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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
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『せりかちゃんの事でお話が有ります。明日の朝、少し早めに学校の近くの公園のブランコの所で待っています』


という沙耶からのメールが来た時は悪い予感しか浮かばなかった。


やはり本庄の事と関係しているんだろうな…と覚悟を決めて早めに公園に行った。沙耶はまだ着いていない様でホッとした。


やはり朝早くの公園に、女の子を一人で置く事が心配で早く来すぎたが、犬の散歩やジョギングなど、思ったよりも人気(ひとけ)があったので、心配は杞憂だったようだ。


割と直ぐに沙耶が現れたので、驚くと沙耶も「橘君も早いわね?」と言った。約束した時間よりもお互いにかなり早めに来てしまい、橘は要らぬ心配からだったが、沙耶は律儀な性格からだろうと思う。


「それで、話って何?」アイスのカフェオレをベンチの傍の自販機で買って渡すと沙耶がお金を出そうとしたので「些細だけど昨日の仕事のお礼だから」と断った。


自分は先に持っていた缶コーヒーを握り締めながら沙耶の言葉を待った。


「せりかちゃんには、私とこうして会っている事は、内緒なのは分かってくれてるわよね?」


「それは、当然分かってるよ」


「昨日せりかちゃんのお悩み相談を受けたんだけど、橘くんは何をしてるの?!」


「ごめん。もう少しはっきり言って貰わないと分からないけど、彼女が俺との事で悩んでいるの?」


「思い当たる事は無いの?」


沙耶は胸に手を当ててみろ!という意味で橘に言ったが、橘は「やっぱり本庄の事かな?彼女が悩んでいるなら、やっぱり別れを此方から言ってあげたほうがいいね」と言い出したので、お灸を据えようと思っていた沙耶は慌ててしまった。


「違うわ!本庄君の事は何も無いわ。せりかちゃんが橘君にテスト勉強中、散々キスされたって頬染めて言うから、三問に一回はやり過ぎでしょ!って注意しようと思ったのよ。彼女も困惑していたし、少し橘君の前の彼女達と比べたりして、自分との付き合いは普通なのかな?って心配しているし、橘君から好かれてる実感が無いみたいだから、言葉も無いと駄目だから、少し大袈裟にでも言ってあげてって言おうと思ったのよ!」


「何だ…その事か…」


「私もメールで書くのは恥しかったから、話の内容に全然触れてなくて、余計な心配をさせちゃったみたいでごめんなさい。でもせりかちゃんは橘君から別れを切り出される事は有っても自分からは無いって言っていたから、橘君も、もう少し好かれてる自信を持ったら?」


「彼女から別れなんて絶対に言い出さないのは、最初から判っているけど、それは椎名さんが俺を好きだからじゃ無くて、俺を裏切れないからだよ」


「……話を聞いたら結構ラブラブな上に、随分とせりかちゃんを困らせて喜んでいる様なのに、私には随分悲観的な事しか言わないのね?」


「それは、付き合っている間は、彼女が嫌がらない範囲では少しベタベタはしたけど、それは、今だけの事かもしれないと思うと、しつこく成ってしまっていたかもしれないから、彼女が石原さんに相談する程嫌だったんなら謝るけど、椎名さんは自分で拒否出来ない程、流され易い方でも無いと思ったし、かなり加減したつもりだったけど、少し読みが甘かったみたいだね」


「そうね。すこーしやり過ぎよ!せりかちゃん頭が馬鹿になりそうだったって言ってたわ」


「来るのを断るか、嫌なら拒むと思っていたけど、意外と言えないものなんだね」


「そういう手段に出ないっていう事は、嫌では無いけど、良いと嫌の中間も有るでしょう?」


「成程ね!そう言われればそうだよね。少しは良くて少しは嫌という事か……」


「まして急に出来た彼氏に急な展開で、お母さんが出掛けた時に気を使われたのが結構堪えたみたいよ?こんなに負けている状態でこの先、付いて行けるのか不安だって!」


「あれは、そうするしか無いでしょう?親も居ない家で彼女に怯えられたら、勉強どころじゃ無くなるしね」


「それは、私にも、勿論せりかちゃんにも分かっては、いるわよ。彼女が言いたいのは橘君との差が大きいんじゃ無いかと思って気にしてるのよ。気持ちと経験の差が有り過ぎて不安なのよ」


「俺の方が、いつ彼女が本庄の気持ちに気が付いてしまって、俺と別れたいと思うんじゃ無いかと常に不安なのにね…」


「橘君は、せりかちゃんとちゃんと向き合ってくれるって言ってくれたけど、それでも、せりかちゃんをいつ離してもいい様にしているみたいだけど、その反面、しがみ付き過ぎで、言葉も無いのにキスだけいっぱいされたら、ちゃんと好かれているのか心配に成るわよ!男の人って言わなくても分かるって思っているものだけど、橘君は違うと思ってたのに!」


「買い被り過ぎだよ。拒まれなければ自分がホッとしてしまうから、つい、彼女の気持ちを確かめたくなる」


「せりかちゃんは、貴方が初めての恋人なのよ?もう少し手加減してあげないと、唯でさえ別れを切り出されてる状態を自分が縋ったから、付き合ってくれてるって誤解しているのよ?そういう状態で、少し背伸びして無理しちゃうのは当然でしょう?其処に付け込む様な事はしないであげて!」


「彼女側から見ると景色が大分違うものなんだな…」


「そうよ?せりかちゃんだって『橘君はせりかちゃんに夢中だから大丈夫よ』って言ったら『沙耶ちゃんの慰めは聞いておくね』っていうのよ?!」


そう言うと、少し橘は驚いた顔をした。


「彼女は俺を好きなのか?!」


「…其処からなのー?!当たり前じゃ無い!!何処の世界に好きでも無い人に散々キスをされて逃げ出さない女子高生がいると思っているの?!」


「でも少し嫌がられてる…」


「だから、やり過ぎなの!言いたく無いけど、聞いているだけでも恥しくて死にそうだったわ!せりかちゃんがそう思うのも当然よ!」


「…そうだよな。流石に自分でもそれはそう思ってるよ。まして俺が不安なのは彼女には分からない事だし、慣れない彼女が辛く感じるのも当たり前だよな」


「橘君もせりかちゃんも、お互いに好きだから付き合い始めましょうっていう始まり方じゃ無いから、相手が自分に好意は有っても、種類が別な物なんじゃ無いかと思っているみたいだけど、外から見れば目も当てられない程、バカップルなのに、どうしてなのか不思議になっちゃうくらいだわ!」


「多分、俺が不安にさせているのは分かるんだけど、俺自身がもっと不安が大きいから、彼女に安心感を与えてあげられないんだ」


「好きって言ってあげたわよね?少なくとも…」


「多分、言って無いかもしれない。彼女からは一回言われたけど、別れ話をした時で混乱していたし、付き合って直ぐだったから、正直信じられなかったんだ。石原さんが言う様に、違う種類の好きだと、その時もそう思ったよ」


「何だか橘君は、本庄君の事をせりかちゃんにちゃんと言わないと、駄目な気がして来たわ!せりかちゃんだって貴方に無理に付き合って貰ってるって思っちゃうのも、何も言ってくれないんじゃ仕方が無いわよ?」


「本当は言ってしまいたいけど、本庄と更科さんは、椎名さんの事が原因で別れてるのを、彼女に知られたく無いから、本庄もきっと黙っているのに、俺からは言えないよ」


「そっかー。それを知ったらせりかちゃんが、真綾ちゃんに罪悪感持ってしまって辛くなるし、あの二人にも友人としても付き合えなく成るだろうから、隠しているのね?」


「おそらくね。ほぼ断定だけどね?そうで無ければ、本庄が俺と椎名さんの付き合いを、続けさせない様にしてくる筈だよ!」


「橘君と友達だから、遠慮しているとかは?」


「少しはあるかもしれないけど、俺に悪いとは感じてもそれだけで、椎名さんの事を諦めるのはおかしいよ!元々の付き合い自体が、玲人に勧められるがままだったんだから、直ぐに解消させても良い筈だよ」


「私は、正直せりかちゃんが橘君と付き合い始めた時は、それまで結構、貴方の事を鬼、悪魔呼ばわりしていて、彼女はとても怒っていたから、とても不思議だったけど、彼女は今は、確実に橘君の事が好きだから、本庄君の事は、彼達の問題だから、取敢えず置いておいたら?せりかちゃんに、また片思いをさせ続けるのは可哀想だと思うわ!」


「彼女に俺がちゃんと言ってあげれば良いと思っているのは分かるけど、彼女の枷に成らないか心配なんだよ」


「悪いけど充分、重―い枷に成っているから、そんな事を心配するなら手遅れよ!もう手遅れなんだから、がっちりもう一個枷が増えても、せりかちゃんが橘君に無理に付き合って貰ってるって思われない方を選らんだら?」


「…確かにその方が良さそうだね?先の事は、その時に対処した方が良いね?」


「そうしてくれないと、せりかちゃんがとっても悩んじゃうから、それは、私も橘君も看過出来ないでしょう?」


「そうだね。そこは同じ気持ちだね。助言を有り難く実行する事にするよ。やり過ぎな面も含めてね?ごめんね?女の子に言い辛い事を言わせちゃう様な事をしてしまって!」


「ううん。せりかちゃんには、普通なのかって不安に成って相談されただけで、出過ぎた事を言っているのに、そう言ってくれると助かるわ」


「委員の仕事もいつも有難う!本当に一年生の頃から感謝しているんだけど、いつも何もお礼させてくれないから、玲人ともどうしようかって言っていたんだ!今度玲人と四人でお好み焼きでも如何かな?」


「真綾ちゃんに悪いし、委員の仕事は、本来はクラス全員がやっても良い様な事なのよ?それにお礼なんて貰えないわ!気持ちだけで充分よ。それに、これ御馳走様」


そう言って飲み終わった缶を振った。やはり、沙耶には頭が上がらないと橘は思う。今日もせりかの為にこんなに早くに出て来てくれた彼女の心中を思うと、やはり頭が下がる思いだが、彼女がそれを望まないので、もう一度感謝を込めて「ありがとう」というと沙耶は軽く片手を振って「いいのよ」と言って笑った。


二人でまだ誰も通らない通学路を歩きながら、気温が上がり始めているのを感じて、沙耶が「暑くなってくると北海道が恋しいわね?」と言うのに橘も頷いた。長い夏休みがすぐ其処まで近づいて来ていた。





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