亡国の王女4
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これは大地の僧侶ハルナ達が、プラム城に乗り込み、プルーン姫に出会うまでのお話です。南の森の隠者から場所を聞き、プラム城へとやってきた一行。 城はガイコツやゾンビなどの動く死体や、名状し難い不気味な魔物で溢れ、数々の死の罠が張り巡らされていました。それらを潜り抜け、プルーン王女の部屋へ と続く階段の元まで辿り着いた時、そこに漆黒の騎士が現れました。
「コイツ、生きてやがったのか!?」 S戦士ブラックサンダー(以下BS)
「手こずらせてくれたな、ドレイク。」 漆黒の騎士カイン
「うわぁぁぁっ。」 ドレイク王子
震えるドレイク王子。彼だけではなく、他の面々にも恐れの色が現れます。そんな中。
「みんな、私の賭けに乗ってくれ!
ドレイク、とにかく距離を取って時間を稼ぎたい!出来るか!?」
ハルナの声に反応したドレイク王子は、黒騎士との間に視界を通さない魔法の霧を発生させます。手短に賭けの内容を話したハルナは、BSの筋力を魔 法で強化。そこに霧を迂回したカインが姿を見せます。カインに向けて突進するBS。その後ろにハルナ。王子はカインと一番距離を取り、壁際窓の脇で次の魔法を準備します。BSの突進はカインに受け止められ、逆に剣の一撃を受けます。その時、BSにハルナの防御魔法が飛び、同時に王子の魔法の蔦がカ インの脚を絡めて、動きを鈍らせます。じりじりと押し戻されながらも、果敢に黒騎士に挑むBS。BSの傷はハルナの魔法が癒し、王子は何度引き千切ら れても魔法の蔦でカインの歩みを阻みます。しかしBSの体には魔法で癒し切れない傷が積み重なり、魔力と体力を振り絞って魔法を連発するハルナと王子は玉の汗を浮かべます。対して黒騎士はほとんど傷を負っていません。やがて王子の目前まで迫るカイン。
「待たせたなドレイク。」
王子の目前で剣を振り上げる黒騎士。そこで霧に乗じて物陰に隠れ、カインの死角に入るまでひたすら待っていた紅い腕輪の踊り子ウサが、魔法を封じる短剣を手に飛び出します。しかし僅かな気配に振り返ろうとするカイン。
「(そんな!?
これでも間に合わないの!?)」
黒騎士の強さは魔法で強化された物。その仮定に賭け、仲間達が必死で作ったただ一度の隙。ここでウサが短剣でその魔力を封じる事だけが唯一残された希望。しかし黒騎士は想像以上の反応の速さで、それに対応してきます。もうダメ。その思いに心が折れそうになる。その瞬間。
「(諦めてはダメだ。
君は出来る子なんだ。私の運命の少女よ。)」
「(お願い。カイン様を止めて。)」
エメラルド王子の励ましとパールの願いがウサの脳裏に浮かびます。
「思いの力が私を加速する!
それがマッハうーちゃん!!!」
ぎゅん!
希望が潰えそうになった刹那、加速するウサ。
ざく。
「何!?」
「ふんがわーっ!」
ウサの短剣が後ろ太腿に刺さり、驚く黒騎士。同時に腰を落として突進したBSが、接触の瞬間に伸び上がり突き上げます。
ばん。
それまで微動だにしなかった黒騎士の体が浮き上がり、王子の眼前で窓の外に飛び出しました。
千年前のプラム城。
「私には生まれ付き、自分の願望で周囲の人の心を変えてしまう呪われた力があります。
それは私の表面的な意識とは無関係に働くのです。
幼い頃、私は父に愛されたいと願っていたのでしょう。
それは幼子としては、当たり前の願いかもしれません。でも、
そのせいで父は私を可愛がり過ぎてダメダメな人になってしまいました。」 プルーン姫
その頃。
「にょほほほ~。可愛い可愛い世界で一番大事なラブリ~プルーン姫はどこじゃ~。
にょほほほ~。」 プラム王
「異議あり! 私も大事でしょ! ねえったら、ねえ!」 プラム王妃
「その力は呪いなどではありません。
いつか貴女がプラムの女王としてたたれる時に、
堅固な国とする為に必要な支配の力なのです。」 カイン
「人の心を捻じ曲げる事が、呪いでなくて何でしょう?
もし、私が誰かを愛してしまったら、その方は元々のお心とは関係なく、
私を愛し、魂さえも私に捧げてしまうでしょう。
でも、そんな事はしたくない、してはいけないのです。
ですからカイン。どうかもし私が誰かを愛してしまったら、
その方を私から遠ざけて下さい。
例えその時の私がそれを望まなかったとしても…。」 プルーン姫
「姫、私は…。」
城の窓から飛び出したカインは、千年前のプルーン姫のイメージを脳裏に浮かべ、闇の中へと落ちて行ったのでした。
「どうやら賭けには勝てたようだな。」 ハルナ
「危なかったけど、何とかやっつけられたね☆」 ウサ
「しぶとかったが、俺様ほどじゃねぇな。」 BS
「やっとプルーン姫に会える…。」 ドレイク王子
こうしてプルーン姫の部屋へと入った一行は、やがてプラム王国の亡霊を解放してしまうのでした。




