表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蝶々姉さん

作者: NECO*

久しぶりの投稿です。どうぞ読んでいってください。

妹が恋をしたらしい。


らしい、というのは、まあ直接本人に確認をとっていないからで。

きっと聞いてもはぐらかされるだけだろうけど、16年付き合って来た私の目に狂いはないだろう。


ほら、今だって。


ソファに座って虚空を見つめる妹をちらりと見る。

あの子が家にいる時、黙って座っているなんてところを見た事がない。

歌ったり喋ったり、かと思ったら踊ったりと何かと忙しい子なのだ。


その妹が、ここのところ無口でしかも少食で。携帯画面を覗き込んでは一喜一憂しているところをみると、恋以外の何物でもない、と思う。


姉としては是非とも成就してもらいたいものだと思うけど、まあそう上手くはいかないのが恋ってやつだ。


私は静かに彼女を見守る事にしている。


と、ミシンを動かしていた私の背中に、柔らかい何かが触れた。

思わず手を止め、ゆっくり振り返る。


「お姉ちゃん……」


まだまだ幼い声とともに、背中に顔をうずめる気配がして、私は少し不安になる。


「どうしたの」


「あのね…………お姉ちゃんは、恋人とかいるの?」


ほうらやっぱり。妹にばれないように破顔させると、私は小さく頷いた。妹は少し黙ると、拗ねたように私の背中をつついた。


「知らなかったよ、わたし」


「そりゃあ言ってないもの」


すましたように返事をすると、妹はくつくつ笑った。

気持ちはほぐれたみたいだ。良かった。


「……………その人の事、好き?」


後ろから私を覗き込み、特徴的な茶色い瞳を輝かせている成長途中の少女。

思春期は、サナギの時期。一生の中で一番不恰好だとよく言うけれど、この可憐な少女には全く意味をなさないようだ。

私は彼女の柔らかい前髪を軽く引っ張った。


「そういう事を聞くところ、まだまだお子様ね」


「なによ、私だって16歳だもん。もう大人だもん」


失礼しちゃうわ、とそっぽを向く妹に、おせっかいおばさんの如く大袈裟な素振りで口を開く。


「あらあら、すぐにイライラする子は好きな人から嫌われちゃうわよ」


驚いて振り返った妹の視線から逃げるように席を立つ。


「さて、ダーリンとデートにでも行ってきますか」


「ちょっと待ってよお姉ちゃん!」


追いかけてくる足音に顔がほころぶ。


天真爛漫で可愛い妹。

あの子ならきっと大丈夫だろう。



読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ