23 魔導士と貴婦人3
風光明媚な丘を進む一行の前に現れたのは、見る者を威圧するようなおどろおどろしい光景でした。そこは館と言うよりは砦に近く、黒く高い城壁の上には無数の棘が飛び出し、その中央のやはり黒い尖塔を囲んでいます。
「ちょっと!?
何よ!あれ!?」 ウサ
何より恐ろしいのは、城壁の上の棘にはその一つ一つに逆さに体を刺し貫かれた、干からびた人の遺体が飾られている事でした。
25年前。
「ねえ、兄上。どうして人には、肘があるの?」 ジョナゴールド
「それは、人を押しのける為さ。」 兄
「父上、早く帰ってこないかな~。
ねえ、どうして王様は助けてくれないの?」 ジョナゴールド
「王は父上の忠誠心を試しているんだ。
もし王の軍隊が出てくるとしても、それはこの土地が敵に奪われてからさ。」 兄
「ねえ、兄上は父上みたいな騎士にはならないの?」 ジョナゴールド
「騎士は一度に沢山の敵を殺せない。
だから俺は魔導士になる。
俺は父上と共に、この土地を守るんだ。どんな手を使ってでも…。」 兄
「でも、魔導士は敵が近くまで来たら、やられちゃうでしょ。
そうだ。僕が騎士になって、兄上を守ってあげるよ。」 ジョナゴールド
「…あの塔の窓、誰かいますね。
白い服の女性………伯爵夫人でしょうか?」 アスハ
そのときドスドスと地面を揺らし、醜怪な物が城壁を回って現れます。それは人間をデフォルメした粘土細工の様に歪で、太い胴と手足、歪んだ頭に非対称の口からは不揃いな牙が上下に突き出し、黄色い目をした3m近い緑の生き物でした。それが一行の馬車を認めると、太い棍棒を振りまわしながら、ドタドタと突進して来ます。
きこきこ、がっしゃん。
「ふっふっふっ。
この間作っておいた新兵器を試す時が来たようね。
さっちゃん、よろピく!」 ウサ
「衝突まで7秒、衝突速度は100km/hってところですゎね☆
ハイョ~~~ォ、ゴ~ッ!」 サクラ
馬車の一部に折り畳まれていた破城槌(直径約30cm、長さ数mの丸太に先端を金属で補強した物)が6頭の馬の間に徹され固定されると、馬車は一気に加速。醜怪な生き物を迎え撃ちます。
10年前。
「伯爵。これが今回のあんたの取り分だ。」 不道徳そうな男
いっぱいに荷物が積まれた4台の荷馬車の前で、貴族の男は金貨を受け取りながら、冷やかな笑みを浮かべて問いかけます。
「随分、繁盛しているようだな。
仕入れに幾らかかったんだ?」 貴族の男
「ちゃんと金は払ったさ。
たった今、あんたも受け取ったろう。
そうそう今回はもう一つ、プレゼントがあった。」 不道徳そうな男
口と手を縛られた白いドレスの少女が、男の部下に担がれて連れて来られると、貴族の男は不審げに問い質します。
「あんたの父親の敵さ。その娘と言った方が正確かな。
確か名前はアセロラ…。」 不道徳そうな男
がし。きゃ~っ。ひひーん。ずずずず。
「そんな!?
破城槌を受け止めるなんて!?」 ウサ
「馬車から離れろーっ!」
そう言って馬車を飛び降りたハルナが、怪物の右に回り込みます。そして棍棒で怪物の脛を打ちつけると、緑の皮が破れて弾け飛びます。
「ええ~~~いっ☆
馬車から離れなさ~~~い♪」 サクラ
左に回り込んだサクラは、怪物の腰の当たりを剣で切りつけます。噴き出す血飛沫。馬車を放して動きを止める怪物。
「兄上、あの娘は国に返しましょう。
敵が攻めてきたら私が防ぎます。」 ジョナゴールド
「政治の分からん奴め。あれには利用価値がある。
そう。俺の妻にでもするか。」 兄
動きを止めた魔物の様子を窺うハルナとサクラ。アスハが馬車から下りると、ウサが馬車を魔物から引き離します。すると突然、切られた魔物の傷がぶくぶくと泡立ち塞がって行きます。
「傷が再生していく!?
あの巨人、もしやトロル!?」 ハルナ
「えーーーっ、それっておさびし山に住む、
カバみたいな優しい生き物じゃないの!?」 ウサ
「…ムー○ン・トロールでしょうか?」 アスハ
動き出した魔物は、口が裂けたかと思われるほど不自然に大きく口を開けると、大量の涎を撒き散らしながら、言葉とも吠え声ともつかない怪音を発して棍棒を振りまわします。
「グロい~~~!
そして超怖いんですケド~~~!」 ウサ
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