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幼馴染の親友  作者: 世羅
1章
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文化祭当日になった。


今日は一般公開のない校内だけの公開なので模擬店も割合空いている。


せりか達のクラスの劇は、明日なので、チラシを校内で、配り終わると、後は自由時間となった。部活動などで、展示やお店を出している者は、そちらに行かなくてはならないが、せりか達は文化部にも入っていない為、模擬店を見て回る事にした。美久と弘美と三人で、一年一組のメイド&執事カフェに行ってみる。


一組のカフェは大盛況で、入るのは躊躇われたが、玲人がせりか達を見つけて声を掛けてきた。


「せりー。来てくれたんだ。奢るから、こっちにこいよ」


お友達特典で空いている目立たない席に滑り込まされる。


「これって、横入りじゃないの。大丈夫なの?」


せりかは、こういう固い所があり、理不尽な事を嫌うところがある。玲人は、ここは特別予約席だから大丈夫だと宥めた。他の子達も特別に親しい子が来た時に自分が対応する事を条件に許されている席らしい。そういうことなら、とせりかも納得して席についた。


「お帰りなさいませ。お嬢様。お飲み物は何に致しますか?」


執事姿で軽く腰をおり、多分お決まりのセリフを玲人が言うと、せりかと美久は笑い崩れた。


「似合い過ぎー!!高坂君カッコいい。一番人気なんじゃないの?」


「玲人、天職だよ。執事っていうか、ホストっぽい!」


けらけら笑いながら、褒めてるんだか貶してるんだか分からない言葉を掛ける。二人とは対照的にあまり玲人と面識のない、高校からの友達である斎賀弘美は、頬を染めて玲人に見惚れてしまっていた。


「それで、お嬢様がた?お飲み物は?」


「アイスコーヒーお願いします」


「美久と斎賀さんは?」


「うーんとオレンジジュースで」


「あ、私も!」


「かしこまりました。少々お待ちください」


玲人が去っていくと三人できゃあきゃあ騒ぎだした。


「玲人も似合うけど、女の子のメイド服もかわいいね。一回着てみたい」


「そうだね~。みんな三割増しかわいく見えるよね。執事さんも見た目重視みたいだし?」


「確かに。厳選してるみたいね。けっこうシビア…」


「せりかもそう思う?執事さんも衣裳カッコいいし、店も本格的。ステンドグラスとか使っててアンティークな喫茶店みたい」


「一組も頑張るよね~。明日は負けてられないね!」


かしましくお喋りしていると玲人が飲み物とショートケーキを持ってきた。


「お待たせ致しました。どうぞ」


いつもに無い玲人の気取った所作と笑顔に、せりかも楽しくなってきた。


「執事さん?ケーキは頼んでませんけど?」


おどけて言うと


「お嬢様方の為に特別に用意させて頂きました。宜しければお召し上がりください」


それらしく、恭しい態度の玲人がまたツボに入って、美久とせりかは笑い出す。弘美だけは首を傾げてお礼を言うと、玲人は、『喜んで頂けて光栄です』と微笑んだ。


「ありがとう。玲人もあっちで、呼ばれてるよ?私達は充分楽しませてもらったから」


「ああ、ゆっくりしてってくれ。俺も明日の劇見に行くから席キープしといて。結構評判になってるから混みそうなんだよ」


「王子様がねー。橘くんじゃ、宣伝しなくても人が来てくれるから助かるよね」


「せりのシンデレラも笑いに行ってやるから。後、忍も冷やかしてやれるから、今から超楽しみ!」


「冷やかすのは、終わってからにしてよ?唯でさえ、私も橘くんも緊張してるんだから」


『わかった、わかった』と言って玲人は他のテーブルのお客さんの元に去っていった。


それにしても執事の玲人は大人気だった。せりか達がいる間もあちらのテーブル、こちらのテーブルといった感じで中々忙しい。一緒に記念写メ等も撮らされていて、笑顔で楽しそうに対応している。これがもし橘だったら相当苦行だろうと思われた。反対に玲人が王子様でも楽しくやってくれそうだと思うと玲人は、いつもポジティブだなぁと感心させられた。橘がネガティブなのでは決してない。あちらの方がごく普通の反応で、玲人の方が、ある意味特別強靭な精神の持ち主なのだろう。騒がれてもそれはそれで、相手も自分も楽しくさせられている様に見える。


玲人に皆でお礼を言ってから一組を後にした。後はタコ焼きをたべたり、綿菓子を持って、ヨーヨー釣りなどまるで、お祭りに来たみたいである。おまけに全てが安価である為、買うのになんの躊躇いもない。明日の衣裳が着れなくならないといいんだけど、と思うが楽しむ方を優先した。弘美が射的でおおきなぬいぐるみを当てて、嬉しそうに抱えているのも微笑ましくて自然と笑顔になる。そうしているうちに同じ様に楽しんでいる橘と本庄とすれ違った。橘がせりかに声を掛けて来た。


「玲人のところ行ってやった?」


「行ったよー!笑い過ぎてお腹痛かったよ。あんなに気取った玲人初めて見たからもうおかしくて!」


「椎名さんの幼馴染の彼、スゴイ迫力あるね。カッコいいんで初めて見たから結構驚いた」


「男の人から見てもそういう事思うものなのね」


「むしろ男の側から格好良く見えるタイプだよ。体格とかも筋肉質で、でもすらっとしてて理想的だし。橘も綺麗な顔してるけど、男からすると見た目だけに関すれば高坂のが羨ましいね」


「せんせい?橘くんを目の前にして失礼じゃないかしら?なんといってもうちのクラスの王子様なんですからね!」


「ははっ。気を使ってくれなくてもいいよ。俺もサッカー部で玲人くらい体格恵まれてたらっていつも思うもん」


「私からしたら、知らない人から写真とか強請られて、平然と楽しく一緒に写っちゃう図太い神経が一番羨ましいけどね…」


「「「「それは確かに」」」」


皆の声が揃ったので、せりかは、噴き出してしまった。


本庄がせりかにだけ、こそっと「何か俺の事を話した?」と聞くので「この間の教えてくれなかったから玲人に聞いた時に先生の事もはなしたけど」と答えるとはぁーとタメ息をついた。


「せりがお世話になってますって彼に言われたんで、何かと思ったけど」


「引かないでね?私も他に聞ける人居なかったから聞いちゃったんだけど、玲人にも先生に感謝しろって言われて私も反省してるから」


「何こそこそ内緒話してるの?」


美久が入って来たので、玲人のことを説明してたと言ったら直ぐに納得してくれた。親し過ぎる間柄に説明が必要な事が、今迄も少なく無かったからだった。それに嘘は言っていないから後ろめたさもなくていい。


それから5人で展示物を見てまわったり、お化け屋敷に入ったりした。しかし、学生の造るお化け屋敷はやはりあまり恐く無かった。せりかと橘は内心、来年はお化け屋敷はなしだなと思った。気が早いが、委員になる可能性が高い以上、見る目が粗を探してしまうのも事実だった。


そうして文化祭1日目が終わった。


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