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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
82/128

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橘と玲人が長野へサッカー部の合宿に行く日が来た。五泊六日で実質六日間橘と会う事が出来ないのは、付き合い始めてから初めてのことで、せりか自身、寂しくてどうしようも無くなるような気持ちに五日目くらいには、もしかしてひょっとするとなるのものなのかなぁ?と思うが(もちろん寂しいが、そこまで恋愛体質になれる自信は無い。たかだか六日だし)……玲人に到っては、偶には会わないこういう期間は意外とさっぱりした気持ちになった。もちろん本人には絶対内緒だが!


涼しい所で特訓なら、それはそれで大変なりにも二人にとっても、楽しみにしていただろうと思うので、にこやかに玲人を見送って橘とは昨日会って「楽しんできてね」と言うと「やっぱり思っていた通りさっぱりしてるよね」と褒められても貶されてもいないが、がっかりもされていないという彼独特の言い回しをされた。


要はせりかの事が分かるだけに変な女の子らしい期待もされていないらしい。楽と言えば楽なのでせりかもにっこりとその言葉を笑顔で好意的に受け止めた。


こういう時って、会えなくて寂しいと言った方が可愛げがあるのだろうが、夏休みの初めに毎日会えないのはやっぱり寂しいよねと言ったら、彼は玲人が居れば平気じゃないの?と淡々と返して来た事を思い出し、相手のせいも少しあるかな?とせりかは思う。大体が、橘がさっぱりした態度なのに、行かないでぇ!みたいになれっていう方が無理だと思う(言われてないけど)


なんだかんだと言い訳したくなるのは、この間本庄と会った事を後ろめたいとは思わないのだが、その前に会えない事を寂しいと彼に対しては思ってしまった事にあった。時期の長さや、電話やメールなども全然して居なかったという違いはあっても、其処だけはせりかは橘に対して後ろめたかった。それこそ本人に懺悔したい位だったが、言ったところで橘は『椎名さんは本庄に弱いから仕方が無いんじゃないの?』と軽く言われて終わるだけで流されてしまうだろう。かといって正直に告げた言葉が彼を傷付けないとは言い切れない。


自分が楽に成りたいが為の懺悔は、意外と繊細な部分もある彼に言うのはやめて、自分の心の中だけに留めた。


先輩の伊藤と玲人と橘にあげた、ねこ型の小さいモコモコのお守りの中には四つ葉のクローバーを忍ばせた。元々摘んであったものを押し花の様に乾燥させて置いたものを取ってあった。色は橘には真っ白で、伊藤にはトラ柄、玲人にはブチのものに仕上げた。みんな同じよりは少し有難味が増すかと思っての事だが、橘以外には、違う事は言っていないが、伊藤は大層気に入っているらしく、トラねこお守りを胸のポケットにいれてくれているらしい。彼氏もこれぐらい大事にしてくれるだろうと一般的には思うが、橘はお守りというものをあまり信じていないと思われる。伊藤に作ってくれて自分にもくれた事をせりかに感謝している事は判るのだが、明らかに伊藤や玲人とは熱量の違いを感じるので、一番気持ちを込めて作った白猫のお守りは、気持ちが届いて居ないと思うと我が彼氏殿の性格も解ってはいても、物悲しい気持ちには少しなった。


彼氏以外の二人がとっても大切に扱ってくれているのを玲人から聞いたから思ってしまう不満だが、作っている時から、そんな気は少ししていた。良くとれば彼は他力本願では無いのだろう…。


伊藤には勝利祈願だと言ったが気持ち的には、合宿前だったので、安全祈願の気持ちを込めた。怪我や事故などから大事な人達を守って下さいとせりかの信じる神に念じた。そう思うと皆の為と言うよりは自分の為に作った様なものだなと思う。




そんなで、六日ほど、玲人から解放されたので…(本当は彼氏が居ないことの方が重要な筈なのだが、隣なのでほぼ毎日会う事になる玲人が居ない事の方が実質大きかった)中学からの友達で別の高校に進んだ友人達と会う約束をしていた。この友人達は玲人のファンは一人も居ない。だからこそ、友人に成れたとも言えるが、メールでせりかに彼氏が出来た事を伝えてあるので、今回は皆に色々聞かれて大変そうな部分はあるが、他の彼氏持ちの友人の話も聞けるので、少しは参考にさせてもらいたいかなぁなんて思っていたりする。


後は、美久と弘美とミステリーの映画を観に行ってから買い物に行く約束もあって既に二日は埋まっていたところに、本庄から、真綾が寂しがってゴネているから、ごはんに付き合ってくれないか?と来たので、その二日以外の日と帰宅の日以外で調整してもらい、三人で飲茶に行く事になった。


やはり真綾は、玲人が居なくて解放感いっぱいな自分とは違い、かわいらしいのだなと思うと、方向が激しく違うが、橘に彼女としてはなんだか申し訳なくなった。






中学から長い休みに集まるメンバーは、せりかも含めた四人で、内、二人は同じ公立へ、もう一人は私立の女子校に通っている。


いつも近況報告をしながら、お茶したり、カラオケにいったりするのだが、カラオケに行ってもおしゃべりの方が多くなって殆んど歌わない事も多くなってしまうのだが、密室で騒げる有り難さもあって、この日もカラオケにいった。フリードリンクにしてもらって、自分で飲みたいものを取ってきた。せりかはとにかく暑かったので氷をたっぶりいれたウーロン茶にした。


皆、各々、飲み物を取って来て、皆で食べられる様なものを選んで食べ物を頼んだ。


久しぶりに会うと、テンションが一気に中学の時に戻ったみたいに高くなってしまう。皆で「元気だった?」「髪の毛色変えたの?!」「それより、せりかの彼氏の話聞きたい!」といっぺんに話し出し、取り敢えず落ち着こうよ!とせりかが言うと、にんまりと女子校に行った由実ゆみが「じゃあ、せりかの話から聞きたい!」と言い出したので、手っ取り早く分かるように携帯の待ち受け画面を見せて、これが彼氏だと説明すると流石に皆が息を吞んだ。


まあ、理由は分かる。他人ごとの様に思うが、橘を一番最初に見た時には自分も同じ感想を持ったが、玲人に全然、なびかなかったこの三人は、もしかするとあまり反応が薄いのではないかと、ちらりと思ったりもしたが、やはり彼の美貌は別格の様で、皆から激しく羨ましがられた。あゆみは一年から彼氏がいただろう!と突っ込むが、「それは良いから、どうやって捕まえた訳?!」と興奮した三人に追求されるが、「向こうから言ってこられたのを断ったんだけど、玲人が親友で無理矢理付き合う事になった」と正直に言ったら、付き合いの長い彼女らは、あまり多くを語らなくても、せりかの事や玲人の事を分かっているので、玲人の過保護さを心底呆れられた。


「玲人君、まだせりかの背後霊みたいな事してる訳?!」


「由実、背後霊は言い過ぎじゃ無い?」と奈々がフォローしてくれるが、あゆみに「じゃあ金魚のフンでいいんじゃないの?」と玲人に厳しい沙汰が下った。


この三人は基本思った事を正直にいうと言えば聞こえは良いが、要はせりかも含めて口が悪い。特に玲人は、せりかにべったり張り付いて謂われの無い事を言われる元凶だったので、悪く言われ様も半端なく、今回もかなり悪く言わてしまいそうだった。他の人にこれだけ玲人を悪く言われれば腹を立てるところだが、由実達は、せりかの苦難に腹を立てて、玲人に良い感情を持っていないので、もっと言ってやってくれと思うくらいだった。


「最初はこれだけ格好良い人となんて付き合えないよって思ったんだけど、そういうのが、あまり気にならなくなって来た時期に玲人が強力に薦めて来て、まあいつもならスル―するんだけど、彼に半分騙される感じで付き合い始める事になっちゃって、始まりはどうあれ、今はうまく行ってるから騙されたのもチャラかなぁって感じなのよ。あと玲人の無理矢理押し付けもね!」


「彼氏、見た目は良いけど、中身は如何いう人な訳?!」


由実が言うと、あゆみと奈々も「せりか、大丈夫なの?それっ!」と最もな心配をされたので、我が彼氏殿は見た目とそれ以外も完璧だけど、少し腹黒いのをエピソードを交えて話すと、急に静かになってしまった。


せりかもみんなが引いたかなぁ?と心配になりながら見回すと、案の定ドン引きされている様だった。


立ち直りが皆よりも早い奈々が、「でもイケメンで首席で次期生徒会長の彼なんて、少しは悪い所も無いとなんだか逆に怖いよね」と言ってくれた。それは常々、せりかも思っている事なのでコクコクと強く頷くと、他の二人も、せりかが何故、橘と付き合う事にしたのか、少しは分かってくれた様だ。よかった!ドン引きされたまま終わらなくて…。有難う、奈々!!


「それにしても綺麗な人よね…」


由実がそう言うのを、「そうだよね。実物も凄まじい迫力があるのよ」とせりかが自分の彼氏を語っているとは、とても思えない客観的な言い方に皆は少し笑ってしまった。


そのお蔭か少し場が和んだ。


「確かに、みんなに心配されるのは分かるんだけど、彼本人にも趣味が悪いって言われちゃうけど、犯罪に迄は手を染めないし、一応バランスが取れるように上手くやれる人だから心配しないで?」


「せりか、ちょっと基準が激しく間違ってる気がするんだけど!」


「でもね、現生徒会の会長さんと副会長さんにも推薦されてだから、私だけがそう思ってる訳でも無いのよ」


奈々が感心したように「彼氏って周りを味方に付けるのが上手いのね」と言うと基準云々言った由実も、あゆみも全体を味方に、せりかに言い寄った綺麗な彼氏が色々な意味で称賛に値する人物なのが、少しずつ判って来た。


由実がはっとした様に奈々に「奈々は彼は出来てないよね?!」と聞いた。


「うん。由実もでしょう?」


「私は女子校だから、なかなか出逢いが無いけど、奈々はそうじゃないでしょう?一番彼氏が出来無さそうだったせりかに彼氏が出来たら私だけ一人って事に成りかねないわ!」


「女子校だって他校とコンパとかって有るんじゃないの?」と奈々は返すがひらひらと手を振って由実が私はああいうのは嫌いだと言った。


私が一番彼氏が出来ないと思われていたのは心外だが、本庄や真綾にも玲人が洩れなく付いてきたら無理!と言い渡されていたので、由実がそう思っていたのも無理無いだろうと思った。


「大体、他校とコンパって、共通の話題も乏しいのに、見た目だけしか判断材料が無いのに彼氏が出来る訳ないでしょう?」


皆もまあ、そうよね、とは言ったが世間一般ではそれでお付き合いしている人達は沢山居るのだし…とは思うけど、由実のこのきつい性格では難しいだろう。


奈々が別に彼氏が居なくたっていいじゃん!と言うとせりかもそう思うが、由実は、せりかに彼氏が出来た所為で焦りを感じてる様だった。どれだけ確立低いと思ってたんだ?と問うと高校の間は安心してたのにぃー!と返って来たのでやっぱり玲人が一緒の間は無理という結論にされていたらしい。


あゆみだけは高校に入って直ぐに告白された彼氏と今迄続いていて、同じ高校の奈々に言わせると、目も当てられないバカップル振りらしい。まあ、頭にお花が咲いてるのは、あゆみ達だけじゃないから良いんじゃないの?と相変わらずの毒舌ぶりだ。奈々は他人の毒舌にフォローもしてくれるが、本人自体が一番ナチュラルに毒舌なのだ。そうすると、今度は、せりかにフォロー役がまわってきてしまう。


「あゆみ達がうまく行ってるなら、うまく行くコツとか初心者だし聞きたいなぁ!」


「コツって言われても私も今の彼氏としか付き合ってないから、せりかに助言とか出来る程慣れてないけど、束縛とかは、あまりしない方が良いって周りの子達も言ってるわよ」


「束縛ねぇ~。縁の無い言葉かな。彼も束縛なんてしてこないし、私も勿論しないけど…」


「せりか達ってつきあって二ケ月くらいでしょう?少し温度低く無い?」


「ずっと友達だったし、委員も相棒だったから、付き合う前から一緒に居過ぎて、付き合い始めても糖度が上がらないのよ。とくに彼の方が!」


「せりかは、あゆみ達みたいにバカップルになりたい訳でもないんでしょう?」


奈々がそう言うので、考えてみるが、恋愛事は少しは馬鹿っぽい位でもいいから、甘々でラブラブな雰囲気もずっとは無理だけど、付き合い始めくらいは味合ってみたいものだという願望はある。


「少しはバカップルでも良いけど、相手もさばさばしてるし、急に甘くなったら何か良からぬ事を相手が考えてそうな気もして来るから、疑っちゃって無理かも……」


「はぁ~。なんだかせりか達って周りにちゃんと付き合ってるって思われてるの?」


「彼の方が学年の有名人だから、付き合い始めて直ぐにみんなから認識されたけどね。一年生の頃から新入生代表であのルックスだから、知らない人が居ないのよ。その上サッカー部で玲人と一緒にいるから、目立ってしょうが無いわ」


「よく付き合い出したわね。玲人君で大分懲りてるから、せりかはもう少し普通の人を選ぶかと思ってたのよ」


あゆみが言うと奈々と由実も「そう、そう!」と同意の意を示す。……私だってそう思ってたわよ!と今言ったところで仕方が無いが、去年の秋にそれが原因で断ろうとしたが、友人に諭されて考え方が変わったが、結局その友人に転んでしまったが、彼女持ちで振られた話までしてしまった。


「えー!せりかに好きな人が居たなんて初耳!如何いう人なの?」


「奈々!今の話聞いててよく根ほり葉ほり聞けるわね!もう振られた上に、やっとふっ切って彼氏が出来て、ちょっと糖度低めでもうまく行ってるところなのよ?」


「えー。でも興味があるんだもん!イマ彼の話はこの辺で許すから、まあ深く聞いても結局惚気られそうだし?そのせりかを振った彼の話を詳しく聞かせてよ」


誰か奈々を止めてくれ!と思うが普段奈々を止めるのはせりかの役目な為、あゆみも由実もせりかが彼女持ちでも好きになってしまった人が気になる様でキラキラと目を輝かせた。


どう話したものかと悩むが、この三人は長く付き合えるだけあって、せりかが簡単に靡かない事も知っている。橘やあの本庄でさえ、玲人との仲を結局うまくいくのだろうと思っていた節があった様だが、由実達は微塵もそんな事を思わないくらいせりかの事をよく解っている。だからこそ、彼女持ちの男に橘を振って転んだのは、せりからしからぬ事で興味が湧くのは解るのだが…玲人に告白をされた事だけは絶対黙っていようと決めて仕方なく詳細を話始めた。


「去年の文化祭、呼ばなかったのを責めないで欲しいんだけど、劇でシンデレラ役をやる事になっちゃって、王子様役の今付き合ってる彼氏とセットに見られがちだったからなんだけど、その振られた彼は、ワルツの先生だったのよ」


「ワルツ?ってあの踊る奴よね~。彼氏王子様ってバッチリハマり役だけど、付き合って無いのにその頃からせりかと親しくしてたんだ?」


「私と親しいというよりも、玲人の親友だったし、委員の仕事も一緒だったから巻き込まれて他の人には親しく見えていたかもしれないけど、なんだか完璧過ぎで、奈々じゃないけど怖くて少し雲の上の人って感じだったの。しかも当時、あわーく憧れてたりしたから、口を聞くのも緊張するくらいだったしね…」


今思い出すと少し痛い話になる。わたしってば憧れてた相手を振ってしまって、今は色々あって橘の彼女に成ってるってビミョウ…だよなぁ。振り返りながら思う。


「それで、今の彼、橘君っていうんだけど、彼に急に告白されたら、情けないんだけど生まれて初めての告白だったりで、こっちが片思いしていた相手だったのに、色々面倒で断りたくなっちゃったところに急に親しくなったワルツの先生の彼にいろいろ相談してるうちに、コロッて感じで転んじゃって、結構最近迄、しつこく思ってたんだけど、みんなに心配されちゃって今の彼を推してこられたのに乗るような形になったけど、橘君と付き合う事になったのよ」


あゆみと奈々が「たちばなくんね~!!サッカー部の!」と言ったので「知ってるの?」と聞くと練習試合が最近あゆみ達の学校とあったらしく、あゆみと奈々は玲人と会いたくないので見にいかなかったが、見に行った人達からはどうやら話題の中心だったらしい。


「正直騒いでる子達を結構さむい感じに見てたんだけど、リアル王子って試合直後は騒がれてたわよ。サッカーもすごく上手いんでしょう?」


「うちの学校では怖ろしい事に玲人の方がモテるのよ!愛想があるから。橘君は無駄に愛想を振りまかないでくれるから、彼女になっても風当たりも無いし、そういう意味では玲人とは比べられないくらい思慮深い人なのよ。玲人の彼女なんて騒がれた子は、学校で大変な目にあったくらいなんだから!」


「相変わらずなんだね~!玲人君は…」


「でも玲人もその件で反省したみたいよ。今付き合ってる彼女の事は内緒にしてるくらいだしね」


「えー!!玲人君に本当に彼女できたんだぁ~!」


奈々達驚き過ぎだよ!一応玲人は彼女がすぐにできても全然不思議じゃないくらい顔も性格も良い。しかし、このメンバーからはかなり評価が低いのでせりかも庇うような事は言えなかった。理由が思い当たりすぎなのだ。せりかの友人としては、周りの反応に頓着せずにせりかに貼り付く幼馴染の存在は、かなり疎ましく苦々しい存在なのだが、せりかを思ってくれているからの酷評なので、皆に玲人の良い所などをアピールする事は出来なかった。しかし、実際に結構困った時期もあるので、彼女らの評価はせりかにとっても仕方の無い範囲だし、せりかも玲人に何も思わなかった訳では無い。今は実害が無いから忘れがちだが、真綾程では無いにしても、せりかに当て擦りをしてくる玲人のファンの子にこの毒舌集団がどれだけやり返したかを思いだすと、全く持って正当な評価だろうと思い直した。


「玲人には勿体無いかわいい子なんだけど、少し浮世離れてて玲人とは気が合うみたいなの」


本庄との関係性まで話すと面倒なので、そこは省いて話した。


「絶対、相手からでしょう?玲人君って自分から行かなさそうだもんね?」


「まあね。お察しの通り、相手の子から言われて付き合い始めたのよ。でもまだ付き合い始めてから二ヶ月経たない位だけど、相手の子は玲人が居ない期間が寂しいからってごはん付き合ってって言われてるから、順調なんじゃないの?一応!!」


「なんだか面白くないわね!どうせなら、取り巻きの子達の一人とかと付き合ってぐっちゃぐちゃに成って苦労して見ればいいのに!」


奈々酷い…。と思ったが由実もあゆみもケタケタと笑って、そっちの方が面白いのにぃー!と言って修羅場に成らなかった事をとても残念がった。


「近くで修羅場になったら少しはこっちにも被害が来そうだし、なんだか玲人のファンは抜け駆けしない協定があるらしいのよ」


「うわー!キツーい!寒いし痛い」


「そうね。中学生ならまだしも、高校二年でその協定は、無いわね」


奈々とあゆみが揃って言うので、やっぱり真綾の事件はだいぶ大人気ないものだったと改めて思った。


「っていうかすごーく綺麗でめっちゃ性格の悪い子と付き合って貰いたかったかもー!」


由実が言うと「それ良い!」「ありあり!」と二人も笑う。どれだけ嫌われてんだろう玲人!でもそれは少しせりかも見たかったと思うと、この間本庄に一点の曇りも無く玲人の幸せを思いたいなんて、よく言えたものだと可笑しくなった。最近は迷惑掛けられてなかったから、少し血迷ってたかも!と悪友達と話していると、忘れていた事を思い出さなくても良いのに思い出してしまう。


「その綺麗で性悪な彼女に振り回されて困る玲人の姿は見てみたかったわね!」


せりかがにんまりと人の悪い笑みを見せると、「やっぱりそう思うでしょうー?」と由実も笑った。


なんだか最近周りが、沙耶とか弘美とか、美久は置いておいて…性格が良いというか穏やかな子達といて、橘の傘の下で平和に玲人被害も無く暮らして来たので、自分にしては性格が少し良く成り過ぎて、毒吐くのも橘にくらいになってしまった。勿論それは良い事なのだけれど、せりかは少し良い子に成り過ぎな自分を自覚した。


橘や本庄にしても裏の部分はあっても普段は穏やかで上品な人達で、人間的に出来過ぎた印象を受ける。その人達の中で少し背伸びをついつい無意識にして来てしまったのではないかと、せりかは自分の変化を思った。色々あって大人になった部分は有るのだろうが、無理をしていた部分もある様に思う。橘との関係も相手が大人なのに、ついつい合わせてしまっているから、何と無く不安になってしまうのではないかと久しぶりに旧友達と馬鹿騒ぎをして彼等と会う前の自分を取り戻すと、そう感じた。


最近とても嬉しい感想を頂けてとってもハッピーです(^^♪

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