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北東寺榛名と奇妙な世界  作者: 石表
21/81

21 魔導士と貴婦人1

「一体どうしてあんなブラック企業に入りましたの?」


 捕縛した山賊、ピーターを引き連れながらセロリー男爵領内の村に向かう途中、さして興味も無さそうにサクラが問いかけます。


「社会の富を再配分するという企業理念に賛同したんだ。

 僕はつい一人で思い悩む性格で、大学も精神的に追い詰められて中退しちゃって。

 派遣で凌いできたけど、低収入なままじゃ結婚もできないと思ったんだ。

 だいたい、女って奴は男の学歴と年収しか見ていない!」 ピーター


「う~ん、自分の欠点ばかり気にしないで、良いところにも目を向けたら?

 みんなそれぞれコンプレックスはあるけどさ~、

 そこばっかり見ちゃうと負のスパイラルに落ちるだけだよぉ。

 一人にならないで、いろんな人と交流して刺激を受けて行ったら、

 もっといい方向に行けるんじゃないかなぁ~。」 ウサ


「ああ、ダメだなお前は。

 学歴と収入だけが問題だとでも思っているのか?

 本当にそうなら今からでも大学に入りなおせば良い。

 東大なんぞ学生としての旬を過ぎた年齢の人間がゴロゴロしてる。

 収入なんかもっと簡単だ。毎年100万上がるよう努力すればいい。

 だが、出来まい。お前には努力も忍耐も強い意志もない。

 一体どこに魅力があると言うのだ?」 ハルナ


「僕は人間性は良いんだ。だって悪い事はしてないから。」 ピーター


「悪い事をしていなければ良い人?

 良い事をしたら良い人!

 悪い事をしたら悪い人!

 良い事も悪い事もしていなければ、±0点で何の魅力にもならん!

 お前は、学歴や収入のように客観的には分からない人間性などという概念なら、

 自分は良いはずだと思い込んでいるに過ぎん。

 何時でもどんな時でも、自分の嫌いな相手にすら優しく出来るのか?

 ちょっと肩が当たったくらいで相手を憎んでいないか?

 困った人を見ると、何があっても助けているか?

 アウェーな雰囲気の中でも正しい事を正しいと言えるのか?

 お前の人間性の良さとやらは、一体どこにある?」 ハルナ


「(…山賊に入った時点でアウトだと思うのですが…。)」 アスハ




 そんな雑談に興じながら村に入ったところ、一人の陰気そうな騎士に出会いました。


「出て行け!」 陰気な騎士


「えっと~、

 森に住まう実業家さんとちょっとした行き違いがありましてぇ~☆

 それで、この土地の治安の責任者さんを探してるんですケド~♪」 サクラ


「ここではそんな言葉は使わん。“山賊”と言うのだ。

 その治安の責任者とは私だ。そいつは私が引き取る。

 要件はそれだけか?」 陰気な騎士


「実は、ブロッコリー伯の息子さんが何も言わずに長期旅行に出ちゃってさ。

 あちこち探したんだけど、もう探してない処ってここだけなんだよね~。

 何か知らないかな~?」 ウサ



 じゃきん

 がし

 「ひゃっ!?」



 騎士の剣がウサの首の高さを薙ごうとしたところ、左右からサクラの剣とハルナの棍棒がそれを受け止めます。


「あら☆

 女の子に突然手を上げるなんて♪

 紳士のお手本にはなれませんわよぉ?」 サクラ


「全くだ。

 騎士の礼節や、婦女への献身を怠るとは。

 田舎者と間違えられるやもしれんぞ。」 ハルナ


「この地を治めるわが一族について、

 根も葉もない噂を立てられてはそれこそ治安に関わるのでな。

 断固とした措置を講ずるまでだ。」 陰気な騎士



「待って下さい。

 みなさん、周りを良く見るです。」 アスハ


 一行を取り囲み、殺気立つ村人達。


「あいつら、ジョナゴールド様に喧嘩を売ってるぞ!」 村人A


「ふてぇ~奴らだ!」 村人B


「あの踊り子さん、萌え~~~♡」 村人C



一触即発の空気を変えたのは、遠くからの叫び声でした。


「大変だ~~~、南の農場に巨大ムカデが出たぞぉ~~~!」



「ちっ! お前達、そこを動くなよ!」


ジョナゴールドと呼ばれた騎士は、そう言い残して南に馬を駆けさせます。



「さて、どうしたものでしょう☆

 くす♪」 サクラ


そこへ2つ目の叫び声。


「大変だ~~~、

 西の農園にキング&クィーンガニットが手を取り合って出たぞぉ~~~!

 ジョナゴールド様~~~、あれ?」


「仕方ない。

 ここはアウェーな雰囲気を何とかするためにも、私達で退治しよう。」 ハルナ



ずばっ

どごん

ばりばり

たったらたったたたたん♪



その後、同じ場所で再会したジョナゴールドは、こう言い残して去って行きます。


「今日のところは見逃してやる。

 明日の朝一番で、この地から出て行け。」

お読み頂きありがとうございます。

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