである。
「さあ、おとなしくこっちに絶対服従を誓えばこれ以上痛い目にはあわさないぜ。おっさん」
「うちの娘にこれ以上何もするな。お願いだからもう、これ以上何もしないでくれ」
墓骨女社長「あんたは、娘が一生稼いだ金をうちが60%でそちらが40%という破格の条件の契約にサインさせてやったし、あんたらはもううちの商品さ。ただね絶対服従を口で誓うだけじゃなくて、シャブを少しばかりお嬢さんに投与しときたいだけさ。うちの投資と同時にね」
「だから、お願いだから、これ以上のことはしないでくれ!」おじさんはもう泣きながら涙声を振り絞って墓骨女社長に向かって叫んでいる。
「うちはね、あたしに絶対服従を誓わない子たちにはシャブを打ってるんだよ。」
小宮長閑は可愛い顔はもう涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。ぐったりしている。
まるでもう泣きわめくだけ泣きわめいて、精魂尽き果てた、という感じだった。
一ノ瀬渚は泥だらけの顔に口と鼻の周りにガムテープがぐるぐるに巻かれていて眼だけがようやく見えている。意識があるのは眼が動いているのでわかるが、どうやって息ができてるのか。拘束金具で全身が梱包状態だ。
墓骨女社長は吐き捨てるように言った。「いいかい、あたしは昼間はいろいろ事務所の仕事で忙しいんだ。
絶対服従の条件を飲んで娘にシャブを打たないなら、まだ当分ここで契約条件を飲むまでいてもらおう。」
「この雌犬は、いますぐにちゃっちゃと海へ持っていって沖の方へ捨てて来なっ」女社長はそう、顔がボコボコの痣だらけの男たち命じた。「まったく、大の男がうでっぷしで雇ってるのに、7人もそろって女一人にボコボコにされやがって」と女社長
「この雌犬は面見て思い出したよ。たしかに7、8年前に日本国中で話題になった天才女子高校生柔道チャンピオンの一ノ瀬渚とかいう女じゃないか」
「そういえば、そんな女いましたね」「いたいた、柔道美少女とか言われてたなぁ」「これがあの女の子か? 婆になったなぁ」
赤黒い痣ができた眼をしょぼしょぼさせながら、7人のスーツを着た屈強な男たちは、青虫の様に身をよじっている一ノ瀬渚を担ぎ上げると、ロッカーの中に押し込もうとした。
大山のぶ美とジュノは空中でその話を一部始終聞いていた。
「納得いったけど、どうしようか」「まず、女刑事さんを自由にしてあげないとね」とジュノは言うと、
眼からレーザーの様なものを出した。
レーザー光線は7人の男たちに担ぎ上げられた一ノ瀬渚の身体にあたり、
一瞬ぐるぐる拘束金具と口と鼻に巻かれたガムテープが消えた。
「あなたはここにいてね」と大山のぶ美に言うと、ジュノがポピから飛び降りた。
真っ赤なジーンズの上下を着たくノ一の様な少女の急な出現に一瞬、7人の男は気を取られた。
が、すぐに一ノ瀬渚の拘束金具が無くなった状況を見て、彼女を力ずくで床にねじ伏せた。
ジュノは拳を構えると、つぎつぎに3人の男の腹部に1発づつパンチを入れた。男たちが3方に吹き飛んだ。
4人の男に上半身を押さえつけられた一ノ瀬渚は無理やり力を入れて、グイと身体をねじった。
男たちの手をすり抜けたそのとき上半身のシルクのブラウスとタフタのスーツの上がビリビリ!引きちぎられて破れた。一ノ瀬渚は上半身が裸になり半裸になった。
鍛えられた美ボディに巨乳が丸出し。空になった皮の拳銃ホルダーだけが彼女の素肌の上半身を締め付けている。一瞬、彼女の巨乳の美乳に見惚れた男の手をつかみ、一本背負いで投げ飛ばしそのまま大外刈りの連続技をかけて美しく投げ飛ばした。
おじさんもすかさず参戦し、頭突きで一人の男の股間を撃破して男は激痛にうずくまった。
一ノ瀬渚は、殴りかかってきた、もう一人の男を一瞬でかわした。
一本背負いからの連続大外刈りの大技をかけた。
男は気絶した。瞬く間に7人の男は床に大の字になって転がった。
ジュノはすぐに眼からレーザー光線(?)を出して、
おじさんんと小宮長閑の両手につけられていた拘束具をはずした。
小宮長閑は呆然としていた。
おじさんは一ノ瀬渚のほうへ走っていくと自分の上着を脱いで彼女に着せた。
一ノ瀬渚はおじさんに「ありがとうございます、小宮さん」と言った。
ジュノは小宮親子の横をすり抜けすぐに、墓骨女社長の真後ろに回って、
女社長が逃げない様に、その服のすそを捕まえていた。
「この小娘、なにするんだ。とっととおはなしっ」
墓骨女社長は、座っていた折り畳み椅子でジュノをなぐった。
ジュノは女社長の服の裾をつかんだまま微笑んでいる。ぜんぜん効かないようだ。
大山のぶ美は、たまらずポピから飛び降りると、自分の携帯電話を出して一ノ瀬渚に差しだした。
一ノ瀬渚は3人目の男をきれいな大外刈りで気絶させたばかりで、息が上がっていた.
彼女は恥ずかしそうに右手で自分の巨乳を覆いながら「ありがとうね」と左手でうけとった。
一ノ瀬渚は、大山のぶ美の携帯電話で、警察に電話して事の次第を報告した。
おじさんは小宮長閑の元に駆け寄ると、そっと娘をハグした。
小宮長閑は涙でくしゃくしゃの顔で「パパ、胸毛がきもい」と顔をしかめた。
おじさんは渚に上着をあげて上半身裸だったからだ。
おじさんは照れくさそうに娘を抱きながら苦笑した。
一ノ瀬渚は、墓骨社長に近づくと、
「未成年誘拐監禁と麻薬等取扱違反の現行犯で逮捕します」と言った。
そして墓骨社長の上着のポケットから自分の拳銃を取り戻すと、素肌に装着している拳銃ホルダーにストッと収めた。
「さっき、おまえから取り上げた時、面白半分に全部弾を遊びで撃っちまうんじゃなかったよ」墓骨社長は、残念そうに言った。
この後、墓骨芸能プロの闇が暴かれこの醜聞によって、芸能界とテレビ界に少なからぬ社会的な混乱があったが墓骨芸能プロダクションは社長が代わりあらゆる醜聞をのりこえて継続していくことになってはいる。
4階の小宮長閑さんの自室にジュノと大山のぶ美は招かれた。
ルームメイトの入れてくたオレンジペコを飲みながら、4人はおしゃべりに興じた。
小宮長閑さんは両親が離婚して母親に引き取られたが、母親と母親の再婚した義理の父との折り合いが悪く、全寮制のこの私学に来たのだそうだが、父親と暮らしたくて、この学校を飛び出して父のもとにいくつもりだったそうだが、そのあと、彼女の望み道理に親権はおとうさんになったのだが、父親はひんぱんに転勤する仕事で、結局彼女はこのまま、この学校にいることになった小宮長閑さんなのでした。
小宮長閑さんは、大山のぶ美が借りていたあのパーフェクトPOPZのCDとグラビア雑誌をプレゼントとしてのぶ美にくれました。
大山のぶ美はそれだけでもう有頂天です。