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今回は短めです。毎日更新出来た頃は悩まずUP出来たのですが、書いては消してしまって中々進みません(^_^;)
俺の彼女、椎名せりかは、本当に心底天然な悪女なんだと思う…。
橘はせりかから、今日一緒に泊らないか?と言われた時は心底驚いた。
石原沙耶から貰ったホテルの宿泊券の期日が迫って来ているからという理由だけで、純潔の身であろう彼女が自分と一夜を共にしようと考えるのは、いくらなんでも無謀だと思えたし、彼女らしからぬ言動だとも思った。
元々、本庄の気持ちをせりかが知ったら、どう気持ちが動くか分からないのに、自分と肌を重ねてしまえば、多分彼女は後悔してしまうだろう。そうなれば本庄に行く事は出来ない枷になってしまいかねない。それでも本庄がその事で、せりかを諦める理由に成らないだろうと思うのは、反対に他の男の物になった後だったとしても、せりかに対する気持ちを諦める材料には成り得ないと橘自身は思っていた。
しかし、言われたタイミングが悪かった。初めて見た彼女の水着姿は、細身の割に豊満な胸元に、引きしまった腹部にくびれたウエストに、形のよいヒップは柔らかそうで、透き通る肌を撫で、全身に口付けを落としたくなる衝動が湧いたが、純粋な彼女にそんな事を思い抱いただけでも、とても罪深い気持ちになった。
他の男の視線がせりかに纏わり付くのを払う様に前に立つと、自分をじろじろと見て、せりかから視線を外した男を、悔しいが自分も責められない位にやましい気持ちになっていた。
せりかは一応自分の恋人だが、其処まで許されていないし、これからも許して貰うつもりも無かった。彼女には綺麗なままでいてくれたら、自分の物にならなくても良いと思ったが、自分が彼女を諦める時は、それは無理な話なのだろうという事は分かっていた。本庄とやっと思いが通じ合った彼女達の間に何も無い期間がどの位有るものだろうか?と考えたく無い事を思ってしまう。
結局自分は「その日」が来るまで、甘い蜜の様な時間を、手放せないのだろうとせりかの甘い唇に触れながら思うが、自分にとって特別な彼女からのキスは思考を自分に良い様に鈍らせるのには充分だった。
柔らかな感触を何回か楽しむと、もう少し練習して欲しいという彼女の言葉が重く突き刺さった。自分と彼女の関係は、仮初のものでしか無いという事を思い知らされた様な気持ちになってしまって、彼女のお願いを断ってしまった自分を彼女は懸命に機嫌を取ってくれる。不機嫌なせりかの機嫌を取ってみたいと以前に思ったが、彼女の不機嫌は長く続かずに自然と霧散してしまうので、機嫌を取る間も無かったが、反対の事をされるのは、したいと願った事よりも、より甘美な毒の様な甘さを橘にもたらした。毒に侵された自分が、彼女の差し出した手を取ってしまったのは必然だった。
駅で彼女を待たせて、食料と避妊具を買った。ホテルにもあるとは思うが、自分で買った物の方が、安心出来る気がした。彼女を傷つける様な事は出来るだけ可能性を減らしたかった。出来たら身体の周期も聞きたかったが、初心な彼女にそれを問いただす事は、流石にどうしても出来なかった。
彼女は、初めてきたラブホテルという物に、興味深々の様だったが、呼び寄せると、素直に近くに来たので、その勢いのまま愛しい彼女を自分の物にしてしまった。そうしなければ自分が途中で彼女を説得して、辞めたくなってしまいそうだった。
綺麗な彼女を穢すのは、かなり躊躇われたが、自分にとっても初恋の女性である彼女の肌はとても甘く、刺激を与える度にあげるかわいらしい声も、酷く耳に毒になった。
結局、朝方まで彼女を貪ってしまったが、恥しそうに布団で顔を隠す彼女が可愛らしくて、しつこくもう一度抱いてしまったが、初めての彼女の負担を考えると、かなり理性が飛んでいたとしか思えないが、優しい彼女は、別れ際に目を閉じて口付けを強請ってくれた。自分がそうしてくれないとキスがしにくいと言ったからだが、部屋を出る前に求められた、それは、彼女の赦しからなのか、愛情からなのか橘には判断が付かなかったが、それでも、とても嬉しくて全身にせりかの記憶を刻み付けて置きたい気持ちになった。
送ると言ったのを断って来たのは、予想出来た事だった。昼間だし、大丈夫だろうが、昨日から今朝にかけて酷使してしまった身体が心配になったが、此処から最寄り駅まで近い事と、沙耶が迎えに来てくれるのだと聞いて、せりかの言う事をきいた。
駅で別れる時に手を振って、もう一度振り返った彼女が、何を思ったのかは判らなかった。後悔しても良いと言ってくれた彼女は気丈に振舞っている様に見えたが、本当はどう思ったのか聞きたかったが、それは流石に出来る筈も無い。沙耶にせりかの様子を聞いたら教えてくれるのだろうか?と思うが、多分沙耶はせりかが橘に知られたく無いと思う様な事は教えてはくれないだろう。
家に帰ると母親が昼食の準備中だった。部屋にいるから、出来たら呼んでと声を掛けて、三階の部屋まで行ってベットに横になると、昨日はまどろみ程の睡眠しかとっていなかった所為か、心地の良い疲れも相まって、そのまま眠ってしまった。
夕方に起きると、ラップの掛かった焼きそばが冷蔵庫に入っていて、母は出掛けてしまった様だったので、レンジで温めてそれを食べると、彼女から随分前にメールが来ていた。多分、帰宅した事を伝えるメールだろうと思ったが、やはりその通りで安心したが、文の終わりに「じゃあ、またね!」といつものような文字が有るという事は、もう会いたく無いと思われたりはしなかったようで、一先ずホッとして体の力が抜けた。
身体を気遣うメールを出すと、即座に大丈夫だからとだけ返事が来た。
結局、三日後に橘の部屋に、伊藤に渡す約束をしたお守りを持って来てくれたせりかを再び抱き締める迄、橘の苦悩は続く事になった。
今回の題名は「誘惑に負けた理由」です。書けたらサイトで甘甘な三日後の風景を短くでも書きたいなと思っています。次々回は出来ているので、次回分が出来れば更新もトントンと行くと思っているのですけど。
待って下さってる方には申し訳なく思っています。




