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幼馴染の親友  作者: 世羅
1章
8/128

「どうしてあんな所で告白なんてするんだ?橘らしくないよ」


本庄が怒りを含んだ口調で橘を責めた。


「二人きりでしたら断られるもん」


珍しく酷く子供っぽい事を言う。


「それは、仕方無いだろう。向こうの気持ち次第の事なんだから、断られたらすっぱり諦めるしかないだろう。ストーカーか?お前は?」


「そうだよね~。でも諦めたく無いって思ったら、あの時、すっごくチャンスだと思っちゃったんだよね」


「お前みたいなやつが正々堂々と行かないなんて超意外!大体断られるって決まっては、いないだろう?」


「またまた~、本庄だって100%うまくいかないの分かってるくせに」


「それは…」


本庄は言い淀んだ。最近仲良くなったせりかの性格が分かってるだけに、おそらく丁重にお断りされてしまうだろうと思う。たとえ、この超美形で中身も言う事なしの橘であっても無理だろう。本庄の見るところ、せりかはひどくアンバランスな人間だ。人としてはしっかりしているが、女性としては、とても幼いように思う。その落差が激しく、少し危うく見える。その上に、あの幼馴染の玲人の存在が彼女の中で大き過ぎて、恋愛関係ではないといっても、二人の中に割って入るのは困難に思えた。


「やっぱり、分かってるよね。だから、少し思いつめ過ぎて暴走しちゃったんだけど、後悔はしてないよ」


「本当に思い詰めた人間が、自分で思い詰めてるって言わないだろう!!」


「そうかなぁ~自分では、ここのところ結構キテたつもりだけど。劇の練習とかでいつもより接触時間が多いから、そうするとまた、いいところ発見!!ってなっちゃって嵌まってちゃうんだよな」


「お嬢は、確かにいい子だと思うよ。素直でかわいいし、クラスでも結構人気あるけど、お前と高坂で囲んでるのに特攻する無謀な奴なんていないんだから、もう少し余裕持ってゆっくりいけよ。じゃないと椎名さんにとって迷惑でしかなくなるよ」


「すごい高度テクニックでスル―されたもんな~」


「そうだな。校門のところに高坂が居たのも痛かったな。あれで、もう完全に無い事になったな」


少し、憐憫な目で橘を見ると、苦笑いを浮かべたので、こちらが思っているよりはショックを受けているのだろうと思った。


「これからどうする気?」


「どうしようか?相手の出方次第かな?」


「距離置かれちゃうんじゃないの?多少、警戒心持たれちゃってるだろうし」


「それは、そうだけど、あっちから近い内に二人で話す機会を作ってくれる筈だから」


「スル―されてるんだし、きっと、なるべく普通にしつつも二人きりでは話してくれないんじゃないかと思うけど」


「本当に内緒だけど、本庄にだから言うけど、実は劇のキスシーン、とちッて本当にしちゃったんだよね」


「お前、まさか!!」


「誓ってわざとじゃ無い!!どちらかというと椎名さんがよろめいたの支え切れなくてかすっちゃって、超パニックだったから。もちろん少しは嬉しかったけど、向こうには、ものすごく申し訳なさそうにされてて、めちゃくちゃ謝られそうな気配でさ!もう、悲しくなって来たってわけ!だから、そのおかげで話す機会は椎名さんから作ってくれるのは間違いないんだよ。彼女は謝罪はスル―出来ない性格してるから」


「じゃあ、天下の王子様のお手並み拝見ってトコか」


「茶化すなよ。俺だってどうしたらいいかわからないよ。断るスキルしかないし」


「うわー流石、モテル奴しか言えないセリフ来た―って感じだな」


「お前だって結構断ってんの知ってるんだからな。俺より、数多いんじゃないのか?」


「どこの情報網?コワー!俺は、落とす方のスキルもあるから心配無用なの」


「俺より大分性質悪じゃないか!落とすスキル、だったら伝授してくれ!」


「普通仕様はあるけど、お嬢仕様は悪いがない。あれは、レアだから。悪い事言わないから、お前の為に諦めて別の人にしとけって。もう振られてるようなものなんだし。他の子ならよりどりみどりだろう?どうして椎名さんになっちゃうかな~?もしかしてあえて無理な山を登る人達みたいに、ややMだったりするわけ?」


「キツイこと言うなよ。別にそういう趣味趣向は無いよ。しかもまだ、振られてないし。強いて言えばOKの返事貰ってる…って言ってて自分で虚しくなってきた」


「悪い。俺も言い過ぎだわ。ツッコミどころ満載なんでついつい、いつも言葉が過ぎちゃうんだけど、お嬢は全然付いて来れるからスゴイんだよ」


「謝ってるのに、傷に塩塗ってどうするんだよ!そんなの分かってるよ。いつもお前達の会話、テンポ良くて羨ましいと思って見てたから」


「乙女だね~。まあ、協力はするから。相談はいくらでも乗るし、なんなら、俺からもお嬢にお勧めしとくから」


「有難う。お前って口固いし、しんどい話も深刻にならなくて済むから実際は助かる」


「やっと分かってくれたみたいで良かったよ。お嬢の方からも相談される事多いから、うまく行くように俺も力になるから頑張れよ」




その日の夜、橘に、せりかから『お話したいことが有るので時間を作って貰えませんか?』というメールが来たので、代休日である明日に会う事になった。


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