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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
53/128

53

沙耶にメールで話し合いが終わった事を知らせると直ぐに戻ってきた。


やはり話し合いの結果を心配してくれていたのだと思う。


「ごめんね。お部屋を借りる事になってしまったけど、お蔭で無事に決着が付いたの!」


晴々とした顔で言うせりかに一応、話し合いに成果があったのだと沙耶もほっとするが、結局何処に落ち着いたのかが気になる。


「それで、どうなったのか聞いても良いのかしら?」


「勿論!沙耶ちゃんにはこの旅行中、色々と聞いて貰って感謝してるもの。結果から先に言うと私は今日から橘くんの彼女になりました!」


「…えー!本当に?だってせりかちゃん橘くんの事をさっきまで、鬼とか悪魔とか、果ては魔王様と迄言ってたのに良いの?大丈夫?!」


少し気は確かか?と確かめられると玲人と橘の説得に負けた様に思うところもあるが、皆の愛情の裏返しと言う名の心配のされ様を思うと、この結論は決して間違った物では無いと思う。


「玲人と話し合った後に、橘くんとも話したの。彼には率直に違う男の事を想っている私と付き合ってうまく行くと思っているのか?って聞いたの。それで、それでもいいから好きだと言われたら断るつもりだったんだけど…それじゃあ、橘くんに悪いし失礼過ぎるじゃ無い?でも、彼は、気持ちは変わって行くものだし変わらなくても私とならうまくやって行けそうだから、リハビリか練習のつもりで付き合って、お互いに利用し合う関係で良いと言ってくれたの。彼も少し事情があって、リハビリしたいっていう状況なのね?まあ、あの見た目だし、色々あるのは仕方が無いかと思うんだけど…」


「うん。そうだよね。それは、橘くんと同じクラスになってから少し感じてたわ。彼って少し女性不信な所が有るわよね?せりかちゃんとか男女の垣根を越えられる人としか親しくしないものね」


「彼のプライバシーの問題も有るから、あまりちゃんとした事は話せないんだけど、そういう雰囲気は元々一年生の頃から有って、クラスの子達はそう言うのが分かる良い人達が多かったから、言い寄る様な素振りを見せる子も居なくて結構平和だったんだけど、二年生になったら近寄らせないオーラが酷くなって来たでしょう?彼もきっと色々克服しないと駄目だって思っているから、私と付き合う事でリハビリしようと言う気になったんだと思うの。でも自分の事をとても好きな相手じゃリハビリに付き合わせるのは悪いと思うじゃ無い?だからこのままじゃダメンズ一直線だってみんなに心配されちゃう私の練習台になってくれる事にしたんだと思っているの。お互い様だから罪悪感は持たなくて済むから良いって言ってくれたし…だからお互いに嫌になるか好きな人が出来るまでの恋人になる事になったんだ!」


せりかは此処まで沙耶に話すのは、橘に少し悪いとは思ったが、色々と迷惑を掛けてしまった事を考えると、全てでは無いにしても彼女が納得出来る範囲までは話すつもりでいた。


「そうね。彼だったら、せりかちゃんの事もよく分かってくれてるし、お互いに友情とはいっても、好意は存在しているんだし、それが二人の為になるといいなぁとは私も思うけど…恋愛ごとは結構難しいし、割り切れないところも出てくるから、無理だと思った時点では断った方が良いと思うわ」


沙耶の言葉はとても重く、付き合っているという他校の彼との関係も、きっとせりかには話さない大変な面も有るのだという事を窺わせた。


「それは、お互いに無理はしないという確認は、もう一度よくしておく事にするね!お互いの為にも」


せりかがそう言うと、途端に沙耶は真剣な雰囲気を一変させて楽しげに話し始めた。


「付き合い始めって一番楽しいものなのよ?なんだかワクワクして来ちゃうわね♪橘くんとせりかちゃんって考えるとお似合いなのよね~!」


「そ、そうかな?最近は開き直って来たから、見た目の差はもう、いいんだけど、なにしろこっちは超初心者の上に、相手に気持ちも今のところは無いっていうのもあるから、子供の相手をさせるだけかと思うと申し訳無い気持ちのが大きいのよ。それに、今迄ずっと一緒だったのに付き合ったからって何が変わるのかも良く分からなくて不安だし、とても楽しむところまで行けるのは何時の事やらって感じなんですけど…」


「せっかく仮にもあんな美少年が彼氏なのよ?せりかちゃんも、もう少し楽しもうよ!取り敢えず携帯の待ち受けとか彼の写真とかに変えてみたら?」


「人に見せないって約束で撮らせてもらった写真だから待ち受けにはちょっと無理かも……」


「そんな変な写真じゃ無いのよね?今見せてとは言わないから、明日の市内観光の時に聞いてみたら?きっとOKしてくれると思うわよ?……そうだ!明日は二人で回ったら?私と玲人君は美久ちゃん達のところと一緒に行くから!」


「そんなに気を遣われる様な仲でも無いんだって!」


「折角の機会なんだからそうした方が良いと思うよ!元々言ったら悪いけど、恋愛要素が低めなんだから、今回で少し恋人っぽい事して来てみたら?形から入らないと何時まで経ってもど突き合う仲から進展しないし、それじゃお互いに付き合う意味が無いんでしょう?」


沙耶の言う事はいちいち最もだと思う。少しだけ事情を話しただけで、これだけ理解されてしまっている事に驚くけれど、ずっと脇で見てきた沙耶には言わなくても伝わるものがあるんだろうと思った。


「相手もある話しだから、一応朝イチは皆で羊ヶ丘展望台に行くでしょう?その時に話してみるから、相手もいきなり二人きりなのもどう思うのか分からないし、聞いてみてからね?」


「彼は、断らないと思うけどね~♪」


「女性に恥をかかせそうに無いものね。なんだか彼の方に私と付き合う意味があるのか不安になってきたわ」


「最初は誰でも不安なものよ!そのうち慣れて図々しくなれるから心配要らないと思うわ。初々しいくらいの方が相手も喜ぶって!」


「今更~?!…彼との間に初々しさを出せる自信は何処にも無いけどね!」


流石のせりかも乾いた笑いを洩らす。橘と自分の間にそんな可愛いものが発生したらそっちの方が吃驚だった。


「とにかく、明日はごっこでもまやかしでもいいから彼との旅行って思い込むのよ!」


それじゃあ、まるで洗脳じゃんっ!とせりかは思ったが、あまりにも頼り無いせりかの肩を押してくれる沙耶にそれを言う気には成らなかった。


洗脳まで行かないまでも恋愛なんて、所詮夢か幻みたいな要素もあるものだ。思い込みも一応必要かもしれない。沙耶も悪乗りで言っている訳では無いんだろうし、アドバイスとしては今は一番に聞く価値のある相手だろう。


翌日に色々な課題を残しつつ、明日の用意を整え寝支度をした。このホテルには連泊の予定なので、荷物などは貴重品も含めて金庫もあるので置いていける。明日は軽装で出掛けられそうだった。気持ちも同じ位、気を張らずになるべく軽めで行こう!とせりかは思った。


結局、明日聞こうと思った二人きりの観光は、玲人と沙耶が橘に確認を取って、デートさながらの様相を呈してきた。っていうか忘れそうになるが、ばっちりデートだ!少しグロスくらい塗ってそれらしくして行くべきなのだろうか?


彼氏になった橘と二人で、それらしい事を見つけていく旅も、二人の始め方なのかもしれない。考えるよりまずは状況に慣れるべきだと思う。


しかし、周りはどうしてこんなに面倒見が良い人達ばかりなのだろう?!と多くの感謝と少しの困惑がせりかの胸をよぎった。




翌日爽やかに「おはよう」という彼に、何の変わりも無い事に安心をして、朝食を終えてから展望台に行く為のバスに乗る。昨日はあんなに苦行に思われた距離が、話合って溝が無くなったお蔭で全く苦痛を感じない。


もっと早くに話し合いたかったが、橘に拒否をされていたのだったと思うと昨日話し合いに応じてくれた彼は、こちらが思うよりも身構えて部屋に来てくれたのかもしれないとせりかは思った。


見る方向を変えてみるとそんな事まで昨日と違って見えてくる。やはり自分は視野を広げて、玲人のいうところのもっと大人にならないと、ちゃんとした異性のお付き合いは難しいのかもしれない。


橘はお互い様だと言ってくれてはいるが、付き合いを始めれば、せりかの方の得の方が大きい様に思う。しかし、いまは橘君の彼女(仮)なので、甘えさせて貰う事にしよう!と思う。そうして成長出来た暁には彼の傷も癒してあげられたらいいなとせりかは思った。


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