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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
52/128

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夕食に行くと今日はジンギスカンだった。野菜がたっぶりで、高タンパク低脂肪のラムはダイエットにも良さそうでちょっと機嫌が良くなった。


夕食はせりかが、ジンギスカン鍋の面倒を見て、皆に取り分けると、玲人からは「せり、サンキュー」といつもの如く言われたが、沙耶には恐縮されてしまった。せりかはこういう事をしてあげるのは嫌いでは無い。王子にも渡すと、「有難う」とにっこり微笑まれるが、距離がバスの時ほど近く無い為、彼のスペシューム光線もどきも華麗にスル―出来た。少し自分で自分を褒めてあげたくなった。美味しいものを食べている時は、おおらかな気持ちにもなれるので、男性陣の御代わりのお肉も焼いてあげて立ち登るジューシーな香りにお肉を炒める手付きも軽やかになる。


沙耶にも勧めるが、お昼ご飯が少し遅かった為かあまり食べられないようだった。オムライスは美味しかったが、夜がジンギスカンだと分かっていればさっぱりしたものに変えていたのにっ!と思う。


旅のしおりには夕食と書かれているだけで、中身にまでは言及してはいなかった。少し、不親切かな?と思うが、先に書いて置くと好き嫌いなど言って来る者もいてきっと不都合もあるのだろう。来てしまえば意外と気分で食べられるか、諦めて食べれる野菜だけ食べて、持参した栄養補助食品でも食べるのだろうから、言わないでおこうというのは仕方が無いのかもしれない。


せりか達はおいしく頂けたので良かったし、悪魔も二人っきりで無ければ意外と平気だったので、明日の市内観光も少し気持ちが軽くなった。


ラーメン横丁とかも行ってみたかったんだよね~!とせりかは早い立ち直りを見せて、沙耶にもにっこりと笑うと、少し心配顔だった沙耶も安心してくれた様だった。


し、か、し玲人には少し釘を刺して置きたい。せりかの苦労を察して欲しい。


夕食後、メールで玲人を部屋に呼ぶと直ぐに来てくれた。(普通は男性を入れてはいけないと分かっているが相手はいつも家でも二人っきりの玲人だし、沙耶もいる)


沙耶もいるし…と思ったのだが、沙耶も真剣な話をするのだろうと気を使って出ていってしまった。


「美久ちゃん達の部屋に遊びに行ってるから、せりかちゃんも用事が終わったらおいでね!」


と言ったので頷く。玲人は部屋を見渡すと、どこも部屋は同じだなと言った。札幌の方が都市圏になる為か、少し昨日のホテルよりも手狭な印象だった。


「せりちゃんは、それで、俺に何の文句があるのかな~?」


「せりちゃん?!気持ちの悪い呼び方しないでよ!生まれてこの方、そんな呼び方した事無いのに、玲人も流石に、少しは私に良心の呵責でも覚えたのかしら?」


「せりの方こそ、長年の俺の片思いを軽―くふっといて良心の呵責に苛まれないのかよ?」


「悪いけど、ぜーんぜん、そういう風に思える余裕が今の私には無いの!長年っていうけど、早く言えば長年に成らないようにしてあげたわよ?!」


「ひでぇー!!人道的にどうなの?って思わない訳?何時からせりは、そんな奴になったんだよ?」


「玲人が、あの腹黒王子と付き合うか?自分と付き合うかっていう究極の二択を迫って来た時からじゃないのかしら~」


しらっと言うと、少しは玲人も落ち着いてきて無茶を言った自覚は出てきたらしい。せりかがあれだけ苦労を強いられているのだからそうだろうと思うのだが、玲人に繊細な女心は通じないらしい。


「忍は、腹黒い以外は完璧だし、せりと気も合ってて、俺も胸が痛いけど、うまく行って来てるかなって思ってたけど違うのか?」


「全然違います!!悪魔に魅入られた人間の末路が幸せだって思ってるの?!」と詰め寄ると玲人も意味はよく分からないがせりかが必死なのは伝わったらしい。すこしせりかもほっとして話を穏やかに進める。


「だから、橘君以外は認めないっていうのは、玲人の勝手ないいぶんだよね~!」


「うん。まあ、そうだけど……」


「それで相手が良いって言ってくれたのは、前に告白して来てくれたのを断った相手だって玲人も知ってるよね~」


「それは、そうだけど、せりもあれから浮いた話が全然出ないから心配なんだよ。せりが本庄の事、引き摺ってるんじゃ無いかって気になってさっ!!」


「そ・れ・は、はっきりと引き摺ってるわよ!だからと言って、友達の婚約者盗っちゃう訳にもいかないし、この年で二番目でもいい!なんて奇特な事も思って無いから自然に忘れる事にしたの!まだ先は長いけど、進路とかで離れるだろうし、会わなくなれば自然と新しい出逢いとかもあるのかなぁって漠然と思っているの!」


「でも、そうやって知り合った奴がロクでも無い奴に違い無いと思うし……」


「何で、そんな事決めつけるわけー?私が選んだ人ならそれを認めてあげようとかっていう気にならないの?」


「悪いが成らない!せりは、男の趣味が悪すぎる。誰っていうと支障があるけど、それはみんな心配してる。ダメンズ一直線だってお前が思うよりも危惧されてるし、俺だってそう思ってる」


「………何と無く誰が仰ったお言葉なのかは分かったわ…先輩達、玲人達の方に付いたのね?!」


「それは、お前が危なっかしいからだよ!恨むなよ!若宮先輩はかなり忍にキビシかったらしいけど、何とかお許しが出たらしいから」


「それは、あの王子なら、無敵でしょうよ?!責任を玲人に此処まで転嫁するつもり無かったけど、私が王子と付き合ったとして、本当に幸せになれる保証なんて何処にもないのよ?!分かってる?」


「……そんなの分かってるよ!だけど、せりは、一回まともな奴とちゃんと付き合ったほうがいいと思う。今のまま、大学生になって合コンとかで適当な彼氏が出来たとしても、もう少しせりが大人になって居てくれないと、痛い目みる事になるのが目に見えてるのに、俺もみんなも放って置けないから、無茶だって分かっても、押し付けでも取り敢えず受けてくれないか!って思ってる」


意外というとかなり失礼だが、玲人の話は説得力があった。そんなに心配されてしまう自分にも失望感を覚えるが、田村との事を思えば心配されるのも当然だし、心配してくれるというのは愛情の裏返しでもあるのだから、身内以外の人達が多く気に掛けてくれている現状を有り難く思うべきなのだと思った。


「玲人……有難う……私の至らなさが、玲人にそういう行動に出させるんだって分かったから、もう少し様子見るとかじゃ駄目かな?」


「駄目に決まってるだろう!少なくともこういう浮ついた事が出来るのだって今の内だってせりだって分かってるだろう?忍が不満な訳じゃなくてせりは、本庄じゃなくちゃ駄目なだけだろう?そんな事、とうに分かってるから、忍には悪いとは俺だって思ってるよ。せりの気持ちが他にあるのに付き合えっていうのは気が引けたけど、それでもアイツはせりを引き受けてくれたんだから、その気持ちを汲んで貰えないかな?!」


なんだか玲人じゃないみたいにさっきから一々説得力がある(失礼すぎる感想だけど)裏に先輩達とかの影も感じるけど、玲人も思って無い事を言える性格じゃない。本当に心から本心なのだろうと思う。…例え某先輩の差し金らしきものを多少感じようとも…。


「王子と直接話して決めたいわ!だって…玲人も言っていたけど、随分と不実な事をしようとしているのに、それに対して彼がどう考えているのか聞いてないわ!」


「じゃあ、忍、メールで呼ぶから話してみろよ?」


「ここで?!今?」


「結構ここのホテルって無駄なスペースが無いし、人に聞かれても困るから、そうじゃ無ければ俺達の部屋もあるけど、あっちには肝心の本庄もいる。…どうせなら本庄も交えて話しとくか?」


「こっちでいいわ。そんな事になったら、リアルに泣いちゃうと思うから、修羅場決定だもの」


「じゃあ、メール打つ。俺は、部屋に戻るから、二人で真剣に話してくれ!」


「はぁ~?玲人正気なの?!男の人と密室に二人きりにするつもり?!」


「今とたいして状況変わらないだろう?大体、あれだけ女に不自由しなさそうな奴が同意も無く手なんか出さないよ。ましてせりみたいなお子様に…」


最後は自意識過剰の如きに言われたけど、心配してくれる所が違うでしょう?橘君になら何されてもいいって訳じゃないんだからね!!


「お子様でも、向こうも大体私に告白した時点でそういうタイプがすきっていう変態さんて可能性も捨てきれない訳だし……」


「あのなぁー、せりは、仮にも付き合うかもしれない相手が変態でもいいわけ?しかも親友にその言い様はないんじゃないのか?」


「親友が変態でも温かく見守れる広い心は持ってるけど、恋人が変態は嫌かもしれないわ」


チャイムが鳴ったので、玲人が開けると橘が部屋に入って来た。入れ替わりに玲人が出て行こうとするので、腕にへばりついて力ずくで止めると橘が笑い崩れたので、気を取られて手を離してしまうと玲人が、「ほら、自意識過剰だろう?」と言ってでて行ってしまった。


「椎名さんが俺に聞きたい事があるっていうから来たんだけど、何?」


何?ってそりゃあ、いっぱいあるけど、一番聞かなくちゃいけない事を先に聞く。後では聞きづらくなる可能性がある以上、優先順位が高い物から聞いていくべきだと思う。


「橘君は、私が、本庄君を好きなままで付き合っていけると思ってるの?それで橘君はいいの?私が反対だったらそれは無理だと思うんだけど…」


「人の気持ちは変わって行くものだし、変わらなくても椎名さんとならやっていけると思ってるんだ。少し自分でもおかしいのは分かってるんだけど、俺にもリハビリっていうか練習?って言うと椎名さんに失礼だけど、そこはお互い様で、罪悪感無しって事でお付き合い願いたいんだけど?」


少し自分は自意識過剰だったのかもしれないとせりかは思った。橘がまだ、自分の事を忘れられなくてこの事を受けたのかも?なんて思ってしまっていたが、彼は彼で、自分とせりかが色々と克服と勉強になるという一挙両得な彼の得意な収め方で、せりかとの付き合いを了承したのだ。


なんだか、橘はやはりこちらに害を与えず、皆に得になる様に動きながらも自分の目的も遂げるという、せりかの相棒の一番いい部分が失われた訳では無かった事にホッとした。


「わかった。利害一致で貴方の手を取る事にします!橘くんからすると子供の面倒を見る様で、申し訳ないけど、嫌になるか、好きな人がお互いに出来る迄よろしくお願いします!」


「喜んで!有難う……」


彼が、右手を出したので、固くその手を握った。玲人にメールをすると飛んで来そうな勢いで喜んでくれる返信が来たが、玲人の気持ちを思えば、それはとても感謝しなければいけない事なのだとせりかは思った。橘も微妙な顔をしたが、せりかに微笑んで「おやすみ」と言って部屋から出て行った。


今日から橘くんの彼女(仮)になってしまいました。


本庄がモタモタしてる間にせりりんが~!!


でも真綾ちゃんの手前、ああ言われてもさっさとは行けないか~!

と作者も悶えております。でも仕方無い。橘君が二枚も三枚もせりかより上でした。


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