緑玉の王子4
「あれが全部蜥蜴人なの?」 紅い腕輪の踊り子ウサ
「ざっと1万。厳しいな。」 大地僧侶ハルナ
「キビシイどころじゃないわよ!
無理よ!逃げようよ!ぶーちゃんは?」 ウサ
「…奴も別の場所で奮闘している。
我々が逃げれば街は全滅だ。」 ハルナ
「でもたった二人でなんて!」 ウサ
「そう、二人では…せめて彼女がまだ街にいるなら。」 ハルナ
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17年前。亜寒帯に属するミントガルドの山間の村。そこで一人の少女が生まれたのでした。
「シヴァの年の大寒の日に生まれた娘には、氷の女王シヴァの強い加護がある。
この子は氷の魔法使いとして育てるのじゃ。」 お婆様
2年前。雪山で霜の巨人に追われる一人の少女。
「きゃあぁぁぁっ。」 少女
「うぉおおおおん。」
少女を追い詰め、咆哮を上げる巨人。しかしその巨人はがっくりと後ろ向きに倒れ、手足をバタつかせるのでした。よく見ると足首の腱が切られ、血を流しています。そしてその後ろで、剣の血を払う一人の戦士がいたのです。
「お前、氷の魔法使いだろ。」 戦士
「…何よアンタ。
た、頼んだわけじゃないんだからね!」 少女
そのとき巨人が膝立ちで彼らに腕を振り下ろすのでした。
ぶしゅ
戦士の剣が巨人の腕の筋を切り裂きます。手足の腱を切られ、その場で悶え苦しむ巨人。
「ほら来いよ。 …ん?
巨人は手足を切ると耳が聞こえなくなるのか?
…なんつってな、ぶははははははっ。」 S戦士ブラックサンダー(以下BS)
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(冒頭の会話挿入)
「蜥蜴人を止めるには、氷の魔法が必要だ。
チロルを見てないか?」 ハルナ
「全然。」 ウサ
「…ここから出て行くなら、まずは場所の確認か?」 ハルナ
同じ頃。地図屋。
「さて、地図は手に入ったし、次はご飯買わなきゃ。」 氷の魔法使いチロル
30分後。地図屋。
「来てたみたいじゃない!」 ウサ
「次は食糧の調達か?」 ハルナ
さらに30分後。食物屋の前。
「すれ違いか、もう門へ向かったか?」 ハルナ
「ねえねえ、あそこにアカスリができるスパがあるよ。
あそこじゃないかな~? ちょっと行ってみない?」 ウサ
「…急ぐぞ。」 ハルナ
同時刻。スパ店内。
「はぁ~、これからミントガルドまで長旅となると、
今の内に溜まったアカを落としておかなきゃね~☆」 チロル
さらに30分後、チロルが見付からず城壁の上から蜥蜴人の様子を窺うハルナとウサ。
「…あと30分で街に到達か?」 ハルナ
「何よアレ?」 チロル
「って、イターーー!」
突然、背後からチロルに声を掛けられ驚くウサ。チロルは出発前に、周囲を見回そうと城壁へやってきたのでした。
「頼む。蜥蜴人に対抗できるのはお前の氷の魔法だけなんだ。
力を貸してくれ。」 ハルナ
「100や200じゃないんだし。無理よ、あんな数。」 チロル
「このままじゃ、街の人達全滅だよ。」 ウサ
「どうしようもないわよ。早く逃げなきゃ。」 チロル
「BSも毒を盛られて動けないんだ。」 ハルナ
「…。」 チロル
「来たれ、氷の女王シヴァよ。
御身の恩寵を乞い願わん。」
チロルの祈祷により、氷の女王シヴァが現れます。
「シヴァよ。
あの蜥蜴人達を止め給え。」 チロル
「そなたが我に恩寵を願えるのは、その生において唯1度のみ。
その願いを聞き届ければ、これより後に汝が窮地に陥りし時も、
汝を助ける事は叶わぬぞ。一体何ゆえの願いであるか?」 シヴァ
「愛ゆえにございます。」 チロル
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その頃、沼の畔。
「ねぇ~ハルナ♪
こっちむ~いて。
恥ずかしがらな~いで♫
…歌のレパートリーも尽きて来たな~、あっ、釣れた。」 BS
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シヴァによってシュネーバル地方と大湿原の境界近くに、幅500m、長さ数kmに及ぶ気温10℃の冬の帯が現れるのでした。この冬の帯の中で、ハルナ達と街の兵士達は蜥蜴人を撃退・敗走させます。
「…何とかなったな。」 ハルナ
「よお、余裕じゃねえか?」 BS
「って、いつの間にーーー?」 ウサ
「べ、別にお前の為にガンバった訳じゃないぞ。」 ハルナ
「お前も手伝ってくれたのか?」 BS
「あ、アンタの為にやったんじゃないんだからね!」 チロル
「やっぱり、ぶーちゃんってツンデレ好き?」 ウサ
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