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俺の座るパチンコ台は激アツの『最後の決戦リーチ』を長々と映した後で、プシュン、という情けない音で沈黙してしまった。盤面には565と、外れの結果を告げる数字が踊り、俺はただ何とも言えない感情で閉口するしかなかった。
「お〜、絶対当たると思ってたのによぉ、運無いな」
隣のパチンコ台に座る林は、抑揚のない声でそう言った。
まだもしかしたら復活の可能性もあるという俺の希望をあざ笑うかのように、目の前のパチンコ台はただ無表情に次の外れ演出を表示する。
「え〜と、勇者群を経て、激アツ勇者カットインを経て、激アツのストーリーリーチを経て……」
「やめろ」
悪友の林は表情を崩す事なく、先程外したパチンコのリーチ演出を淡々と読み上げる。
俺のパチンコ台はさほど当たる可能性もない、無駄な演出をひたすら繰り返していた。
「だって、絶対当たると思うじゃん、あんな長々とそれっぽいリーチを見せられてさぁ」
そういたずらに呟くのは中学からの悪友である、『林 鷹』で今日は林の趣味であるパチンコに付き合って、半日無造作にハンドルを握り締めていた。
「まぁまぁ、そんな落胆するなよ……、おっ!?チャンス演出」
そう言う林の盤面では特に騒がしいような演出も無かったのだが、ほんの数秒のリーチアクションの後にあっさりと盤面には444と、当たりを告げる文字が踊っていた。
「よっしゃ、今日は絶好調だぜ!」
本日何度目かも分からない大当たりに上機嫌になる悪友を前にため息をつく。そうとも、この世の中は理不尽で満ちているのだ。
次々と当たりを繰り返す林と、逆に静かな俺の台。仕方ない事ではあるが、少し怒りもわいていくる。
「……俺、休憩所で漫画読んで来る」
「おう、いってら〜」
こう返す友人の頭をはたいてもバチは当たらないはずだ、この後林の当たりが途切れる数十分間俺はただ何とも言えない感情で、昔読んでいた漫画の続きをパラパラと読んで時間を潰した。