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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
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美久と弘美と映画に行った後、服を見ていたら、夏ももう終わりの時期なのは判るが、70%OFFってお店、ホントに大丈夫な値段なのかな?と思う。九月もかなり暑いので、まだまだ着れそうではあるが、売る方からすると今くらいが売れる限度なのかもしれない…。


そう思いつつも、少し色気が出てしまい、秋でも大丈夫そうなものを選んでしまう。とってもお得だったので、三人でファッションショーの如く試着しまくってしまったが、皆でたっぷり購入したので許して貰おう。


やっぱり買い物ってとてもストレス発散になる。なんだか皆、すっきりした顔になった。


「せりかは見せる人が居るんだから、もう少し買っても良かったんじゃ無いの?」


美久はそう言うが、二人と同じ位だが、かなり購入してしまった。


「流石にいくらお得でも、おこずかいの限度もあるもん。これ以上は無理よ」


「でもお年玉とか貯めてるのがあるでしょう?こういう時にぱぁーと買う為にとって有るんじゃないの?」


「それはよっぽどの時にしか手は付けないわよ。今日は、服を買うって言ってお母さんがくれたので運良く沢山買えたけど、これ以上買ったら、次回買う時に金額減らされちゃうわ!」


弘美も笑って「確かにそうだよね~!」と相槌を打った。中学生の半ば位から、自分で服を買うのを許される様になったが、今の量だって彼氏が出来たからって浮かれて買い過ぎたんじゃないでしょうね?と疑われそうな量だった。


荷物が多いので比較的スペースに余裕があるとの理由でファミレスに行き、かき氷を食べた。


かき氷で思い出したが、そういえば今年は花火とかお祭りとかにまだ行って居ない。……遅ればせながら玲人に彼女が出来たからだと気付いた。いつも玲人がお祭りとか屋台とか大好きなので、それに付き合っていたから、毎年屋台のかき氷を食べる機会が多かったのだと思うと、やはり去年とは違う夏休みなのだと感慨深い気持ちになった。橘と付き合い始めて、皆にひやかされたりするのも妙にくすぐったい。


「でも夏休みも折り返しだし、来週は登校日もあるでしょう?何の為にあるのかしらね?」


せりかが不満を洩らすと弘美が笑って「一応無事確認じゃ無いの?」と言ったが美久は「遊び過ぎない様に引き締めなんじゃ無いのかしら?」と辛口のコメントを言った。せりかもやっぱり美久の方に一票だった。


美久は「暑いのにあの紺の制服着るだけで大変よね~!折角クリーニングにかけたのに一日で汗だくになったら、そのまま置いておけないから、もう一回かけなくちゃ成らないじゃないの!」と愚痴った。


その通りだが、玲人と橘は毎日の様に、午前中は制服を着て練習に行っていた事を思うと一日くらいで文句を言っては申し訳ない。


それに言っては悪いから言っていないが、衣類の除菌消臭剤を掛けて陰干ししたが、登校日があるのでせりかはまだクリーニングに出していなかった。弘美もあまり同調しない所をみるとせりかと同じなのだろう。


「橘君達、長野なんでしょう?涼しそうで良いわよね!」


「明日の夜には帰って来るけどね。長野は羨ましいけど、特訓だしね~」


「明日なんだぁ?せりかも寂しく無くなるから私達と遊んでくれなくなるわね!」


「橘君が帰ってきても弘美達が誘ってくれるなら遊ぶわよ!橘君が居ないよりも玲人が居ない方が実質は大きいのよ。私達兄弟じゃないけど修旅とかも一緒だから、滅多に顔を合わせない日が無いのよね。それでも玲人が真綾さんと付き合い始めたら、お祭りに引っ張って行かれて無いから今年はまだ一回も行って無いのよ」


「じゃあ、八月の最終の花火に三人で行こうか?浴衣着て行かない?今年、一回も着てないの」


「いいわよ。美久は大丈夫?」


「大丈夫!かき氷食べてたら、私もそういうのに行きたいなぁって丁度思ってたのよ!」


「じゃあ決定ね。時間とかは来週の登校日に詰めようか?」


「メールでも良いけど、来週迄に花火の開始時刻とか確認しておくね」


「楽しみ~!天気だけが少し心配だけど…」


「せりかは心配性ね!大丈夫よ。きっと」


「美久が楽天的だから、釣り合い取れてて丁度いいのよ!」


せりかが言い返すと弘美は笑って「雨が降ったら、カラオケにしようね」と言った。


せりかが頷くと、美久は「晴れるわよ!私、晴れ女だもん」と胸を張るので、弘美とせりかで目を見合わせて笑ってしまった。きっと晴れるのだろうとせりかも洗脳では無いが、美久の前向きさが羨ましくて可笑しくなった。




明日には橘と玲人が帰ってくる。正直ほとんど寂しく無かった。ちょっとそれが彼氏にキマズイ。予定を結構入れた所為も、勿論あるのだろうと思うのだが…。


特に玲人が居ないのはやっぱり思っていた通り、ややさっぱりした感は否めない。玲人には悪いが、お互い恋人も出来たことだし、今迄の様なべったりした付き合いから見直してもいいかな、なんて考えてしまった。一緒に勉強しなくても、真綾とするだろうし、ゲームもしかりだろう。


出掛けるのも減って来てはいるが、その分橘と出掛けるのであまり気が付かなかった。しかし、夜は殆ど何かしらで玲人が部屋に来る。明日は橘には会えないだろうが、玲人は土産を持って家にくるだろう。


明日は疲れているだろうから、言わないが、玲人に少しだけ言ってみようかとせりかは思った。お互い少し大人になったのだから、相応な距離というものがある筈である。まさか玲人にも可愛い彼女が出来たんだし、拗ねたりしないよね?と思うが橘に会って相談してみてからにしよう。






「それは、玲人が拗ねるからやめてやってよ!」


翌日訪れた橘の部屋で、その話をしだした途端、かなり真剣に止められた。


昨日はやっぱり玲人がやって来て、土産のお饅頭をせりかの母に渡し、せりかの部屋で合宿であった事を饅頭とお茶を両手に話してくれた。橘の話や、伊藤の話が出て来て、かなり面白かった。玲人は人を楽しませるのが上手い。しかし、話している内に眠そうになったので、疲れているのだし帰った方がいいと促した。玲人は意外と律儀なところもあるから、彼女が出来てもせりかの部屋に来る回数が減らないのでは無いかと橘に早速相談したら、早々に真っ向から否定されてしまった。


橘に貰ったクリスタルのキラキラ光るストラップを見つめながら、うーんと唸る。彼氏に相談したが、橘は玲人の友人として答えてくる。私がいつまでも玲人べったりでも何とも思わないし、玲人が可哀想だという橘に何と返事をするのが正解なのか、よく解らなかった。


「それは、橘君は玲人側から見た意見でしょう?私側から見て、いつ位までこんなにべったりで大丈夫だと考えてるの?いつかは少しは距離が出来てくると思うんだけど、それが今じゃないかと思うのよ。お互いに彼氏彼女も出来た訳だし」


「それは、距離を無理矢理作らなくても、自然と出来て行くものだから、玲人に言うっていうのは絶対無しだと思う。幸い、椎名さんと付き合っている相手は俺だから、玲人の事は気にしないし、玲人の彼女の更科さんは、多分俺よりも気になってない筈だから、問題も発生してないのに距離置く必要って無いと思う。両方が別の人と付き合いだした時に、相手が気に成る様なら、そこから距離置いたらいいんじゃないの?」


「久しぶりに会ったのに地味に凹まさないで欲しいわ!わざとじゃ無いのよね~?」


「玲人が別の人と付き合い出してからって言い換える必要が有るならするけど、どちらかと言うと椎名さんが他の人と付き合いはじめたら、玲人と距離とらないと駄目だよ!そっちの方が優先順位が高いから言ってるのに!」


相変わらず、我が彼氏殿は、自分と別れた後のせりかまで心配してくれる、優しい親友だった。


何だか文句も意見も言い辛くなったので、分かったと言ったらホッとした顔を見せて優しく微笑んだ。久しぶりだと結構破壊力がある笑顔に固まると、橘には判っていた様に、顔を寄せて口付けられた。つい、勢いで人目が無ければいつしたって良いと言ってしまったが、不意打ちは心臓に悪い。まして階下にお母さんが居るとはいっても部屋には二人きりだ。


少しずつ深まるキスに警戒して「お母さんも居るんだし…」と軽く止めると此処は三階だから大丈夫だと言われてしまった。


橘の家は、一階がリビングと和室と水周りが有って、二階は洋室が二部屋あるらしい。みた事は無いが、橘よりも広い洋室を一樹いつきが使っていて少し広さは狭いがロフトのある三階の部屋が橘の部屋だった。三階は橘の部屋以外無いから、滅多な事では誰も上がって来ないと言うが、来ないから大丈夫って言うのには限度が有るだろう。


それとも今迄の彼女達とあれやこれやしてても大丈夫だったって事な訳?!せりかが一瞬離れて冷たい視線を向けると、何が言いたいのか察した様で苦笑して「限度は流石にあるよね!」と態度をさっさと翻して背中のファスナーに手を掛けていたのを戻した。


「洋服もう秋っぽいんだね。季節先取りでおしゃれなんだね」


にっこりと切り返して来る辺りは、タイミングが引き際といい、鮮やかだった。


過去の事に嫉妬は自分の為にもあまりするべきでは無いが、自然と判ってしまう事は、やはり気になるものである。橘は誤魔化したり、嘘をついたりしないので、唯一せりかを不快にさせない様に話題を切り換えるのは彼のせりかに対する思いやりからだろうと思う。

濃い茶のワンピースにベージュの半そでの上着を着て来たが、九月の終わり位まで着れそうだと思って買ったが、季節を先取りするのは、ちょっと早過ぎるだろうと思う。


「美久と弘美と橘君が居ない間に買い物に行ったのよ。少し秋っぽい方が長く着れそうだったから、そういう色合いの物を選んだだけで、先取りとかでは無いのよ」


「でもよく似合ってるよ!」


彼はお世辞とかは言わないし、嘘もいわないので、本当にそう思ってくれたのだろう。美久と弘美も似合うと言ってくれたが、翌々日に脱がされそうになったとは夢にも思わないだろう。お母さんが居なかったら、そうなってしまっていたと思うが、二人は付き合っていても橘が、せりかに対して不埒?…な事をするとは思って居ないようなのだ。本当に絶対見た目に騙されていると思うが話すのは途轍もなく恥しいので、ずっとそう思っていて欲しい所でもあった。


甘い空気を払拭する様に、玲人とは別視点の合宿での軽い揉め事の話は面白いほど、橘と玲人の性格の違いがきっちり浮き彫りになるような話だった。同じ話が橘視点だと結構辛辣な上に色んな人の思惑が絡んでそういう事態になったという話になった時は、起こった事象のみを聞いていたので、大分乾いた笑いをしてしまったら、「もしかして玲人から同じ話をもう聞いたの?」と言われてしまった。


「同じ話だったけど、解釈が全然違って面白かったわよ。流石に私の彼氏が橘君なのが、自分でも妙に納得しちゃって笑っちゃったのが、乾き気味になったけど、玲人って裏側を全然見ようとしないのも良い所なんだろうけど、同じ話を聞いたら、もう少し玲人も考えた方がいい様にも思って来てしまって……どうなのかしら?」


軽い揉め事というのは大した事ではない様に玲人から聞いた時には聞こえたが、橘から聞くと大した話だった。一年生に帰国子女がいるらしく、日本式の上下関係に大分疎い様で、上級生よりも先にお風呂に入ってしまったらしい。お風呂に浸かる習慣が無く、シャワーをサッと浴びて直ぐに出て来た様で、短い時間だった為に殆ど気づく者も居なかったらしいのだが、その子と同じクラスで比較的親しくしている子が皆の前で注意したらしい。そっと言ってあげれば良いのにと玲人から聞いたのはそういう内容だった。


しかし、橘の話では、その帰国子女の一年生は大変な実力者で、伊藤がかなり目を掛けているらしい。秋の大会もレギュラー入りさせたいのだが、チームプレイであるサッカー部であまり嫉妬の対象になってしまうと、自分が引退してからやっていけないだろうと思って、レギュラー入りを断念したのだが、それでも三年生には最後の大会な為、宝の持ち腐れに映る様で、なんとかしたいのを伊藤が止めて居るらしいのだ。そんな状態で、上下関係を無視する様な事をしたので、彼のレギュラー入りで外れそうな二年生の何人かが大激怒したらしい。其処を伊藤が、誰も迷惑掛かってないんだし、自分と玲人が指導に当たるからと皆を宥めて、事が治まったとの事だった。どうして玲人なの?と聞くと言い辛そうにしながらも、玲人が教えたんだったら有る程度迄はテキトウでも納得されて皆の点が甘くなるから…らしい。成る程ね~!酷いといえば酷いがその話はせりかには、とてもおかしかった。


伊藤もその辺はいいセンを突くが、玲人だけでは心許なく思い、橘にも伊藤から、こっそり教育係を頼まれて頷いたのだが、やはりというか絶対にあり得る事だが、玲人の言う事と橘の言う事には細かい差が出てくる。細かいといっても上下関係など細やかな事が殆どだ。橘も本人の為を思えば譲れない所らしい。しかし、本人は皆の前で玲人に教育させると言われているので比較的楽な玲人案で動くので、橘も腹を立てた振りをして、放置しようかと思ったが、来年は良い人材に成りそうなので、捨てるのも惜しいのが悩みどころだった(流石に黒い!結局自分の為か…)そこで、皆にも判る様に、上級生呼び出しを橘がして、サシで本当の所を彼にも解る様に細かく説明をした。彼には、空気を読まなくても天真爛漫で許されてしまう玲人がお手本では駄目で、自分の真似か、今迄が無礼だった以上、もっと丁寧に上級生や同級生に接する様にしないと受け入れられないし、実力主義な海外とは違い、伊藤が頑張って他の三年生を説得してレギュラーにしないから、この部に居られるが、他の部長や副部長の意向が通ったら大変な事になるという事を、コンコンと説明した。本人はレギュラーになれば皆に認められるものだとばかり思っていて、それを阻む伊藤に少し反発心を感じていたらしい。それが、世界が逆に成ってしまった様な橘の説明に目を丸くしたが、彼の説明をなんとか理解出来た。というかかなり頑張って言いたく無い事迄言って理解させた。最後は涙目になったので、自分の言葉が通じたのだと判る位まで、どれだけ悪意を持たれている状況か話した。


おまけに友人だと思ってる同じクラスの奴は敵だから、気をつけろと其処まであけすけなアドバイスをしなければならなかった。本当に酷な話だが、窮地に追い込んだのがその友人なのだと説明すると、そいつに文句を言うと言うのを、自分にパスが来なかったら、何も出来ないというのは判るよな?と聞くとポタポタと泣きながら、頷いた。ムカついても表に出さないで、うまく使ってやればいいと思う位の気持ちで、頼った振りをして、敵対心を持たせない様に謙虚に振舞う事。そして、この呼び出しは皆が知っているので、言った事はオープンに話さずに、キツク叱られて目が覚めたので、気を付けるから、他の一年生にもアドバイスを乞う事。そうして受けたアドバイスが正しいか橘か伊藤に確認を取る事。それで、正しく無い事を教えた人間には注意して接すること。その事を履行していない理由は橘か伊藤に怒られてしまったが、多分受けたアドバイスと自分がやった事に細かい誤差があった為だろうと思う、と相手の悪意には自分が聞き間違えたで通す事。


流石に理不尽極まりないアドバイスに驚いたが、その位、自分の考えを上級生になるまで読ませない様にする事と、慣れてくれば、皆も実力者の彼を認める様になる事を説明した。表面上揉めない事と、出来るだけ味方を増やすこと。それが出来なければサッカー部を辞める事。しかし、このサッカー部という小さないくさ場は、これから日本で暮らす彼に、常識を身に付ける絶好の場を逃すのは勿体無いから、プライドを捨てて、今言った事を一回実践してから考えて欲しいと橘は話した。


翌日から、別人の様に変わった彼を、橘が相当きつく叱ったのだと伊藤以外は思ったようだが、そういう風に仕向けたから、急激な変化は皆に不審がられないとも、言って置いた。逆に今日を逃せば、変われば不信感を持たれるのだから、その日はワザとらしくても橘の言った事を実践する事をキツク言い含めておいた。


変わった彼を、大体の者は好意的に受け止めたが、友人だと思っていた彼は、やはり面白く無さそうにしていたのが、その彼にも分かり、それから毎晩、橘の説教を聞きに行くと宣言してやってこられたのには、流石の橘も参ったらしい。しかし、根気良く、その日の反省会をやり、最終日には、なんとかなる所まで持って行けたので、ホッとした事。伊藤がニヤニヤしながら橘を見るので、こっそりメールして、事の顛末を報告したが、悔しかった!と橘は言った。




「伊藤先輩にしては、結構親切過ぎで、かなり胡散臭かったんだけど、伊藤先輩も実力が飛び抜けてるから、少しは苦労したのかもって思ったけど、結構厄介事を押し付けられた上にニヤニヤ見られた時には、そういう気持ちが綺麗に消えて、ホントにムカついたけど、来年は、玲人が部長になるだろうから、どうしても締めて置かないと甘くなるから、憎まれ役を買ってでたけど、彼が劇的に言う事聞く様になったら、他の一年生に脅えられちゃって、少しプレーでアドバイスしただけでも、引きつってたから、狙い通りなんだけど、ちょっと気分の良いものでは無かったな。それと…さっきの話だけど、玲人に裏を見ろって言っても、裏が何処にあるか多分分らないし、そんな玲人の前では、みんな善人に成らざる得ないと思うよ。結局そういう奴なんだから、修正なんて出来ないし、必要ないんじゃないかな?」


「ずっと聞いていたら、私は伊藤先輩じゃ無くて、玲人にムカついてきたけど、橘君はそうは思わないの?綺麗な所ばかりしか見ない玲人は、その他の部分を他が担う事に成るってずっと気が付かなくて良いと思ってるの?!私は許さないわ!」


「でもサッカー部の事は、部外者の椎名さんが言うのは駄目だと思わない?もちろん椎名さんが玲人の所為で困ったりした事で文句を言うのは構わないけど、今時点で問題が無い場合は、玲人は簡単にスル―しちゃうでしょう?更科さんの事だって今は気を付けているし、結局そうなった事態の醜さは玲人も見ていなかった訳じゃ無い。段々には、自然と理解して行くものだと思うよ。玲人の場合は、現実逃避で嫌な事をみないって訳じゃ無いんだから」


「それでも、能天気に映るけど、橘君が許しているのには、私が怒る事じゃないわね。今度何かで迷惑掛かった時には、こころして頑張って言う事にするから、玲人の事ごめんなさい!」


「玲人の事で謝るのは駄目だって、修学旅行の時に分ったって言わなかったっけ?」


「……!…確かに言ったわ。ごめんなさい。どうしても家族っていうか身内の気分になっちゃうのよ。ムカつくのもそういう迷惑をヨソサマにお掛けする事自体に腹が立って来ちゃうのよ」


「まあ、良いけどね。玲人の事は俺は怒って無いって事だけははっきり言って置こうかな。後、玲人は友達だから、最初に言った事を実行して凹まさないで欲しいんだ。椎名さん、お願い!」


「胡散臭いくらい優しいわね~。玲人に!」


「椎名さんは俺に攻撃が上手いよね。痛い所が良く解ってるよね。伊藤先輩の事を俺が言った事をそのままなぞるんだもんなぁ!」


少しだけ不貞腐れた様子を見せる橘はなんだか可愛く見えた。玲人の事を庇うのも、落ち込んだ玲人の事を引き上げなくちゃ成らないのが、面倒なのだろうと思うと、優しいと言えなくもないが、まあ、自分の為か……と思うと橘らしくて、それは、頼む気にもなるかもしれないと、却ってストンと納得できた。玲人の為にでは無く、橘の為に言わないで置いた方がいいのだと理解出来た。


「ふふっ。玲人の事も橘君の為に言わないで置くから、覚えておいてね?」


にっこりと笑って言うと、今度こそ、橘は本当に心底嫌そうな顔を見せた。


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