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北東寺榛名と奇妙な世界  作者: 石表
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3 怪鳥と迷宮の魔女3

 悪魔か死人の手を思わせるねじくれ、歪んで分岐する鋭い枝を持つ、黒く太い木々の間をピンクの馬車は狂ったように走り抜けました。停まって耳を澄ませば聞こえてくる、木々の間を通り抜ける風か、それともどこか遠くで誰かがすすり泣き、恐怖の悲鳴を上げているかのような音も、ガタガタと揺れ、ミシミシと軋みながら低い灌木や野草の茂みをなぎ倒して進む車輪の音にかき消され、その馬車の乗り手には聞こえなかったのです。あるいは、まるでアスファルトの道路で踏みつぶされた毛虫のように、無関心に馬車に轢かれた無数の魔物達の苦痛と怨念の声だったかもしれませんが、乗り手達にはどうでも良い事でした。

 森の奥深く、生き物の匂いを感じさせない無味なその迷宮の入り口は、しかしどこか僅かにほとんど気付かない程の甘い花の香りを感じさせました。



 2時間後。


「これでもう29個目の部屋だけど、魔物も罠もないね~。」 ウサ


「いや、恐らく次が最後の部屋。これまでの部屋で緊張感を失わせて、

 最後に…かもしれない。油断せず気を引き締めて行こう。」 ハルナ


「そ~ですゎね~、ふわぁゎぁ~~~、ごめんあそばせ☆」 サクラ


「…誰か、いる…です。」 アスハ



「みなさん。良く来ましたね。」


 迷宮の最後の大広間には巨大な魔法陣が描かれ、その奥の2つの篝火に照らされた祭壇の前には、夥しい金や宝石に飾られたアラブ風の衣装の女性がいたのです。


「ジェニー先生!どうしてここに!?」 ハルナ


「それが、第7コンピュータ室で織田さんに…。」 ジェニー


「じゃ、戦わなくてもいいんだぁ~、なんだ~。」 ウサ


「それが…、

 全力で戦わなくてはいけないルールみたいなんですよぉ~。

 じゃ、いきますねぇ~。しょ~かん…。」 ジェニー



ゲーム開始前。


「ルール通りでも弱い敵やトラップを多数配置するより、

 その分ボスをパワーアップさせたほうが確実に殲滅できるわ。

 それからボスをモンスターではなく参加者にして、

 参加者を非戦闘キャラにすることで召喚したモンスターをパワーアップ。

 ペナルティで“回復不能(ゲーム開始後ダメージは回復しない)”と、

 “盲滅法(攻撃がほとんど当たらない)”を付けてさらにさらにパワーアップ。」 リコ



「ロック鳥!」 ジェニー


 魔法陣から巨大な何かが現れようとして、迷宮の天井を突き破り、がらがらと瓦礫が落ちるのでした。


「あぶっ、あぶっ、あぶな~~~い。」 ウサ


「一瞬天井に穴が空いたように見えましたのに、

 真っ暗で何も見えませんゎ!?」 サクラ


 そのとき、ぼうっと3つの小さな青い光がアスハの傍で灯るのでした。


「天井に穴は空いてるです…。でも、そのずっと上に大きな何かがいて、

 陽の光が全く入ってこない…です。」 アスハ


(注意:ロック鳥とは、シンドバットの冒険に出てくる巨大な鳥でございます。

 どれくらい大きいかと言うと象を一飲みにするとか、

 背中に1つの町があるとか言われるくらいでございます。)



再び、ゲーム開始前。


「攻撃力1000に、HP100万!?

 でも、攻撃が当たらないんじゃ…。」 姫子


「大丈夫。

 このモンスターは特殊攻撃で必中攻撃をもっているのよ。」 リコ



ロック鳥の頭の上。


「ごめんなさいねぇ~。

 ルールだから悪く思わないでねぇ~。

 みなさん、行くわよぉ~。そぉ~れ、“押し潰し”!」 ジェニー


迷宮の最後の部屋を中心に、半径2kmが押しつぶされるのでした。

お読み頂きありがとうございます。

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