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「ここは私たちに任せて先へ行って下さい!」
そう叫ぶのは仲間である女戦士。彼女は迫り来る魔物の群れを一手に引き受けようと、足を止め魔物達の前に立ちはだかる。
「そんな!私、貴女1人置いてなんか行けないよ!」
そう返し、立ち止まろうとした私を賢者が無理やり手を引く。
「ダメです!貴女は戦士や魔法使いの覚悟を無駄にするつもりですか!?」
そう諭す賢者の顔は今にも泣きそうな顔で、きっと辛いのは彼女も一緒だった。
魔王城の中をひたすら走る私たち。魔法使いは3人が城に入るため、1人で城門の魔物達の気を引き、そして戦士は狭い通路の中、今でも壁となって追っ手がこないように戦っている。
それも魔王さえ倒せば、倒しさえすれば終わりなのだ。後ろ髪の引かれる思いで、それでもなんとか魔物を蹴散らしながら魔王の座る最深部へと向かった。
「よくここまで来れた、まずは褒めてやろう勇者よ」
ようやくたどり着いた魔王の前。ワインのように人の血を呑みながら優雅に構える魔王に対し、私たちは既に満身創痍の状態であった。
「しかし、残念ながらその傷ではまともに我と戦えまい」
そう高らかに笑った後で、ゆっくりと魔王は玉座から立ち上がる。
そうでなくとも魔王の力は強大なのに、こちらは肉体的、精神的にも万全ではない。ようやくたどり着いた魔王の元だが、ほとんど勝ち目は無く勇者の頭の中は絶望に満ちあふれていた。
「それでも、私は負けるわけにはいかないっ!」
カラ元気かもしれないが、そう自分を鼓舞する。それに、どんなに絶望的な状況であろうとも負けられないという事実には変わらないのだ。
精霊の加護を受けた剣を握り直す。本来ならば、加護と私自身の魔力のお陰で羽根のように軽い剣なのだが、魔力の尽きかけた今では剣本来の重さに戻っており、ただ構えるだけでもフラついてしまう。
「やぁぁぁぁ!!!!」
声を絞り出し、力を振り絞り魔王に斬りかかる。
しかし、当然魔王にとっては遅すぎる速度で、最小限の速度でかわされてしまった。