表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
67/128

67

「お嬢さん。今日の帰り時間少し良い?」


本庄から声を掛けてきた。


ここ数日せりかが話したさそうにしていたのが判っていたのだろう。


「ええ。大丈夫よ」


此方から聞きたい事は沢山あったが、教室で聞ける内容じゃ無かったので、こうやって話す機会を与えられた事は正直とても助かった。






以前文化祭の後、親と入った喫茶店に入る。ここは駅から逆方向な上に値段設定が少し高めな為、学校の生徒が来る事は殆ど無い。せりかも何カ月ぶりかで足を踏み入れた。


「何が良い?ケーキセットにしようか」


ケーキを食べながらのどかに出来る話でも無いと思うのだが、本庄がケーキセットを二つ頼んでしまい、せりかも店員さんに聞かれるままにケーキを選び、飲み物はアイスコーヒーにしてしまった。


本庄もせりかと同じものを注文した。


店員さんが来るまでの暫くの間、せりかが本庄に「大丈夫なの?」と聞くと穏やかな笑みで微笑んだ。


同じセットが二つ来るとここに来た理由を忘れて、前の様に本庄と他愛もない話しをしていたいと思ってしまうのはせりかの我儘かもしれない。橘と付き合うように成ってから、本庄は明らかに距離をあけて来た。今日の様に誘ってくれたのは、せりかが話しを聞きたいと思っている事を察してくれたからだと思う。


「高坂がマーヤと付き合うって言って来たから、俺は構わないって言ったから多分付き合い始めると思うんだけど、お嬢さんに心配掛けちゃってるみたいだからちゃんと説明しないといけないと思って今日はつきあって貰ったんだ」


「本庄君はそれで良いの?一時的とはいえ真綾さんが玲人と付き合ってもいいと思ってるの?前に真綾さんと婚約していてもお付き合いを申し込む前は、そう思っていたのは少し理解出来るけど、今の時点でそれは、少し真綾さんが本庄君に不実ではないかと思ってしまうの」


「真綾は、俺を裏切って高坂と付き合う訳じゃないよ?俺達は結局付き合ってるって言えない程、以前と変わり無くて気持ちもそれ以上には育たなかったんだから、俺に真綾を縛り付けられる理由は何処にも無いんだ」


「それは玲人との事が出て来たから言っているのではないの?」


「いや、本当の事なんだ。真綾には別れましょうって言えないって言われちゃった位、付き合っているかどうかも怪しい付き合いで、そんな中途半端な状態で今迄真綾が耐えて来てくれたのは、おそらく肉親の情だと思ってるんだ。今は真綾が、ちゃんと自分で高坂を選んだ事は、真綾の為にも俺自身の為にも良かったと思っているんだ」


本庄は真綾との事をあっさりと受け入れた様だが、せりかにはやはり納得がいかない。


「……前に私が告白した時も真綾さんに対しては従兄妹としか思って無かったって事なの?」


「答えから言えばyesだけど、そう言うとお嬢さんに軽蔑されちゃいそうだね?」


「今言っても仕方の無い事なのかもしれないけど、私には少しも望みが無いのは真綾さんがいるからだと諦めていたけど、結局私じゃ駄目だったって事なのね?真綾さんが居なければ私を選んでくれるんじゃ無いかという嫉妬の気持ちが少なからずあったから、そうじゃ無かった事も自分勝手だとは思うけどショックなのよ…」


「それは、今は言って良い話では無いと思うけど、お嬢さんは充分魅力的な人だと思うよ?橘と付き合っていて、俺にどう思われていたかで自分の価値を下げてしまうのは感心できないな!」


「でもね、せんせいには私が心の中で、どれほど汚ない気持ちでドロドロしていたかを知らないからそうやって言ってくれるけど、そういう気持ちも悩んだのも何もかもが無意味だったんだなぁと思うと余計に虚しくなって来ちゃうし、自分でも自分が嫌になっているのよ。真綾さんにも申し訳ないし…」


「真綾の事を従兄妹だと言ったけど、それは恋人には成り得なかっただけで、俺の中では真綾は俺の生きている意味を感じさせてくれる大事な存在だったんだ。だから恋人よりも重い存在だと思っていたから、真綾の好意を良い事に彼女に鎖を付けてしまったけど、自分で真綾がそれを外してしまったのは仕方の無い事なんだと思っているから、俺が身勝手だっただけだから真綾の事は不実だとかは思わないでやって欲しい」


「恋愛感情じゃなくても、とても強く真綾さんを必要としていたって事には変わりないのでしょう?」


やはり彼女は本庄に対して盲目的にでは無いが甘過ぎる。他者全般に甘いが、本庄に対してはそれが顕著だと思う。


「お嬢さんは例え愛されていなくても相手の勝手な執着だけで結婚出来るの?」


「それは、出来たら想い想われたいけど、執着される程の強い気持ちを持たれたら、自分の気持ちがその人に向いていれば出来ると思うわ…」


「それは、高坂の執着は受け入れなかったのに、俺がお嬢さんに変な執着心だけで付き合ったとしても受け入れてくれたって事?」


「そうね。多分どんな理由であれ望んで貰えるのなら、本庄君の手を取っていたと思うわ」


「普通は無理じゃ無いかな?真綾も耐えきれなくなったんだよ。例え付き合ったとしても煮詰まって来ちゃうと思うけど?」


「今は、もう橘君と付き合っているから、今言ってしまった事も、橘君に対して失礼なのかもしれないけど、彼は最初はリハビリか勉強でいいから付き合って欲しいと言って来てくれたのね?今の現状からすれば彼のリハビリに成っているのかは怪しいけど、付き合い始めた時点では私は彼に必要とされているから付き合う事にしたけど、恋愛感情からでは無かったし、彼からもそうでは無かったけど、それでもいいかなって思っていたから、まだそんなに期間が経ってないけど煮詰まったりしていないわ」


「それでも、同じ事を高坂とも出来たかと言えば出来ないでしょう?それと同じ事だよ…お嬢さんは今は橘の事が好きになっているんでしょう?元々無意識ではあってもそう成れる可能性も無いのに相手から望まれるだけで良いと言うのは思い込みだと思うよ。実際に付き合っているとは名ばかりの付き合いを何カ月も続けてくれた真綾は辛抱強い方だと思うよ」


「せんせいと真綾さんと玲人が納得しているなら、私が何かいう権利は何処にも無いんだけど、せんせいと真綾さんは私の思う理想の関係に思っていたから、別れてしまったのがショックなのかもしれないけど、正直別れて欲しいと願ってしまった事もあるから、混乱していて自分がどうしたいのかよく分からないの!私がどうする事も出来ない事は分かっているから、おかしいし迷惑なだけだという自覚はあるから、もうこの件に私が関われるのは、相手から相談された時だけだと思っているの」


「俺を心配してくれたんだから、それは感謝しているし、お嬢さんはずっと、こんな俺を好きでいてくれていたんだから、あっさり別れられたら悩んだのは何だったの?っていう気持ちになるのは仕方が無い事だと思うよ。でも今は橘と付き合っているし、橘を裏切る様でそう思う事自体を否定したくなるから混乱しちゃうんだよ。俺を詰ってくれてかもいいんだよ?悩んだ時間を返せって!」


「ふふっ。それは勝手に想っていた側からしてもあまりにも身勝手過ぎて、笑っちゃうわ!でも、もしかしてそう思っているから、何処に気持ちをぶつけて良いのか分からないのかもしれないわ。真理は実は其処から来ているのかもしれないわね?」


「素直になったね?真綾にもお嬢さんにも、長い事悩ませてしまった事を謝らないとね?本当にごめんね。そう言っても時間は返せないから、二人には、特に真綾には違う所で償いたいけど、もう二人とも早々と彼氏が出来ちゃって幸せなんだもんな~!俺が償いをしたくても今は必要ないと思うから、謝罪しか出来ないけど、気持ちはお嬢さんにも真綾にもそう思っているから」


「私は怒る資格なんて本当にゼロだけど、そう言ってくれるなら一応言ってスッキリしておこうかな?じゃあ………とっても、とっても好きだったのに、別れた彼女の事まで好きじゃ無かったなんて聞いたら割り切れないわ!ほんの少しでも私にも好意があったって思わせてくれても良いじゃない!彼女がいるからごめんって嘘でも如何して振ってくれなかったの?もう少し私にきっぱりちゃんと断ってくれても良かったじゃない!…それから他に何かあったかな?…あっ!そうだ!……好きでも何でも無いのに抱き締めたりしないで!!」


「……………ごめん!」


「ううん。聞いてくれてありがとう。お言葉に甘えてみました!言っている事が矛盾だらけで無茶苦茶だけど、そこは目を瞑ってね」


「ああ。お嬢さんに言われると結構堪えるよ。でも肝にめいじておくよ。さっきの言葉は。でも一つだけ言うと俺はお嬢さんを何とも思って無かった訳じゃ無いよ。真綾と同じくらい大事に思っていたから」


「そういう事を言われると泣いちゃうでしょう?橘君に男の人の前で泣いちゃ駄目って言われてるのに!」


「もう泣かされてるの?!早過ぎない?」


「すっごく早かったのよ!言い付ける様だけど、付き合って二日目に突然別れようって言われて、私が泣いてしまったのよ。最初の約束を思えばルール違反なんだけど、全然数時間前迄、前兆が無かったからせめて理由だけでも聞かせて欲しいって言っても中々言ってくれないのに、泣いちゃ駄目ってそんな事だけは言うのよ。酷いでしょう?」


「惚気に聞こえるけど、それ自体は酷いね。でも今現在付き合いが続いているんだから分かって貰えたんでしょう?」


「それは、多分そうなんだけど、やっぱり恋愛って難しいって思ったわ!今は私が縋ったから付き合ってくれているけど、力技も否めないから本当は彼がどう思っているのかは分からないのよ」


橘が、別れ話をそんなにも早く持ちだしていた事は、本庄にも正直ショックだったが、彼女がどういう手段で、彼を引きとめたのかも自然と分かってしまい、やはり…とてもショックだった。


本庄もせりかの様に思っている事を言って相手を詰れたらどんなにいいかと思ってしまった。『どうして俺を待っていてくれないで、彼氏なんてさっさと作ってしまったんだ!それに…こんなにも早く彼に口付けを許してしまうなんて…許せない!』と……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご投票くださる方は下のタグをクリックお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ