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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
57/128

57

「高坂、ちょっと話したいんだけど良い?」


と本庄に寄ってこられたので、女子四人と違う店で昼食を取る事にした。まあ女の子だけでも昼間だし問題ないだろう。


がっつりした物を食べたいからと美久と沙耶に言ってなにかあればすぐにケータイに連絡するように言った。


過保護の様に思われれそうだが、みんな割とレベルの高い容姿の四人だ。いくら人数が多くてもしつこいナンパ等に遭わないとも限らないので、入ると言った店まで送り、出る時には連絡するように伝えた。





取り敢えず沙耶達にも言った通りにとんかつ屋に入り、注文した物がきてから話を聞く事にした。


思えば一緒によく遊んだりする割には、こうして面と向かって二人きりで話す様な事は初めてだった。


やはり、せりを袖にしているヤツと言う印象が強かった所為かもしれないと玲人は思う。



「真剣な話を食べながらで悪いんだけど、真綾達の事もあるから、ごめんね」


と言いながら食べる本庄は、食べる箸使いが綺麗で、よく見ると食べ方や姿勢も自然と身に付いているその美しさに、こいつって、そう言えばお坊ちゃんだったよなぁと思いだす。


じっとみつめる玲人に「何か?」と不審げに聞くので思った感想をそのまま言うと本庄はすこし苦笑した。


「それで話したいのは俺と椎名さんの事なんだけど…」


「マーヤからある程度聞いてるけど、せりの事が好きならどうしてもっと早く言ってくれないんだよ!」


玲人は素直な気持ちを本庄にぶつけた。本来向こうから話があると言われたのに、話の腰を折るのは悪いと思うが一事、言っておきたかった。


「そうだな。俺がもっと早くに気が付くべきだったのに、真綾にも悪い事をしてしまった」


「マーヤはお前と従兄妹以上の付き合いは無かったって言ってたけど?」


「実質はね。でも真綾には俺を慕う気持ちはあったし、俺は、真綾にそういう気持ちが無いのに縛り付けていたから。結婚さえすれば許されるかと思ってたけど、真綾がそれで幸せな筈は無い事は分かってたのに、結局真綾に言われるまで彼女の手を離さなかったんだ」


「なんで、好きでもない女に其処まで執着したんだよ?!」


「話すと長く成るけど端的に言えば、彼女が俺を必要としてくれているから、俺に生きる価値があるんだと勝手に思っていたんだ」


「そうじゃ無ければ価値が無いっていうのか?そりゃあ、また極端な思想だな?」


「それは、真綾には錯覚だし、幼い頃からの思い込みだって言われたんだけど、でもそう思わないとやって来られなかったのは事実なんだ。真綾には、俺の誤解が分かっていたのに解いてあげられなくてごめんって謝られたけど、でも俺が椎名さんに気持ちが行ってしまった事は完璧な裏切り行為なのに、真綾は結局責めないどころか、俺に椎名さんとうまく行って欲しいと思ってくれているんだ」


「マーヤって見かけによらず良い女だったんだなぁ!唯の我儘娘じゃ無かったんだな」


「俺がそうであって欲しいと思っていたのが解っていたから、そう振舞う様になったって言っていたから、そう見えるのも俺の所為なんだと思う」


「それで、せりの気持ちに応えてくれる気持ちがあるから、マーヤと別れたのか?」


「そうなんだけど、結局こちらが言う前に真綾から別れを切り出された。感謝すべきなんだろうけど、やっぱり直ぐに椎名さんに告白するっていうのは許されないと思ったし、彼女自身も真綾が俺の事を好きなのは知っているから、裏切った事を許してくれないと思った。でもそれを椎名さんが納得してくれて、それでも俺の事を許してくれるならって虫の良い事を考えていたら、橘と彼女が付き合い始めた」


「あ゛―!それは俺が出しゃばったから、皆に悪い事したと思ってるんだよ。変に首突っ込んで忍にも無理いったし!」


「マーヤが高坂に何を言ったのか大体想像が付くけど、橘に俺が椎名さんを好きな事は知られたく無いんだ。せめて、しばらく二人の関係が安定して来る迄は!」


「忍とせりを別れさせたく無いのか?」


「出来ればね………」


「何故?!」


「橘はお嬢さんの相手としては、高坂が選んだだけあって申し分ないよ。少し腹黒いけど、それは生きて行く上では悪い方に出る事ばかりでは無いからね」


「せりは今でもお前の事を想っているのに忍に譲る気なのか?」


「椎名さんは、きっと橘を裏切れないと思うよ。そうじゃなきゃ、付き合いにOKしたりしないよ。逆に橘が俺の気持ちを知ったら、きっとあっさりと退いてしまうと思うんだ…」


「多分そうだろうな。でもマーヤが言ってしまいそうだけどなぁ?俺のトコに言って来たのだってそういう事だろう?」


「そう!其処は一番頭が痛い!真綾は俺の為もあるけど、基本的には自分の思うままに動くから、俺がいいって止めても言う事なんて聞かないし、昨日は俺が動くから真綾は黙って見ててくれって言っても騙されてくれなかったよ。おれも真綾を甘く見てたなぁって痛感させられたよ」


「せりが、忍のものに成ってもいいって位の想いしか無いって事なのか?!」


「それは、そんな筈ないだろう?!真綾と別れて迄、手に入れたいと思ったんだから…でも、お嬢さんが苦しむのが目に見えてるんだよ。高坂は、この後、橘に話して彼が身を退いた後に、椎名さんが俺の手を取ってくれると思ってるの?」


「でも、それじゃ、忍が余計にピエロだろう?両想いのお前等を邪魔していた事を知ったら、どう思うと思ってるんだ?」


「椎名さんは、本当に橘に少しも気持ちが傾いて無いと思う?俺はそうは思って無い。彼女はとても情の深い人だから、最初から好きになれる可能性の無い奴と付き合いを始める事は無いと思うよ」


「せりが、既に忍に気持ちが移りつつあるって言っているのか?でも、せりはずっとお前の事を真綾がいても想い続けたのに、そんなに簡単に忍に気持ちが移るとは思えないんだよなぁ!」


「でも、俺は二人が俺の事で壊れたとしても、椎名さんは俺のものには成らないっていう確信だけはあるよ。だから、二人の為を思ってばかりって訳でもないんだ。勿論、椎名さんの事を一番に考えてるから、彼女が幸せの為に見守ったほうが良ければそうするつもりだけど、橘に落ち度があったり、二人がやっぱり今の状態を続けていくのが無理ってなったら、今度は迷いなく行くけどね」


「………俺にマーヤを黙らせて欲しいって事か?話っていうのは……」


「そう!俺が高坂に話したかったのは、結局その一言に尽きるんだけど、それを分かって貰うために色々回りくどく話したけど、お願いできる?」


「お前から今言った事を話せばいいだろう?真綾だって馬鹿じゃ無い。話す事がお前の得にばかり成らないって分かるだろう?」


「それは、高坂がお嬢さんの性格を熟知しているから理解出来るだけで、真綾には解らないよ!」


「…そうなのかもな。せりは極端に潔癖だから、今本庄が告白したとしても本庄に行かないと思うのは少数かもしれないな…特にあれだけ長く想ってたのを見ていた美久達だって思わないよなぁ」


「橘は、もしかして思うかもしれないけど、客観的立場なら冷静でいられるかもしれないけど、やっぱり俺が彼の立場でもあっさり手を離す事しか出来ないと思うんだ。だからこそ、これで橘とうまく行く様なら、俺も遠慮している訳じゃなくて、入る余地が無いだけって事なんだ」


「お前が考え過ぎな気もするけどな?言ってる事は分かるし、実際にせりの性格を知っていればお前を許さないかもしれないけど、…というよりも真綾との別れの原因を作った自分を許せないかもしれないけど、それでも気持ちの方が勝つかもしれないだろう?罪悪感よりも!」


「………それは、正直判らない。でも、彼女を苦しめたく無いし、橘とうまくいく様なら、それを壊したくないんだ。今は…」


「将来的に忍と別れる迄待つつもりなのか?!」


「まだ高校生だし、進路も考えればずっとって言うのは言い切れない。俺の目の届く内に別れてくれたら、彼女をこちらに向かせるのに全力を掛けるよ!」


「さっぱりしている雰囲気で結構ねちっこい事を考えてるんだな!なんだかお前が、せりを狙う捕食動物に見えて来た…。なんか忍とうまくいって欲しくなって来たよ。お前に捕まったら嫌だと言っても別れてくれなさそうだ!」


「まあね!別れてあげないだろうね。だから付き合う時は覚悟して欲しいって言うつもりだけどね!最初に言わないのは流石に卑怯だろう?」


「ヤバイ人間に目を付けられたのだけはわかるんじゃねーの?流石に。でも、お前自身、そういう重いのって自覚有りみたいだけど、物事もう少し軽く考えないとお前自身の幸せが遠くなるから考えを改めた方がいいって!」


「ははっ!真綾と殆んど同じ事をいうんだな!気が合うと思うんだけどなぁ?二人が!」


「おいおい!俺にマーヤの面倒見させるつもりかよ?勘弁しろよ?!」


「真綾は俺の自慢の従兄妹なんだ。そんな事を言っていても絶対に後から欲しくなると思うけど、その時は邪魔する事にしようかなぁ?」


「おまえなぁ!大概、忍よりも性質悪(たちわる)な性格してるのな?お上品な外見と大違いだな!」


「大事な幼馴染の彼女を任せるにはふさわしく無いだろう?」


「いや、それは、せりの事をよく理解して考えてくれるし、お前自身は結構ねちっこい以外は文句付ける所は忍と同じくらい無いよ。強いていえばそのねちっこいのと同じ位減点なのが本人には間違ってもいえないけどあの容姿だよなぁ!お前も忍と親しいから絶対に言わないから話せるけど、あの良すぎる容姿はどう見てもプラス方面だけには働かないよな。本人も芸能人とか成る様な性格してないじゃん?前に建築の勉強したいからサッカーは高校迄だっていってたし?」


「高坂はサッカー、大学でも続けるつもりなんだ?」


「ああ、それで、推薦もらえたらって思ってるけど、それは、まだ判らないかな?でも、自力で行ってもサッカーは続けるよ。お前は跡継ぎだから、経済の方に行くんだろう?」


「椎名さんはどうするのかな?」


「まさか、せりの大学に合わせるつもりは無いよな?」


「さあね?偶然同じって事もあるかもしれないけど?」


「お前さぁー!もう今から告白して来て振られてしまえ!!」


「ははっ!ごめん。それは、流石に冗談だよ。将来は俺が頑張らないと会社の人と家族の人生も掛かってくるから、自分の事だけは考えられないよ」


「マジで良かったー!脅かすなよ?!」


「そういう未来も少し夢見たくなっただけだけど、まあ現実はそううまくはいかないね!」


「マーヤを黙らせるの一応引き受けとくよ!取り敢えず忍とせりがどうなるか見届けないと俺も今は動いても誰にとってもいい事には成らないと思うから」


「悪いけど頼む!少し引き延ばして貰えればいいから」


「分かった。お嬢様の相手を、少ししておいてやるよ!」


「頼んどいて何だけどお取り扱いは慎重にお願いします」


「危険物みたいだな?でも、言えてるなぁ!だってマーヤって爆弾みたいな女だよな?」


「そう、我が身内ながら、自分の欲求に忠実な分、とんでも無く危険極まりない一面があるから、そこのところだけ気を付けて!高坂に怪我されたんじゃ流石にこっちも申し訳無い」


「いや、こっちもせりの為だから、頑張るよ。お前も忍と友達だし辛いと思うけど頑張れよ?」


「有難う……」


こうして密談は終わり、メールは来ないが迎えに行くと、食べ終わってはいるようだが、女子会トークが盛り上がっているのが外から見えた。本庄はその盛り上がりに自分とせりかの事が含まれていないか僅かの不安を覚えた。


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