77高校二年生夏休み編
更新遅れてすみません<(_ _)>
「忍の誕生日どうする?プレゼントとかは、もう買ったのか?」
「ずっと玲人に聞こうと思ってたんだけど、橘君って誕生日いつなの?」
「三日後だけど、知らなかったのか?」
「えー!九月か十月だと勝手に決めてたのよ」
「何で、勝手に決めるんだよ?!」
「だって、春生まれっぽいから、違うんなら秋かなぁって思って!」
「お前なぁ?何処の世界に雰囲気で彼氏の誕生日を決めつける奴がいるんだよ!」
「そうよね~!でもあの色白さ加減で、夏生まれは予想外よね。まだ冬のほうが……」
「だから、見た目とか関係無いっていっただろう!それでどうするんだよ?」
我が彼氏殿の誕生日を今日初めて知ったが、まだ、全然日にち的にも誕生日プレゼントの用意は可能だし、玲人もまだ用意していない様だから、相談して合同にしてもいい。
「玲人はどうするの?被ると困るし、一緒に選ばない?」
「実は、忍にあげられるような物って思い当たらないんだよ。大体が兄貴がいるから、服とかは、着無くなるとすぐくれるみたいだし、アクセサリーとか飾るものってあいつって滅多にしないだろう?」
「一回、一年の時に文化祭の打ち上げでして来て、似合うは似合うけど、本人がああだから、飾らない方がいい感じはしたわね」
「それ以外だと、食べ物とかだけど、俺はいいけど、せりから食べ物はやっぱり無いだろう?」
「そうよね!ケーキ手作りしてもいいけど、真夏だと、持ち歩くのに、不安もあるものね」
「それで、考えたのが、この間話があったプール行きだけど、入場券とか、向こうで食べる軽食類とかをおごるのはどうかな?」
「二人からにしては、軽過ぎないかしら?」
「それなんだけど、忍って、ずっと沙耶に礼をしたがってたんだよ。せりにも、勿論感謝してるけど、一年のよく知らない頃から世話になってたし、今は沙耶は委員じゃ無いから何かの形でお礼出来ないかっていつも気にしてたから、沙耶も俺達接待で、忍のプレゼントに組みこんだらどうかな?」
「沙耶ちゃんが納得するかなぁ?むしろ自分も何か誕生日プレゼントをあげそうじゃないの?」
「沙耶が忍に何かしてやりたいなら、それはそれで沙耶の問題だから、俺達からのプレゼントに沙耶に接待が含まれてるんだから、そっちは気にしないでおけばいいじゃん」
「そうねぇー!もしも沙耶ちゃんがお礼を返したいなら、橘くんにどうぞ!ってすれば沙耶ちゃんも意固地に私達のお祝いは、突っぱねない可能性の方が高そうよね?」
「そうだよ!沙耶は、そういう場の空気を壊す奴じゃないから大丈夫だよ。それでせりが説得担当な」
「玲人が軽―く言えば、沙耶ちゃんも言い返す力が抜けると思うけどね」
「沙耶って結構俺には厳しーんだぞ!忍とかにも厳しそうだけど、俺には特別って感じだな!せりがいない時の俺の補佐だったから、自分が言ってあげなきゃって思ってたみたいで、今は随分優しくなって来たけど、沙耶は少しせりに似てるかもな」
「沙耶ちゃんも玲人の被害者同盟だったのを、忘れていたわ。私から説得しておくし、誘うから、まかせておいて」
「じゃあ、お手軽な感じのプレゼントになるけど、忍も喜ぶからそれにしよう。チケットとか日付とかは俺が調整するから、せりは、沙耶に納得だけさせてくれればいいから」
そう言って三日後私達は少し離れたホテルが経営する大きな遊泳施設に行く事になった。
沙耶は提案を聞くと難色を示したが、お礼は橘君に言ってくれればいいし、私達ふたりが彼を喜ばせたいから協力して欲しいと頼むと、沙耶も納得してくれた。
皆で、電車に四人のボックス席に揺られて、敷物やビーチボールなどの荷物を籠バッグに持って、ロングワンピースを来た私達は少し小旅行気分だった。
「橘くんの誕生日なのに、私迄悪く無い?」
「沙耶は、来てくれるだけで、忍が喜ぶんだから気にすんなよ」
「なんだか、せりかちゃんに誤解されそうな言い方ね?」
「全然でも無いんだけど、誤解しないから大丈夫よ!橘君って女の子の中だと私の次に沙耶ちゃんと親しいから、他の人と遊ぶよりも絶対楽しいから、それもプレゼントに含む、になるから気にしないで」
「…って言われてるけど、そうなの?橘君?」
「改まって聞かれると少し困るけど、俺自身もそう思っている上に、親友二人もそう言うんだから間違いないんだろうね?」
「せりかちゃんは、彼女でしょう?」
「椎名さんとは、それ以前に悪友でもあり、親友でもあるから、彼女になったのはその後だから、悪友歴の方がずっと長いんだよ」
「そうそう、色々なプチ悪事に加担させられるわ、学級委員も気の張る相手だとキツイからって王子に泣き付かれるわ…それは、沙耶ちゃんにも話したわよね?」
「それは、見たかったって思ったけど、橘君はせりかちゃんに何て泣き付いたの?」
「何でもいう事聞くからお願い!って言ったんだけど、我ながら切羽詰まってたんだよな!普通なら、そんな無謀な取引絶対しないもんなぁ!」
「でも大体のお願いは、付き合う様になったら聞いてくれるじゃ無い?だから約束も無効になってしまったようなものなのよ」
「大体は聞かないだろう?せりが聞かせてるだけじゃないのか?忍がせりを甘やかし過ぎなんだよ!」
「それは、椎名さんは、玲人にしか我儘言わないから、俺は無理なお願いなんて殆んどされないから、玲人とは基準が違うんだよ」
「「「………………」」」
「…じゃあ玲人君は、真綾ちゃんとせりかちゃんの両方のお願いを聞くから大変よね?」
「まあな!せりは、慣れてるけど、マーヤはあの小舅に甘やかされてるから、大分手がかかるんだよな」
「確かに、本庄君のエスコートに慣れていたら、玲人もキツイわよね?普通の高校生が、其処までやらないわよ!って何時突っ込もうかと旅行の時に思っていたけど、迷惑が誰かに掛かってたりした訳でも無かったから、言わないままになったけど、玲人に被害が来るとは思わなかったわ。真綾さんも本庄君を基準で、玲人にも同じ事を求めて来るとちょっと辛いわよね?」
「玲人くんだって、優しいほうだし、大丈夫なんじゃないの?真綾ちゃんにも慣れて貰った方がいいわ!彼がやり過ぎなのよ」
「沙耶にしては、俺に優しいよなぁ?せり並みに厳しいんで、俺の方に何とかしろって注意して来るかと思っていたけどな」
「随分酷い事を思ってたのね!玲人君から見た私って、そんなにキビシーの?!」
「玲人は、私達以外にあまり注意をされないじゃない?特に女の子は玲人に甘々だから、何か私達の事を勘違いしてるんじゃないかしら?」
「確かに、椎名さんは玲人にキツイよね?でも、石原さんは玲人に普通の注意しかしてないんじゃ無いかな?」
「橘君は、沙耶ちゃんには随分評価が甘いのね?私には付き合う様になっても一ミリも変化が無いのにね」
「石原さんへの評価は妥当だと思うし、椎名さんは元々、一番親しい女友達が彼女になっても、あまり評価は甘くならないと思うよ。椎名さんが玲人に厳しいのは、誰の目から見ても明らかだしね」
「沙耶ちゃんと玲人もそう思うの?」
「……橘君は、せりかちゃんに、もう少し甘くてもいいんじゃないのかしら?付き合い始めの彼氏なんて、大抵大分甘々でも良いんじゃないのかな…とは思うけど?」
「そうだよね!何も変わらないのが普通じゃ無いよね?!」
「性格にもよるだろう?忍が激変したら、俺は、なんだか逆に怖いけどなぁ!」
「そうね。怖いわね…。やっぱり今のままでいいわ!変わられたら何を企んでいるのか、こっちが悩みそうだし」
「そう。………二人は今日は俺の誕生祝いをしてくれるっていう話だったよね?俺の聞き間違いだったのかな?」
「勿論!気持ちは溢れてるけど、ねぇ玲人?」
「そうだよ!この間の部活みたいな事はするなよ?今日は沙耶もいるんだから、抗体の無い人間に、忍の心理攻撃は見せない方がいいと思うぞ!」
「石原さんは、大丈夫だよ、ねぇ?」
橘の秀麗な顔に妖しい微笑みを湛えて問われると、沙耶は薄らと寒くなり、少し青ざめながらも無言でコクコクと縦に顔を動かした。玲人とせりかは、その様子から橘は沙耶に何か黒い一面を見せた事があるのだと分かってしまい、二人で顔を見合わせたが、それは二人とも暗黙の了解でスル―する事にした。幸い?沙耶は抗体のある人間の一人だと、今この時からせりか達の中で認識された。
「それなら…生徒会の会計は沙耶ちゃんにお願いしたいんだよね!こんな慰労会の行きで話すのも何なんだけど……」
「いいわよ。部活もしていないし、生徒会とかをしてると進路も有利になるから、喜んで受けるわ。それに、せりかちゃんに頼まれたら断れないしね!」
「ありがとう!やっぱり気の合う人じゃ無いと難しいから、すごく助かるわ!橘君にとっても沙耶ちゃん以上の役員を捜すのは中々難しいしね?」
「橘君の女嫌いも中々、直らないわよね?!」
「沙耶もはっきり言うなよ!その事、何と無く気付いていても、元五の女子は誰も口に出さないんだぞ!」
「良いんだよ!はっきりと言われても仕方が無い位、二年生になってからは、こっちも椎名さんを盾に女の子とあまり関わらない様にして来たから、口に出さないだけで、少し親しくなればみんなが思う事だよ。今は一応リハビリ中なんだけど、今より酷くなると日常生活に支障が出ちゃうから、どっちかっていうと自分では悪化しない様に、椎名さんを頼ってきてしまっていたけど、最近は皆が俺を椎名さんの彼氏だという前提で寄って来てくれるから、割と気楽に接する様に成れたから、まだ短期間だけど自分では結構良くなって来てると思うよ?生徒会の件は、石原さんが一緒の方が俺も椎名さんも楽しいから、出来ればお願いしたいかな?」
「橘君は、会長向きだわね?モノは言い様って今みたいな事を言うのね!っていう綺麗なお手本みたいだもの…」
「手厳しいね?本心からだから、言葉のまま取って欲しいけどね?」
「沙耶ちゃんが、こんなに橘君と親しかったなんて知らなかったわ?少し驚いちゃった!」
「俺も!沙耶にも、忍がこんなに素で話してるなんて思わなかったよ」
「…それって、親しさのバロメーターになっているの?」
「そうなのよ!沙耶ちゃんには本音で話してるって事は、橘君の中ではかなり親しい方なのよ。親しい人間に程辛辣にもなるから、有難みは薄いかもしれないけど、分かり易く王子が気を許しているのが分かるのよ」
「随分な言われ様だけど、椎名さんは怒っている訳ではないよね?久々の王子呼びが、すごく不気味なんだけど!」
「ああ、ごめんなさい。吃驚しただけで怒ってないわよ。沙耶ちゃんにはなんだか申し訳無い気持ちになってしまったけど、怒ってはいないわよ?」
「やっぱり少し怒っているみたいだね?石原さんに酷い事はして無いよ。兄貴や伊藤先輩を見ていると、気に入った人に程、構い倒したり辛辣に成ったりするのは良く無いと言うのは、よく分かるよ!身近な悪い見本が二人もいるからね?」
「分かっているならいいわ!勿論妬いている訳ではないのよ」
「せりも少しは妬く位の可愛げのある所を見せろよ!忍に振られても知らないからな?」
「大丈夫よ。せりかちゃんを振る様な勿体無い事、まさかしないわよね?」
「勿論!彼女になって貰うまでの苦労を、皆に聞かせてあげたいくらいだよ」
「……騙くらかした話を暴露するなんて、せめて此処だけにしておいて貰いたいけどね?!」
「「……………………」」
「積極的に言わなかった事を騙した訳では無いと思うけど、椎名さんがそう思っているなら、仕方が無いよね…」
沙耶と玲人は、聞いてはいけない事を耳にしてしまった事を後悔したが、やはり!というかやっぱりせりかが、あんなに急に考えを変えて橘と付き合い始めたのは、何か裏があったらしいが、それを聞いてしまって巻き込まれたくないし、今はこうやって彼氏の誕生日のお祝いをする程仲が良いのだから、橘の言うとおり、何か重要な事を言わないでいた、だけなのだろう。
いくつもの種類のプールのある施設に着くと、まずは男女別れてロッカーで水着に着替えた。
「せりかちゃん可愛い!スタイル良いのねぇ!」
感心したようにせりかを褒めるが、せりかから見れば、幼い濃い水色にフリルのビキニのせりかよりも、大人っぽい印象をうける白地に小花の柄で、胸元をリボン結びで強調している沙耶の方が色っぽく見えた。着替え場所では写真を取れないので、少し出た所で、お互いに写メを撮るが、沙耶は「せりかちゃんの水着写真ゲットしたから、王子様への誕生日プレゼントの第一弾にしてもいい?」と聞いてきたので、今から見せるのにプレゼントに成らないと思うし、写真は少し恥しいかも…と言うと、彼氏にだけだしお願い!と沙耶がやけに熱心に頼むので、一枚だけ遠めからのものでOKする事にした。沙耶は直ぐ様、誕生日プレゼントという題名で、橘にメールをした。携帯はロッカーに戻して、籠バッグにシートとパーカーとタオル類と日焼け止めと濡れても大丈夫な腕に巻けるお財布に鍵をいれた。
既に橘と玲人は水着に着替えていたが、このふたりの組み合わせはやけに人目を惹いていて、声を掛けるのに、勇気がいった。
「お待たせー!」
「おう!沙耶も水着似合ってるなぁ!」
「有難う!玲人君達もさっきから、目立ってるから、ここを取り敢えず移動しようか?」
「椎名さんもビキニだったの?!」
「せりのうるさい彼氏がまた怒るってやっぱり言っただろう?俺の勝ちだな!」
「だって、今は殆どの子がビキニなのに、そうじゃ無い方が却って目立つのよ?スカート丈だって長くしたら、制服で悪目立ちするのと一緒よ!」
「そうなんだ?似合うね」
「怖いから棒読みで褒めないでよ!何も言わなくても褒めてくれないなんて拗ねないから」
「石原さんも似合うよね!」
「沙耶ちゃんにだけ、気持ちがこもってるのは、流石に酷いんじゃないの?」
「橘君って、意外に束縛激しいのね!この位、みんなが水着なんだから、気にしなくても大丈夫よ」
「少なくとも知り合いにだけは会いたくないね!」
「これだけ混んでいれば、居ても気付かないと思うけど、橘君と玲人君は二人で並ぶと目立つから、出来るだけ、私達を挟んで歩いた方がいいと思うわ?」
「橘くんって、色白いよね~!部活とかで焼けないの?」
「赤くはなるけど、直ぐに戻って黒く成らないんだよ」
「日焼け止め塗った?背中とか塗れて無かったら塗ってあげようか?」
「う、うんお願いしようかな…」
「せり俺も頼むよ」
「うん。ちょっと待ってて」
「玲人君は、良かったら私が塗るけど?」
「じゃあ、沙耶お願い」
玲人はこっそり沙耶にお説教をされながら、日焼け止めを刷り込まれた。「彼氏の前でだけは、せりかちゃんに頼んじゃ駄目でしょ!」「そうだよな。気を付けるよ…」「いくら玲人君でも、許される範囲があると思うわよ?」「やっぱり沙耶はおれに厳しいよな…」見た目にはカップルが彼氏の背中に日焼け止めを塗ってあげるラブラブな光景だったが、内情は全然違った。少し玲人の耳が垂れて可哀想になったので、真綾ちゃんに今度は塗って貰えば?と言うと玲人は絶対に本庄が付いて来て止められるから無理!と言うので、冗談かと思って笑うとどうやら本気の様だったので、沙耶は本庄の過保護さに少し呆れてしまった。
せりかは、橘の背中に指を滑らすと、白く陶器のように肌理の細かい綺麗な肌で、すべすべとしているので、触るととても気持ちがいい。必要以上には触れないが、たっぷり時間を掛けて塗ってあげると、せりかの邪な気持ちには気が付かない橘は礼を言ってくれるが、せりかは少し後ろめたくて、直ぐに立ち上がってしまった。
橘は普段は絶対に見えない、せりかの鎖骨や胸元や、日焼けなど微塵もないくびれたウエストなどに気を取られていたので、せりかの不審さには全く気が付かないでくれた。
橘は、せりかの水着姿をなるべく見ない様に目線を下げない様にしていたが、流れるプールに皆で入ったので、少し気分的に楽になった。浮き輪にせりかと捕まりながら、結構早い流れを流れて行くのは水も冷たくて気持ちが良い。せりかの白い透明感のある肌と自分の腕が当たると、ドキッとしてしまうが、せりかは至って何も思わない様で、平気で身を寄せて来るので、橘は心の中ではかなり焦ってしまうが、自分の思いなど、せりかには考えも付かない事なのだろうと思うと、せりかの無邪気さは愛おしくも有り、憎らしくもあった。
沙耶と玲人は後ろに居る様だが、人が多過ぎて確認出来ないくらい混んでいる。
一つの大きな浮き輪に抱き合うように、入っているカップルをみると、流石にせりかが、頬を染めて目を逸らしたので、せりかに目を向けると首から、胸元まで薄らと色付いていて、かなり色っぽいが、本人は全く自覚が無いのが見てとれた。その様子をじっくり堪能してから機嫌良くプールサイドに上がる。今日は本当にいい誕生日だと思ってしまったが、口に出したらせりかは三日位は口を聞いてくれなくなるだろう。
橘たちが上がったのを見えたらしい玲人達が、二人で一緒に歩いてくるが、真綾と沙耶の彼には悪いが、まるで、とても良く似合うカップルの様だった。元々、一組の委員をやっていた相棒の二人は、息も合うし、見た目にも均整がとれていて、雰囲気に違和感も無くとても良い感じに見える。
自分達よりも余程恋人らしく見える二人が、痴話げんかをしながらこちらにやって来た。
「何を揉めてるの?」
「だって、玲人君が悪戯で二人に水を掛けてやろう!っていうから、邪魔するのを止めたら、せりは、忍のものじゃ無いし…って拗ね出したのよ!流石に目の前で仲が良いと邪魔したくなるみたいね?全く困ったものだわ!」
「別に普通に泳いでただけじゃ無い!何で玲人が機嫌が悪くなるのか、よく分からないけど?」
「結局、何もしてなくても、先に泳いで行くのが見えただけで、仲良く見えて気に入らないのよ!せりかちゃんが気にする必要無いのよ。橘くんが宥めて来てあげて?」
「そうね。玲人の事は橘君に任すのが、一番安心だよね!」
せりかと沙耶はタオルが置いてある敷物の所に行き、軽く水気を取ってから、パーカーをはおった。
どう橘が機嫌を取ったのか、すっかり拗ねるのを止めたらしい玲人は、アメリカンドックや焼そばやかき氷など、次々に買って来てはせりかや沙耶の所に置いて行く。
沙耶がこんなに食べられるかしら?せりかちゃんは小食だし?と言うが、きっと玲人が食べるから大丈夫だろう。
「なんだか海の家みたいで、楽しいね」
イチゴのかき氷を食べながら、微笑むせりかは、沙耶から見てもとても可愛らしい。橘もさぞやと思うが、意外とクールな対応に何だか拍子抜けしてしまう。
「もう少し、デレデレの橘君が見れるのを期待してたのに!」
アメリカンドックを食べながら、沙耶が言うと、せりかと玲人に「「無理、無理!」」と笑われた。橘だけには「そんなのを見て楽しい訳?!」と呆れた顔をされた。それでもその後の彼の笑みは、いつもよりもとても軟らかく幸せそうに見えた。
毎日更新としていた訳では無かったのですが、そう思われていた方も多かったと思います。年末で更新出来ない時も出て来てしまうとは思いますが、完結迄は頑張りますので、お付き合い頂けると嬉しいです。お越し頂きありがとうございます!




