プロローグ
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隣で彼女の黒く長い髪が揺れている。
学校の帰り道、あの公園でブランコに乗りながら二人でいろんなことを話した。
赤い夕陽の中、その日クラスであったこと、昨晩見たテレビのこと、成績のこと、進学のこと・・・たわいのこと、面白いこと、真面目なことを彼女と沢山話をした。
彼女はいつも笑顔だった。その笑顔を思い出すたびに失ってしまったものの大きさを認識させられる。彼にとって二人で過ごしたその時間はとても大切で、かけがえのない思い出になっていた。高校を卒業して大分経つ今でもその光景を夢に見る。
彼女のことを本当に好きだったんだ。
「将来は何の仕事をしたいの?」
彼女が突然そう聞いてきた。
「え?」
彼女にはただ一つ、話をしていないことがある。自分の夢のことだった。
恥ずかしくて言えなかったのではない。自信がなく、やる前から諦めていたからだった。才能がないことは自分がよく知っていた。だから何もしなかった。やっても無駄なことだと思っていた。全力で高校生活を送って、勉強もして、部活もしていたが、自分の中の夢の位置付けはそんな感じだった。
「まだ考えていないかな」
考えていないどころか、考えることを避けていた・・・。
その後の自分の人生の中でとげが刺さったかのように心が痛むときがあるが、一度たりとも自分の夢に正面から向かい合ったことはない。
そうだ・・・そういえば彼女の夢はなんだったんだろうか?
あの夕暮れの公園で聞くことはなかった。一年先輩だった彼女が高校を卒業して、僕はすぐに振られ、今はもうそれを聞く機会もない。
彼女の横顔を思い出した。かわいくもあり、綺麗な人だった。彼女は目の大きい、笑顔がかわいい人だった。笑ったり、驚いたり、その一つ一つの動作を忘れたことはない。あの頃は、高校生活の楽しさ、嬉しさ、感動、友情、それに愛が永遠に続くものだと信じていた。大学に行っても、社会に出ても同じような生活が待っていると思っていた。
出来れば彼女ともずっと付き合って、結婚までしたかった。
だが、違った。それは永遠ではなかった。高校卒業と同時にそれは一つ一つ剥ぎ取られ、失われ、僕は大人になっていった。
そう、もう高校を卒業してから十四年が経っている。僕はただの普通のサラリーマンになっていたのだ。