13 竜と火山の迷宮9
「何してんの!? ここは一か八か早く渡ろうよ!」 ウサ
「…怪しいですね。
さも、橋を渡れと言わんばかりのシチュエーションが。」 アスハ
「ああ。あんな強力な魔物が本当にいるなら、
早々に出せばそれで済むのに。」 ハルナ
「最後の魔力で幻影を破りましょうか。」 アスハ
「いや、幻なら触れれば破れる。私が触ってみよう。」 ハルナ
「大丈夫なんですの?
この熱気は本物に見えますゎ…。」 サクラ
「幻影の中に別の魔物を隠している可能性もありますね。
やっぱり魔法で…。」 アスハ
「いや、ならばなおさら戦力外の私が破って、
アスハの魔力を温存した方がいい。
それに私の“近未来予知”、どうやら1レベルに1回は使えるようだ。
不意打ちを食らわないで幻影が破れるなら、ここが使い時だろう。」 ハルナ
ハルナが触れると、幻の竜は消え失せましたが、そこには体長約5m、火を拭くワニがいたのです。
「これは…、サラマンダーか?」 ハルナ
ぶぉ 「“炎熱防御”」アスハ たん、たん 「“火冷ましの踊り”!」 ウサ
ぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~。
「熱っぅ!だが、二重防壁で耐えられる!
サクラぁ、私の背を回って剣でヤツの脇腹を地面ごと突き刺せ!」 ハルナ
「はぁ~~~い☆ いきますよぉ~~~♪」 サクラ
たん、たん、だん!
「何ぃ! 私を踏み台にした!?」 ハルナ
言葉通り、ハルナの背を回って肩を蹴り、サラマンダーの真上に跳び上がるサクラ。その時、炎の魔物がハルナの右手にかぶりつき、肘まで咥えこむのでした。
ざく!
真上から突き刺されたサクラの長剣が、敵の脇腹を貫通し地面に突き刺さります。一瞬ビクリとするものの、すかさず左顎脇に入れられたハルナの蹴りに反応し、ハルナの右腕を引きちぎろうと回転するサラマンダーでした。ハルナの右腕の袖が肘の辺りから引き千切られます。しかし、そのとき地面まで突き刺されたサクラの剣によって、魔物のお腹もざっくりと切り裂かれるのでした。
「はーちゃん!?」 ウサ
「大丈夫だ。」 そう言いながら、右袖の中からにゅるんと右手を伸ばすハルナ。
「そんなに喰いたかったのか、私のこんぼうが?
愚かなトカゲめ。」
「すご~~~い☆ ルパン三○みたいですわねぇ~~~♪」 サクラ
「なぁに、私の腕に噛みつく所まで“近未来予知”で見えたので、
とっさに棍棒を持った腕を引っ込めたのさ。ふぅ~じこ○ゃ~ん☆」 ハルナ
その後、ウサがロープを持ってほふく前進で谷を渡り、渡りきったところでアスハ、ハルナとロープを持って慎重に渡ります。安心しきったサクラが、ルンルンで谷を渡ろうとすると透明な橋は真ん中で折れるのですが、サクラは腰に結ばれたロープで引き上げれました。そして第二の迷宮の秘宝を手に入れ、街へと戻ったのです。
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