25 魔導士と貴婦人5
セロリー伯爵夫人を訪ねたハルナ達は、意外なほどあっさりと館の中へ通されるのでした。館に住んでいるのは、夫人と執事兼料理長のクレソンという老人だけ。夫人にセロリー伯がブロッコリー伯の子アスパラガスを誘拐したかもしれないと話しても、
「あの方のことは、良く分からないのです。
クレソン、何か知っていますか?」
と困惑するだけでした。
「仮面夫婦なんですか?」 ウサ
「そんなロコツナ☆」 サクラ
「仮面夫婦なんです。」 夫人
「…答えるんですね。」 アスハ
その晩は夫人に請われ、館に泊る事にした一行。
「ここにはあまりお客様が来ることはないの。」 夫人
5人だけの晩餐会が催され、いつもの人淋しさが紛らわされたのか夫人は上機嫌でした。
翌朝、館に現れた騎士ジョナゴールドと険悪な雰囲気になるハルナ達でしたが、夫人が4人と山賊の拠点に行くと言いだした事でそれどころではなくなります。散々引き留めたジョナゴールドでしたが、結局彼も一行と一緒に行く事になります。
「一体誰が、そんな妄言を吹きこんだのだ!」 ジョナゴールド
「私じゃないですよぉ!?」 ウサ
「もし子供が囚われているなら、放っては置けません。
囚われの身の辛さはよく知っていますから…。」 夫人
山賊の拠点と思われる砦には武装した男達が警戒していましたが、正面から誰何するジョナゴールド。すると黒衣のセロリー伯が現れます。夫人がこの砦とアスパラガスの事を問うと。
「話す必要はない。こいつらは我が領地への侵入者だな。」 ニヤリと笑うセロリー伯。
「私が排除します。兄上の手を煩わす程のことではありません。」 ジョナゴールド
「邪魔だ。引っ込んでいろ。」 セロリー伯
「やめてーっ!」 夫人
「…………………………“瞬間熱気”」 セロリー伯
夫人が伯と話すために少し離れていたハルナ達でしたが、突然サクラがクラリと倒れます。
「えっ! いきなり!?
なんで!?」 ウサ
「おそらく魔法で発生させた熱気により、
炎天下の立ち眩みと同じ症状を引き起こすのです。」 アスハ
「散開しろ!
ここで、広範囲魔法が来たら終わる!」 ハルナ
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