表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北東寺榛名と奇妙な世界  作者: 石表
71/81

廃墟の哲学者

 実体化し巨人となった門番の亡霊。これが倒れた後、改めて見たシュネーバルの街は、倒壊した家屋の瓦礫の間に散らばる街の人々の亡骸と、血と腐臭に誘わ れて現れてそれらに群がる、普段は森の奥底に潜んで人里には現れない狼などの獣や、人食い巨大芋虫、殺人兎などの魔物の姿でした。

 幸いにも街の中心部近くの寺院では、僧侶達の結界に守られて危うく難を逃れた人々と会遇。亡霊は去ったと判断して結界を解き、寺院を中心に亡骸の埋葬を始めます。その間、ハルナ達は獣や魔物を追い払い、あるいは退治していきます。



そんな日々が数日続いた時でした。


「きゃー!」「わー!」


  大地の僧侶ハルナとS戦士ブラックサンダー(以下BS)が、遺骸を食べ漁る巨大スベスベケブカガニを倒した時、街の人々の悲鳴が上がります。急いで現場に急行するぱる なさま達。そこには首を切り落とされた、あるいは頭から真っ二つにかち割られた街の人々の遺体と、逃げまどう人々を追い回す、頭に目だけ穴の空いた黒いマ スクを付け、不吉な大きな斧を持った半裸のマッチョがいたのです。


「キサマぁ~!止めろ~!」 ハルナ


 一目で魔物と判断したハルナは魔法の鎚を投げつけ、BSは突進すると大剣で胴切りにしようと振り抜きます。しかし、鎚も大剣もマッチョをすり抜けます。それはまたしてもプラム王国の亡霊…。



「やだね。俺様は人殺しが大好きなのさ。

 死刑執行!」 マッチョ


それはハルナ達を無視して、街の人々追い回し、惨殺して行きます。これを追って行くハルナ達。


「待て、亡霊!

 お前も戦士なら無抵抗の者を狙わず、私達と戦え!」 ハルナ


「…戦士ぃ~? 違うな~。俺様は死刑執行人。

 自分が死ぬ危険も無く、大勢の前で人を殺せる、最高の特権階級さ。

 そして亡霊になった事で誰にも邪魔されずに職務に励める。

 俺様は勤勉なのさ。」 マッチョ


「腐ってる!」 ハルナ


「死んでるし、とっくに朽ち果ててるがな。

 それにしても物理的な体を持たずに、どうして物理的に人を切断できるんだ?」 BS


「実体はあるのさ。体じゃない、あの斧が依り代だよ。」



いつの間にか現れた青い顔の老人がつぶやきます。


「キサマ、フレンチ・クルーラー!

 余計な事を言うんじゃねぇ!」 マッチョ


「ポンデライオンよ。

 我ら過去の人間が、今の人間に手を出すべきではない。」 青老人


ゴリ


「おうっ!? ごり!?」 マッチョ


その瞬間、魔法の槌がポンデマッチョの斧をかすめて、刃の一部を削り取ります。



「いでぇ~じゃねぇ~か、この人でなしめ!

 クルーラー、お前も後で殺してやる!

 覚えてろ~!」


 ポンデはそう言うと、明らかに歩幅と移動距離が合っていない様子で、滑るように逃げ出して行きました。


「おい、亡霊のじじーっ。

 俺達に味方してくれるのか?」 BS


「いや、わしはお前らに味方するつもりはない。

 ただ、我々がこの時代に干渉するべきではないという主義なだけさ。

 何故ならわしは哲学者フレンチ・クルーラーなのだから。」


 そう言って消えた老人。亡霊の出現に再び結界を張る事にした街の人々。しかしその夜、寺院に集まった人々に誰も聞いた事すらない奇病が発症するのでした。

お読み頂きありがとうございます。

よろしければ評価を押していただければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ