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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
79/128

79

運営様よりR18指定の内容だとの判断がありまして、78.5話は消させていただきました。内容は無くても繋がっています。

「せりかちゃんこっち!」


「沙耶ちゃんおはよー!」


沙耶の家の最寄り駅までせりかは来ていた。橘が送ってくれると言ったが、固辞して正解だとせりかは思う。


やっぱり昨日の事聞いてくるよねぇ……。


女同士で、色々と此処迄お膳立てして貰った相手に、言葉を濁せる筈も無い。


だからといって何でも話すのもちょっとなんだよなぁ……!


せりかの身体中には橘の気配がまだ残っている様で沙耶の目に、自分がどのように映るのかを考えただけで、面映ゆい。


それなのに橘と二人の姿を、昨日の事を知る唯一の人に見られるのは、流石に恥しくて無理だと思った。


沙耶は昨日の事には触れずに家へとせりかを案内してくれる。


煉瓦色のマンションに着くと「ここが家なの」と言ってオートロックの入り口を鍵で開けた。


エレベーターで九階に着くと降りて直ぐに石原という表札が見えた。部屋番号は901だった。


鍵を開けて入ると、一軒家にしか住んだ事の無いせりかには、高い場所に住むという事自体、少し羨ましいが、沙耶に言うと


「偶には良いかもね。でももっと高い高層マンションは辛いかもしれないわね」


と外に出る迄の苦労を少し話してくれたが、玄関から一番奥に入った、リビングに案内されるが、流石に日当たりが良く、明るくてシンプルな家具が配置されていた。


ソファに勧められるまま座ると、麦茶と、小さく切ったつまめる感じのサンドイッチとカリフフラワーとアスパラのサラダに、キャベツと人参と玉ねぎのコンソメスープが出て来た。


「お昼食べちゃったかもしれないけど、もし良かったら私が作った物だから、つまんでね!」


「有難う。お昼時に来ちゃったのに、昼食の事を何も考えて無かったよ。これ母に持たされた羊羹なんだけど、良かったらお家の人達で食べて!」


手土産を渡すと「母が大好物だから喜ぶわ!」と言って冷蔵庫にいれた。


「沙耶ちゃんの手作りスープ美味しい!少し昨日から野菜不足だったから、身体に沁みる感じがするわ」


「そう思って少し野菜たっぷり目なメニューなの。昨日だってプールで食べたのだって、栄養的には不足してたでしょう?」


「昨日から至れりつくせりで、何て言って良いのかわからないわ!沙耶ちゃんってすごいよね!」


「何もすごい事なんて無いよ。昨日はプールでこっちもお世話になっちゃったしね」


「楽しかったよね!少し遠いから小旅行気分だったし…」


「そうね!橘君と玲人君ともせりかちゃんのお蔭で、すっかり友達だしね」


「玲人とは前からでしょう?」


「ううん。委員の仕事は一緒にやってたから、一緒にいる機会も多かったし、玲人君の性格から言ったら、みんなと親しいから、特別に親しい感じでも無かったのよ。名前だって殆んどの子を呼び捨てにしてるしね?男女問わない所が玲人君らしいから、あんなにモテても男子に妬まれないのよね!」


「玲人らしいけど、橘君は、あまり女の子と仲良くなる方じゃ無いから、沙耶ちゃんが仲良くなったのは、玲人と驚いてたんだよね」


玲人と偶々、二人きりになった時に、沙耶の話になって、玲人も沙耶と忍の事は吃驚だよなぁ!と言っていたので、そのまんま沙耶に言うと、沙耶は、橘君は、せりかちゃんと仲の良い私とだから仲良くなったけど、それが無かったら絶対、特別仲が良くなる要素は無いと言って笑った。


「橘君の方が玲人君に比べると壁が高いけど、超えちゃうと意外と人懐こい雰囲気なんで、玲人君よりも仲良くは成り易いわね」


「そうかな~?!なんだか玲人に関しては、垣根が皆無なんで、逆によく分からないけど、橘君は壁を越えても、崖の上の燕の巣みたいな気がしてくるのよね~」


「やだ!高級中華食材っていう事?まだ高嶺の花とかの方が表現的に良くない?」


なんだか付き合ってる彼氏を表現する言葉としてはどちらも合っていないとせりかも思うが、付き合う前は確かに高嶺の花感満載な人に思えたが、現在付き合ってる彼氏を高嶺の花だと言うのは流石に抵抗感があった。


抱き合えば距離が縮むものだと思っていたが、そう実感出来ない辺りが、なかなか手に入らない絶壁に造られた燕の巣の様な気がしたのだが、それを沙耶に言っても分かってもらえるのだろうか?


「高嶺の花も確かに付き合う前はそう思っていたけど、付き合いだしてからは、それとは少し変わって来てて、なんだか橘君って、付き合ってる実感がすごく薄い人なのよね…」


「昨日は、まさか何もなかったとかいう訳じゃ無いのよね?!」


「沙耶ちゃん……」


「…ごめんなさい!いくら友達でも踏み込み過ぎだわ。言わないでいいから!私も少しおせっかい焼き過ぎた上に、根ほり葉ほり聞いたんじゃ、せりかちゃんに嫌われちゃうわね。まして相手も友達なんだもの。プライバシーの問題もあるわよね」


「唯、恥ずかしかっただけで、直球で聞かれたんで、ちょっと言い淀んじゃっただけで、沙耶ちゃんが聞くのが耐えられないとかじゃなければ、大体は話すつもりだし、橘君にしたって、沙耶ちゃんのプレゼントを受け取った時点で、ある程度、沙耶ちゃんに私が話をするのは想定内だと思うわ。まして沙耶ちゃんが他の人に言わないだろうって言うのは、私も彼も分かってるしね…」


「そう。デリケートな話なのに、いくらお膳立てしたからって、聞いていい事じゃ無いんだから、せりかちゃんも無理に話す義務は無いからね!悩みとかならいくらでも聞くけどね。昨日橘君に聞いて貰ったら、私って異性の親しい友達って居なかったから、そういう人が出来るのっていいかなぁって思っちゃったけど、せりかちゃんは、彼氏にそういう事を相談しても気に成らない方なのかしら?」


「うん。それは全然大丈夫だよ。私なんてずっと本庄君に相談してたくらいだもの…。やっぱり今でも聞いて貰いたくなる時もあるけど、流石に橘君に悪過ぎて止めてるけど、本庄君が真綾さんと付き合っているままだったら、多分甘えたままだったと思うと、私の場合は拙かったと思うから、相談出来ない関係になったのは、却って良かったのかもしれないわね」


「せりかちゃんの中の本庄君の存在って、橘君と比べてどうなの?!」


沙耶は踏み込んで聞いてはいけないと、思ったばかりだったのも忘れて、せりかに少し詰め寄ってしまった。橘の気持ちを思うと、はっきりとせりかの気持ちを聞いておきたかった。


「それは比べる次元が違うでしょう?橘君は恋人で、本庄君は友達なんだもの。友達同士だって比べられないと思うけど、彼氏と異性の友達を比較するのは、流石に橘君に失礼過ぎだと思うけど、沙耶ちゃんは、私が本庄君に気持ちが残っていると思ってるのね?」


「それは玲人君も橘君も少しは思ってるみたいね…」


せりかは溜息を吐くと、玲人や橘は沙耶に何を話しているんだか?!と思ってしまったが、純粋に橘と自分を心配してくれていると言うよりも、橘の心配をしている様に見える。


「橘君は、私の事を天然に悪女だって言うんだけど、もしかして沙耶ちゃんもそう思って、橘君に同情してるの?」


「せりかちゃんの悪女説は置いといて、橘君ってせりかちゃんの事がとっても好きなのが分かるから、応援したくなるのよ…」


せりかは、悪女説は置いておくというのは肯定の意味だとわかってしまい、かなり落ち込んでしまった。はっきりと沙耶が言わなくても、その辺はせりかも鈍くは無い。しかし、他の人から見ると、あの王子様は、まるでせりかに片思いでもしているかの様に思われているみたいだが、せりか自身、昨日の事を思い出して、そういう訳でも無いのは分かって貰いたくても、どういう言葉にすればいいのか分からない。橘には、昨日あれだけ愛し合っても分かって貰えない訳は無いと思ったのは、今の自分の心情を思えばかなり矛盾していて可笑しくなった。


やはり抱き合えば手に入るのは身体だけなのかもしれない。橘がプールでそう言った意味合いの事を口にした時は、気持ちが無ければ出来ない事なのだから違うと思ったけれど、却って彼を遠く感じさせてしまっている原因は何なのか、考えると悪い方に行ってしまいそうで止めていたが、友達として埋まって来ていた距離が、恋人になった途端、去年の憧れの気持ちで見ていた恋心が戻って来てしまって、その時の彼に接していた様な気持ちになってしまって、多分よそよそしくなってしまっていた。


敏い彼が、怪訝にしながらもそれに気が付かないとは思えなかった。初めて抱かれた後の恥じらいから来るものではない事は、少なくとも気付いていただろうと思う。



「橘君は、沙耶ちゃんには言って無かったけど、私からしたら初恋の人なの。でも相手から告白された時点では、面倒とか厄介とかって思ってしまったから、初恋っていってもアイドルに憧れるのに近いけど、彼の人間性も私が成りたいと思う理想的な人だったし、多分彼が少し女嫌いの気があるのが分かっていたから、私は一方的な恋愛しかしたく無かったから、彼の事を好きだったのかもしれないと思うのよ」


せりかは、沙耶は多分こういう事を聞きたくて、問い詰めて来た訳では無く、自分が一言『本庄君の事はもうきっぱり忘れて、今は橘君だけだから』と言えば納得してくれるのは、分かっていたが、それは自分の中ではそう思っていても、他者に、橘本人以外に言うのは違う気がした。しかも好きだと思う彼との付き合いが深まる程に、言い様の無い不安感を覚えるが、その正体がせりかにもよく分からない。皆この様に思うものなのだろうか?


「もしかするとせりかちゃんの橘君への気持ちは、憧れで、好きとは違うかもしれないと言う事?」


「っ!」言い様の無い不安感の正体が少し見えて来た。昨日の彼との行為自体は、それなりの痛みはあったものの、相手がとても慣れているのは歓迎すべき事では無いが、そうでなければ気持ちが良くなる所迄、初めてのせりかを引き上げる事は出来なかっただろうとは思う。


「好きなのは好きなんだけど、半年くらい憧れていた時間があって、なんだか気持ちが其処に戻ってしまったみたいに、彼が遠くに感じてしまって、一緒にいる事に緊張してしまうんだけど、沙耶ちゃんの言う可能性も無いとは言えないかもしれない…」


「せりかちゃんは、もう一度橘君に抱かれたいと思っているの?」


かなり際どい質問だが、友人として橘の事を考えている沙耶には、正直に吐露したせりかの言葉を、聞き流せないのは当たり前かもしれなかった。


「うん。それは、はっきりとそう思うけど、気持ちだけじゃ無くて快楽に流されてる可能性も捨てきれないし……」


せりかも言うのに憚れる言葉だったが、よく正体の分からない事の追求に恥じらっていても答えが遠くなるので、率直に思った事を口にすると沙耶が少し頬を紅く染めた。


「ごめんね。私からこんな事を聞いておいて恥しがるのは、酷いよね!……初めてのせりかちゃんに其処まで言わせるのって、感心するのを通り越して呆れちゃうわね!」


「今迄付き合って来て思うのは、彼って何でも出来過ぎなのよ。何をさせてもソツが無いのが、余計に今回みたいな事は堪えるのよね。それだけこの年齢で経験豊富なのも、あの橘君なら納得だし、本人からも付き合う前に少し聞いていたけど、それでも軽くショックだったわ」


沙耶は聞いていて少し眩暈がして来た。せりかが何に悩んでしまっているのか少し分かってしまったからだ。今迄、悪友の延長で好きだった彼が、急に男の人に見えてしまって戸惑っているのだろう。まして随分前に憧れていた期間があったなら、そこに気持ちが友達から戻ってしまって、今迄が近い関係だっただけに逆に遠く感じてしまっている様に見えた。


それにしても初心者の彼女を、こんな訳が分からない気持ちにさせる迄するのは、明らかに橘が悪いと思う。前の公園での注意が全然効いてないんじゃないかと密かに怒りの気持ちが湧いた。


彼女の困惑を、彼はどう受け止めているのだろうか?と思ったが、意外とせりかに関しては、臆病な彼は、きっとせりかが後悔してしまっているとか思って、落ち込んでいるのかもしれない。せりか自身は後悔は無い様だが、過ぎる快感に気持ちが伴っているのか、疑問に思っている節もあって、憧れに過ぎなかったのでは無いかと思い始めている。こんな不安定な時に本庄に告白でもされてしまったら、まずいのでは無いかと心配になって来てしまう。



「せりかちゃんが、不安になるのを受け止めきれない、彼に問題があると思うから、思い切って別れちゃったら?」


沙耶は自分がこんな賭けに出ても良いものかとは思ったが、せりかが今のままでは、橘から退いてしまいかねない。せりかに関しては本当に好きだからこそかもしれないが、それこそ完璧君が聞いて呆れるほど、ヘタレになってしまう彼は、沙耶は可愛いと思うが、せりかからは、とてもそうは見えないだろう。


「えっ!別れるって…友達に戻るって事?!……そう言われると何だか友達で居たい気がして来たかも…」


おいおい!待って!ショック療法のつもりが、友達に戻りたいと言い出すとは思わなかった。このままでは、橘に恨まれてしまう。


「でも、友達に戻ったとして、彼に新しい彼女が出来ても、せりかちゃんは祝福出来るの?」


「…それはやっぱり出来ないと思う。私、橘君の一番近い女友達っていう位置に、少し良い気になってたんじゃ無いかと思う。私って結構嫌な女だったんだわ!」


彼が自分を恋人にする前から、特別に扱う事に優越感を持っていたのかもしれないと、せりかは初めて思ったが、その位置から彼が自分よりも特別を今迄作らなかったから、気が付かなかったが、新たな彼女という存在が出来れば、自分は少し距離を置いて彼に接する事になるだろう。


「せりかちゃんが目指すのって、橘君の一番近くにいる女性なんだったら、彼女でいる事を辞める必要は無いと思うんだけど…彼女兼友達で良いんじゃ無いの?今迄だってそうだったのに急に変わる必要は無いと思うわよ。大体が彼女の存在とかを気に出来るのだって、友達だったら出来ないのよ?今は、嫉妬して当たり前だし、気になって当然よ。そんなに彼氏に女慣れされてたら!」


「一回、そういう事が有った位で妙に彼女面してヤキモチ焼くのって男の人には重いんじゃ無いかと思うのよ。特に相手は私が何人目かの彼女な訳でしょう?」


「それは心配しなくても良いと思うわ。言い方は悪いけど、橘君の今迄の彼女って、相手から言い寄られて何と無く気に入って付き合って来たんでしょう?せりかちゃんには自分からだし、一年の時からねちっこく想って来て、挙げくに騙して付き合い始めたんだもの。思い入れが違い過ぎて、妬かれたら却って喜ぶ位じゃ無いのかしら?」


「そういえば、旅行の時、甘えられてみたい願望の後に、妬かれたいって言ってたけど、本当にそれって嬉しいのかしら?私だったら、少し重い気がするけど」


「彼がそんな事を言ったの?」


あの魔王の様な彼が、例え心の中で思っていても、せりかに、それを言うのは考えられなかった。


「小樽の日に、付き合い始めたのがクラスの子達にも分かってしまったから、夜は橘君達の部屋にクラスの男子の殆んどが集まって、質問攻めだったらしくて、寝不足で朦朧もうろうとしてたから、色々と聞くと何でも答えてくれて面白かったのよ!好みの髪型まで聞いたら答えてくれたから実践してるけど、完全に半分くらいは言った記憶は向こうには無いわね」


「ヤダ―!そんなに面白い状態だったら、もう少し聞き辛い事も聞いちゃえば良かったのに~!前の彼女の話とか喋らせちゃえば良かったのよ!」


「帰りのバスの中で、誰にも聞こえないって訳じゃ無いから、本当に何でも言っちゃいそうだったんで、あまりまずい事は却って聞けなかったのよ。皆に知られたら、ストイックな彼のイメージも崩れちゃうし、生徒会の会長選も視野に入れてるから、印象悪くしたら大変だしね!」


今、素面しらふな状態で聞いても、橘は答えてくれるだろうと思うが、聞きたい部分と聞きたく無い部分があって、結果今はやはり聞きたくなかった。沙耶ちゃんが言ったみたいに、せりかの事が特別だと言って欲しいだけになってしまいそうで自分を恥じてしまいそうになる。


「とにかくせりかちゃんは、少し混乱してるだけだと思うよ。あと三回位したら、友達に戻りたいなんて思わなく成るんじゃ無いの?」


「沙耶ちゃん…あと三回って…」


「少し露骨な言い方だったけど、それから考えても遅く無いって!」


「なんだか身体目当てみたい…」


沙耶はせりかの衝撃発言に飲んでいたお茶を吹いてしまった。


慌ててせりかがテッシュを取ってくれるが、あの王子様はどんな事をやらかしたんだか!こんな清純なせりかを唆したのは自分だが、それにしたってせりかみたいな純粋な子から出た衝撃的な言葉を思うと、魔性な彼の魅力を改めて実感させられた。確かに歴代の彼女の中に身体目当ての人達が居なかったとは言い切れない。しかし、せりかの認識が大分ズレているだけで、せりか自身がそうだという事は有り得ない。



「例えば、仮にそうだとしても、相手が嫌だと思わなければ、相手に害は無いわけでしょう?簡単に結論が出せる様な事じゃ無いし、少し冷静になって様子を見てから考えた方がいいよ。少なくとも玲人君にせりかちゃんよりも親しい真綾ちゃんって存在が出来ても構わないのに、橘君には嫌だと感じているのは、私から見ればやっぱり好きだからだと思うし、友達から恋人に成るのって、スタート場所に戻ったみたいで遠くなるのは寂しく感じる面もあるけど、また違う関係になるし、少し落ち着いてくれば、また友達だった時間も戻って来るから、そこは友達だった彼を失う訳では無いから、不安にならなくても大丈夫だと思うのよ」


せりかは少し考え込んだが、「橘君に言ってみた方が良いのかな?」と言い出したんで慌てて沙耶が止めると、『何故』と聞きたそうだったが、『お願い!聞かないで!』と言う無言の念力というか感情が伝わったのか、せりかも黙った。いくら橘でも、彼氏をあまりいい気にさせてしまったら、せりかの為にならない。


食べ終わった食器を二人で一緒に片づけてから、沙耶の部屋を見せて貰うと、赤いギンガムチェックのカーテンにベットサイドには、アロマキャンドルが置かれていて、まだ微かに薔薇の香りがした。女の子らしくかわいい香水の小瓶も並べられていて、せりかは、沙耶に比べると自分の女子力が低いのでは無いかと思ってしまった。大体が妹さんがいる沙耶と比べれば自分の兄弟は玲人の様なものだったから、自然と遊びも格闘ゲームなど、男の子寄りに成ってしまっていたし、アロマの香りなどしたら、玲人が文句を言いそうだなと思った。


「沙耶ちゃんって、期待を裏切らない女の子らしさがあっていいよね~!今度うちにも来てね。私に期待しないかもしれないけど、玲人もいるから楽しくなると思うし」


「せりかちゃんは、すごくさっぱりしていて、私はそれは、それで、せりかちゃんらしい良さが有って良いと思うよ」


「情緒とか風情に欠けない?魔王様の御指摘なんだけど!」


「橘君も勉強とかリハビリだとか言って、騙して付き合い出してるから一応言ってくれるだけで、人間、個性もあるんだし、元々がせりかちゃんに参っちゃってるから、本当は文句なんて無いんじゃ無いのかしら?」


「そんなに甘い彼氏じゃ無いのは、いくら付き合いが初めてでも分かるんだけど、何故かみんなには、そう思われてるみたいなのを聞くと、あの人の計算の内なんじゃ無いかと思うけど、そこは、すごく彼らしいから、仕方が無いから諦める事にするわ」




せりかはその後、直ぐに帰ると言い出したので、沙耶はもう少しゆっくりして行けば良いのにとは思ったが、眠たさそうだったので、引き止めるのを止めて駅まで送って行った。


別れ際に「沙耶ちゃん大好き!有難う」と小声で言って手を振るせりかは、とても可愛らしく見えた。



せりか達の話にてられた沙耶は、せりかが早く帰ってしまった事もあって、久しぶりに彼を自宅に招いて、甘いひとときを過ごした。


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