緑玉の王子3
そこには薔薇の蔓に縛られ、シュネーバルの城壁に磔にされてしまった紅い腕輪の踊り子ウサの姿があったのです。そして彼女に近付く一人の王子。
「少女よ。私は君を一目見た時から運命を感じていた。」
「貴方は…、一体誰なの?」
「敢えて名乗ろう。私はエメラルド王子。」
######################
その1時間前。
「ねえねえ、今通った男の子。誰か知ってる?」
ランチを前にフォークを片手に外を見ながら、食堂のおばちゃんを突っ突くウサ。
「うるさい子だね~っ。
ああ、あれはレンガ職人見習いのジミーだよ。」
「う~ん、でもやっぱりBB(投機的)かな~?」
何やらノートに書き込むウサ。その後ろで一人の氷の魔法使いが席を立ち、店を出て行くのでした。
「(騒がしいわね~。
誰かと思えば、ハルナとかいう子と一緒にいた奴じゃない。)」 チロル
1時間後。
「どの辺にイケメンが居そうかしら?」
城壁の上に登り、鷹の様な眼差しで街を見下ろすウサ。ふと街の外に目をやると、蜥蜴人の大軍団が街へと迫っている事に気付きます。
「大変!
ぱー&ぶーちゃんはどこ?」
「大丈夫。
君が気にする必要は無いよ。」
驚きの声を上げるウサ。その背後から聞こえる落ち着いた声。振り返ろうとした時、足元の石畳の間からしゅるしゅると薔薇の蔓が伸びてウサを絡め取るのでした。
(冒頭の会話挿入)
ぐっと顔を寄せ、ウサの頤をピアニストの様な細く繊細な指で上向かせる王子。
「あっ。(ぞくぞく)」 ウサ
「美しい…。その炎の様な強い意志を秘めた瞳。
やはり運命の出会い。」 王子
しばしべろちゅ~に没頭する二人。ややあって、つと離れた王子は懐から一輪の薔薇を取り出し、天へと振り上げるのでした。
「だが君との出会いは炎の運命。
私は魔族。この世には君達人間か私達魔族のどちらかしか生きる事を許されない。
そう、君と私はロミオとジュリエット。
ならば今、この一輪の薔薇で君との運命に決着を付けよう。」
「いいえ、貴方と私の運命はまだ終わったりなんかしないわ!」 ウサ
びしゅ
王子が薔薇の狙いをウサの胸に定めた時、飛来した鎚が薔薇を四散させるのでした。
「ウサ! 無事か!?」 大地の僧侶ハルナ
「む、無粋な邪魔が入ったか?」 王子
伸び切った鎚の柄の鎖が空中で引き寄せられると、ハルナの手から二撃目の鎚が放たれます。狙い誤らず王子を直撃する鎚。しかし、王子の姿は薔薇の花弁と化し四散。そして何処からともなく王子の声が聞こえるのでした。
「やはりここは、運命の場所ではない様だ。
この街から南。黄昏時に薔薇座が見える方角を目指して進み給え。
そこにある私の白薔薇城で、君との運命に決着を付けよう。」 王子
「必ず参ります♡」 ウサ
「…薔薇座ってあるんだ。
っていうか、間一髪で助けたのにお邪魔虫なカンジ!?
不条理だ…。」 ハルナ
##############################
その頃、一人の男が沼地で釣りに勤しんでいるのでした。
「あなたの傍で~ああ、暮らせるならば♪ つらくはないさ、この東京ナマズっ♫
ってそれを言うなら砂漠だろ!
………う~ん、この釣りに命が掛っているかと思うと、落ち着かないぜ。」 S戦士ブラックサンダー
お読み頂きありがとうございます。
よろしければ評価を押していただければ幸いです。