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「ううん……」
とりあえず警察か、その前に救急車か、情けない事に目の前の状況が整理出来ずに右往左往していると、女性の口からうめき声が聞こえた。
「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」
再度女性に近付き、何度か耳元でそう話しかける。
すると女性はまた何度かうめき声をあげた後、ゆっくりと目を開けた。
「……ここは?」
どうやらまだ焦点が合っていないようで、独り言のように呟く。女性は寝起きのような感じで、ゆっくりと手を頭に回し上半身を起こす。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
目を覚ましたものの、依然もうろうとしている女性を放ってはおけず話しかける。
すると、ようやく女性は俺の存在に気付いたようで、上半身だけを起こした格好でこちらを見て言った。
「……すまない、状況が理解出来ないのだが、あなたが助けてくれたのか?」
「いえ、自分はただ倒れているあなたを見つけただけで特に何も……」
そう返すと、女性は少し考えこんだ後、続けてこう聞いてくる。
「ふむ……、そうなると私が気絶する前の状況も存じぬか」
その言葉に、俺は首を縦に振った。
何となく、女性の話し方に古臭いような、堅苦しいような印象を受けた。
「ところですまないが、ここがどこなのか教えてくれないか?」
そう訪ねてくる女性に、一瞬変な事を聞くのだなと思ったが、考えれば先程まで倒れていたのだ、記憶が飛んでいたり、事件に巻き込まれたという可能性もあるのではと思い直す。
「ここは佐賀ですけど」
本当は市や町の名前を言った方がいいのかもしれないが、何となく混乱させない方がいいような気がして、まずは県名のを教える。
「サガ……、サガか、聞いた事の無いな」
どうやら心当たりの無いようで、顎に手をやり考え込む。
やはり見た目からして外国の方なのか、それにしても日本語が異常に上手いような気がする。どちらにしても、この女性は何か厄介なトラブルに巻き込まれているような気がする。