伯爵再び1
「私のぼうや…」
稲妻を発する鎚が胸を貫く直前、カリフラワー女子爵は確かにそう言ったのでした。鎚を受けて炭へと変わり、そして灰となって四散する女子爵。彼女は遺体の欠片1つ残さず空へと消え去ったのでした。
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1ヶ月後。
その重厚な鉄の扉は幾重にも鎖が掛けられ、大きな錠で厳重に閉ざされているのでした。
「あれは何だ?」
アスパラガスを連れブロッコリー伯爵の館へと戻った青い魔導士アスハ達は、その扉の前を通って奥へと案内されます。
「先祖代々の開かずの扉でして。手前どもだけでなく当主さまもご存知ないかもしれません。」
大地の僧侶ハルナの問いにそう答えた執事。息子が戻った事に大喜びした伯爵は、一行に貴賓室を宛がい、盛大な晩餐会を催して歓待します。開かず扉に最近開かれた形跡を認めたハルナでしたが、その時はそれ以上追及しませんでした。
「結局、聖剣ブランチュールは返さなきゃいけなかったね~。」
軽くぼやく紅い腕輪の踊り子ウサも、その表情は満足気です。
「ラング・ド・シャの秘宝も返してもらったし、
その上金貨500枚の入った袋を1人一袋づつだから十分だろう。」
跨る馬に重そうな袋を提げたハルナ。
「…日本円に換算すると、一人500万円ずつです。」
袋から1枚づつ金貨を出しては、マントの裾で磨くアスハ。
馬の背に揺られて街道を進む一行。
「JBちゃん、ど~してるかな~?」 ウサ
「カリフラワーを倒した後、
膝を壊したから故郷に帰ると言って、さっさと居なくなったからな。
少し心配ではある。」 ハルナ
「…アレで膝しか壊していない方が、私には驚きです…。」 アスハ
「アスパラが危ない!
急いでブロッコリー伯の館へ戻ってよ!」
ウサの鼻先に突然現れたそれは、消しゴムくらいの大きさの月の輪うさぎでした。
「あんた、大丈夫だったの!?
それに、そんなにちっちゃくなって!」 ウサ
「早く、早く!」
それだけ言って、それは消え去るのでした。
「あの扉…、やはり気になる。」 ハルナ
「…戻りましょう。」 アスハ
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