消滅を望む者
プラム王国の亡霊の襲撃を受けたシュネーバルの街では、僧侶の結界に守られた中央寺院だけがこの難を耐える事が出来ました。再び亡霊の襲撃を受ける中、寺院内で奇病が発生します。結界に人手を取られながらも、逐次的に奇病を治療する僧侶達。しかし治療と罹患のイタチごっこで、根本的な根絶方法は現在の僧侶の知識はおろか、500年近くの蔵書を誇る寺院の図書室でも発見できませんでした。
死刑執行人の亡霊ポンデライオン(以下 PL)が襲撃する中、この亡霊の対抗方法を教えた哲学者の亡霊フレンチクルーラー(以下FC)。彼ならば奇病についての知識も提供してくれるかもしれな い、この可能性に賭けた大地の僧侶ハルナとS戦士ブラックサンダー(以下BS)はFCを探しに行きます。結界の外で大声を出して探し回る二人。武装し ているせいかPLの襲撃を受けることなく、FCを探し当てます。奇病の詳細を説明し、治療法を問う二人でしたが。
「前にも言ったがお前達に味方するつもりはない。
確かにその病気ならプラム王国でも莫大な犠牲の果てに治療法を見つけ、
そしてその知識はわしの灰色の頭脳の中にあるが…。
この時代にその知識が失われているのなら、
この時代の人間が再発見しなければならない。」 FC
「この病気だってお前達の襲撃から発生したもの。
いわば、お前達がこの時代に干渉したからこそ、現れた物だぞ。」 ハルナ
「病原菌はこの時代にも森の奥深くに存在していて、
この時代の生き物によって運ばれた物。
我々が直接的な原因ではない。ならば干渉する気はない。
もしこの病で滅びるなら、滅びれば良いだろう。」 FC
「おい、お前の望みはなんだ?
この地獄のような世界で、俺達が滅びるのを見届ける事か?」 BS
「地獄?
お前達の目に映る空は何色だ? 地面は? 空気は?
わしの目に映る空は血の様に赤黒く、
地面は鉄の様に硬く鋭く、溶岩の様に空虚でごつごつしている。
空気は喉が凍るほど冷たいか、燃える様に熱い。
こうして言葉を交わしていても、やはり我々は全然別の場所にいるのだ。
わしの望みは魂が擦り切れるまで自然の摂理を守り続けること。」 FC
「だが存在する限り、またお前はこの時代に干渉するだろう。
ならばその魂、すぐさま末梢してやるから協力しろ。」 BS
「そんな事が出来るなら、協力しよう。」 FC
BSの策とは、PLにFCを殺させる事でした。そこで武装を解いたハルナを囮に、結界の外を独りで歩かせます。
「後ろだぱるー!」
不意に背後に現れ、斧を振り回すPLに対し、BSの声で寸でのところで避けるハルナ。
「お前はこの間の!?
だが、この距離では魔法を使う暇も与えぬわ!
この俺様のオーガ並のパワーでミンチだぜ!」
最初の一撃で態勢を崩したハルナの頭上に、必殺の斧を振り下ろすPL。それを見ながらまるで助ける気のないBS。
がつん
「ぎゃはははっ………はぁ?」 PL
斧の刃より一歩踏み込み、交差させた両手で柄を受け止めるハルナ。
「オーガか。確かに数年前なら恐ろしい相手だったが。
僧侶系クラスは戦士系に次いで高い防御力を誇る。
今10レベルを超えた私なら、素手でも十分対処できるのだ!
サマハとは違うのだよ。」
両手を返して柄をつかむハルナ。
「封印!」
「はげびょん!?(びちびち)」 PL
「おい、変態仮面。FCを殺したいのだろう?
お膳立てをしてやるからやってみろ。」 ハルナ
粋がって抵抗を試みるものの、ハルナの懇切丁寧な説得によってついに心折れ、協力を誓うPL。そしてFCの前へ。
「ほう…。
だが私を傷つけられる証拠を見せてほしい物だな。
(病の治療法を教える前に死んでやる。)」 FC
「いいだろう。行け!PL。」 ハルナ
「アイアイアイサー。
(ククククッ、余計な情報を話される前にぶっ殺してやるぜ。)」 PL
封印を解かれ、FCの頭蓋目指して斧を振り下ろすPL。
「ひゃっはーっ、死ねや~!」 PL
「潰れろ!」
ぎゅっ。どん。
斧がFCの頭蓋に落ちる寸前、ハルナが右手を突き出して握るしぐさをすると、PLはぎゅんと斧の中心の一点に収縮して行きます。そして斧の軌道はBSの肘鉄で肩口へと反らされます。体半分を削られるFC。
「きゃ~~~、暗いよ、狭いよ、怖いよぉ~~~!」 PL(←閉所恐怖症)
「分かった。確かにわしを消滅させる力があるようだ。」 FC
こうして奇病の治療法を聞き出し、その後FCの願いを叶えるハルナ達でした。
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