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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
56/128

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橘との札幌観光デートは、前に八景島にいった時とは全然違い、緊張感の欠片も無い悪友との遊びのノリのそのままの物で、せりかはかなり拍子抜けしてしまった。


沙耶には彼氏と旅行と思い込め!と洗脳もどきの助言を頂いたが、普通のカップルってこんなに自然なのかなぁと思って周りを見渡すと、結構甘々な雰囲気だったのでやっぱり少し違うのかと思う。


それでもやっぱり時計台に二人でがっかりして笑ってしまい、ラーメン横丁の入り口と規模の小ささに驚き、そして電波塔から見える碁盤の目のような街並みと遠くに見える山の美しさに感嘆の息を洩らした。


お土産屋さんを冷やかしながらも、頼まれていた薄荷スプレーを買った。荷物が軽くて助かるお土産だとせりかは思うが、どうやら眠気覚ましに使いたいらしいと聞いたのでお世話になった先輩方にも受験勉強用に購入した。


橘に一緒にと誘うとそれに一緒に便乗するといったが、若宮には頼まれている物があるので、それも買うと言ったので、それでは私もそれを一緒に乗ろうとしたら、こっちは賄賂だから一人じゃないと駄目なんだ!と真剣にいうのがおかしく笑ってしまった。賄賂って公明正大に言ってしまう橘が可笑しいが、そういうところがとても潔くて彼らしいと思った。


ついでに賄賂の中身を聞くとお菓子の銘柄だったので、家用にせりかも一箱購入すると結構重たいからと自分のものと一緒に橘が持ってくれた。


なんだか本日で初めて彼氏っぽい感じだったので、携帯の待ち受けの話しをするとあっさりと「いいよ」という返事が返ってきた。


反対に自分もそうするからと言ってバシャリと写メを急に撮られて、せりかよりも先に待ち受け設定にされてしまった。


「なんだか恥しいねー!!みんなよくやるよね~?本人目の前にいるんだから、遠距離恋愛とかでも無い限り、必要が無い気がしてきた…」


「そう?ちょっとバカップルっぽくて俺は一回やってみたかったから結構気分は良いよ?椎名さんもやってみれば?嫌ならすぐに設定変えられるし!」


「いや、どっちかって言うと自分が写ってるのを待ち受けにされるのが、ちょっとって感じ。こっちはあの桜の芸術的な写真だもん。でも他の人に見せてもいいの?」


「見せるっていっても石原さんとか森崎さんくらいでしょう?他に見せても別に良いけど……」


「お花見の時は抵抗してたじゃ無い?何で今は大丈夫なの?」


「それは、……見せると椎名さんが困るかなぁと思ったんだよ。単純に少し照れくさいのもあったけど、周りに少し誤解されてた段階であの写真をみせたら結構冷やかされて大変だったと思うよ?今は、待ち受けにしようっていうのは好きな人か彼氏くらいのものだから、椎名さんがいいなら全然構わないよ」


「そうだったんだー!単純に嫌だからとかじゃ無かったのね!あんまり綺麗にとれたからお母さんとかにもみせてあげたかったけど、確かにあれを見せてたら誤解はめちゃめちゃされてたわね!」


「そうだよ!椎名さんがそう言う事に無頓着過ぎなの!例えば今は俺は一応椎名さんの彼氏だから、待ち受けにしても良いけど、唯、気に入った写真だからっていって椎名さんを待ち受けにしている人がいたら引くでしょう?」


「そりゃあ、ドン引きでその人とは半径何十メートルかは距離置くわね!もしかして私が橘くんを引かせてた?ごめんね!」


「いや、引かないけど、やっぱりそう言う用途で使われるのはマズイとは思うけど、椎名さんの場合は気に入った風景とか動物とかと同列で俺の写真も使いそうだったから注意いれたんだけどね」


「すごいねー!実は絵画の様だと思ってたのよ?もうあれは芸術の域かなぁって自分のカメラの腕に少し酔ってたりしたんだけど、見せられないから自慢できないし!」


「やっぱりね~!釘刺して大正解だったわけだ?」


すこし苦笑いで橘に言われてしまうと、やっぱり自分は考え無しなのだとせりかは反省してしまう。それでもあの桜舞う橘の写真を待ち受けにすると見入ってしまう位の出来で大満足だった。


橘にも見せると、「ほんとだ!反対はやっぱり恥しいね?止めようか?」と言って来たので、「お好きにどうぞ!」と暗にこっちはやめないけどそっちは何時でも消して良いと言ったら彼は薄く笑って「じゃあ、本当に好きにさせてもらうかな?皆にも見せちゃおうかなぁ~!」と子供っぽく言ってきたので「こっちも皆に見せちゃうよ?」と子供の喧嘩の様に応酬すると余裕の笑みで「ご自由に!」と返された。


結局これを見せても私が冷やかされるだけで、自分は困りますせんと言ってきてるのだが、反対だってそうじゃ無いのか?と思うと橘は別に平気そうだし、多分橘を冷やかせる者はそういないだろうと思う。なんだかんだと男子の中では、黒いオーラが薄ら見えるのだろうとせりかは思う。


特に女子に愛想が良い訳ではないが、理知的で穏やかな橘は優しげにみえるし、基本的には女性に優しい。あの美人で豪快なお母さんの教育の賜物なのか、例え一線引いていたとしても、女性からは腹黒くは多分見えない。せりかは一緒にプチ悪事に加担させられるので、真っ黒なのが分かるくらいだ。


結局付き合う様になっても橘には大負けなのだと思うと大分悔しい。しかし、一矢報いようとすると、返り討ちに遭うので、自分が少し大人になるんだもん!とせりかは強がりながら、「携帯の件はお互いにこのままで、必要以上には見せない方向でお願いします」というと「それが良いね!」と橘も微笑んだ。ちょっとだけど…く・や・し・いー!


「このまま負けちゃう付き合いなのかなぁ…」


と呟くとぷっと橘は吹き出して笑った。


「嫌なら止めても構わないよ?」


「いいえ。いつかはぎゃふんと言わせて見せるから!それよりも期末テストは誰にも負けないでね!」


「分かってるよ?椎名さんの期待は裏切らないよ」


既に中間テストでせりかは橘に勝っているのだが、それはせりか基準では勝利の数に入らないらしい。ますますおかしくて橘が笑うと、少し馬鹿にされたと思ったらしいせりかが頬を膨らませた。


既に橘はせりかに惚れた段階で大負けなのだが、それは伝えられないし、これからも伝える気は無い。だから、せりかの機嫌を直す術が無いので困ってしまうが、不機嫌なせりかを見るのも面白いかと少し放って置くと、土産物屋の北キツネのグッズに目を奪われて途端に夢中になってしまう。基本、せりかの不機嫌は長続きしないのだった。


彼女の機嫌を取るというのをやってみたいかな?なんて思っていた橘は少しだけがっかりするが、不機嫌が長続き出来ない彼女の事も好ましく思ってしまう。このまま溺れないうちに少し、気持ちを引き締めないといけないと橘は思う。こうしている間にも別れの足音がしてくるのが聞こえて来る気がして来てしまう。その時はあっさりと彼女を離して笑って送り出さなければいけないのだから……。


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