表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
46/128

46

告白…。


少し短めです。

「椎名さん、ちょっといい?」


食事から部屋へ戻ろうとする所で隣のクラスの男の子に呼び止められた。


二組の委員長の田村だった。委員会の集まりで、一年生の頃からせりかとは多少面識はあった。


橘が隣にいる割には、その頃からよく話し掛けてくれていた人で、その時も彼は、六組の委員長で、隣のクラスだった。


今のクラスか元五組以外での異性と話すのは、とても珍しく、感じ良く話し掛けてくれる彼は、とても人懐こい、人に壁を作らない人だと思っている。


確か、サッカー部じゃないよね?と怖ろしいせりりん話を思い出すが、彼は、セーフだ!


「いいけど、如何したの?」


せりかが聞き返すと彼は、少したじろいで此方を見た。


一緒にいる玲人が、後ろで刺すような視線で威嚇し、横で橘はすぅーと目を細め、見た目にも分かる黒いオーラを放っている。本庄は流石にこの状況に、彼への同情と苦笑を禁じ得ないが、どうやらこの、イベントに乗ってせりかに告白しようとしている輩だと思うので、せりかのお目付け役の二人に処遇はまかす事にした。


本庄からすると、せりかは、かなり予想外な人なので、このあまりよく知らない相手と急に付き合う事に成ったから…等と言いかねないと思っている。


彼女からすれば、好きな相手ではなくても。高坂と橘の干渉をうけず、こうして彼らがいても声をかけてこれる田村という人物はかなり好評価な相手だろう。本庄もその点に関しては、相手の人物に感心するものがあった。せりかは、モテなくは無いが、如何しても脇にめったに居ない様な端正な美貌の彼が、常に横にいる。その上、とても人気のある幼馴染の存在がチラチラと見えるので、大抵の男は諦めてしまいがちだった。


サッカー部の連中は、真綾の件で本命視していた高坂が彼氏では無く、せりかがフリーな事を知っているからこそ、彼氏に立候補出来るのであって、何も知らないこの男が告白してくるのは、かなり勇気がいる事だと思う。


しかし、世の中、記念告白と言って、駄目なのは判っていて告白する場合は、記念に等と無理やり抱き付いてきたり、キスをしたりという思いきった事をする奴も稀にはいるので、やはりせりかと二人きりにする事は出来ない。橘達もその辺は判ってると思うので、如何にかすると思うが、せりかがそれを断る可能性もあるので、本庄も成り行きを見守った。橘達を断っても自分のいう事なら聞いてくれるだろうと思う事は自惚れているが、実際に彼女はそうするだろうという確信が本庄にはあった。


やはり、思った通り、相手に請われるまま、二人きりになろうとする田村を受け入れてしまい、高坂や橘をせりか本人が遠ざけた。過保護な彼らに「付いて来ないで!」と念を押していた。橘達は心配な部分はあるが、多少の顔見知りらしい彼が、そこまでする事は無いと踏んだのか、せりかを追わなかった。


二人が、人気(ひとけ)のない非常階段の方に行くのを見て、本庄が後を追った。


男の方は、追ってきた本庄に気が付いて、抗議の声を上げだが、予想通りせりかが宥めて本庄の同行を許して欲しいと田村に言った。


流石に、せりかの脇にいるのは、デリカシーに欠けるので、少しだけ距離を取った。




男が本庄の方をチラチラと気にしながら、一年の頃から好きだったとせりかに告白すると、そういう事に不慣れな彼女は、ぱっとうす暗い所でも判るほど顔を赤らめて、驚きを隠す様に手で口を押さえた。


せりかの様子に脈があると思ったのだろう、男は勢い込んで距離を縮めた。


普通はそうだよなぁと本庄も思うが、(うぶ)な反応なだけだと相手を睨み、こちらも距離を縮めると相手が明らかに不満を顕わに本庄に「少し離れててくれ!」と強い口調で非難した事で、せりかの頭は一気に冷えた。


今迄あまりせりかに縁の無かった事だし、相手に悪い感情は持って居なかったので、この告白に対して、どう返事をするかは、「少し考えさせて欲しい」というつもりだった。


しかし、自分を心配して付いて来てくれた本庄に対する態度は、あまり好ましいものとは思えなかった。確かに、告白の場所に他者がいる事は不本意かもしれないが、こんな暗いところで距離を詰めてこられたら、流石のせりかも防衛本能がやはりあまり良い状況では無いと告げていて、本庄が無理やりにでも付き添ってくれた意味が分かった。



「悪いけど、好きな人がいるからごめんなさい」


と言って頭を深く下げた。田村は一度期待してしまった為か、雰囲気に流されたのか、せりかの肩を掴んで


「っ!如何して俺の気持ちを分かってくれないんだ!君の事を一番想っているのは俺なのに!」


と揺すったので慌てて本庄が引き剥がした。


やはり無理にでも付いてきて正解であった。


橘と高坂はこいつの事を割合穏やかな良識的な人間だと認識しているからからのミスだろうが、本庄はそういう先入観もないし、人間は自分の欲の為には豹変する生き物だという事を知っている。


どんな事にでも保険は必要だと言う事も分かっているので、せりかの自分への気持ちを利用する形になろうとも、最善の策を講じた。そこには本庄の前で他者の告白を容易く受け入れないだろうという打算もあったが、それは少し相手に卑怯で卑劣な事をした自覚はあった。


「女の子に手荒な真似をするのは、駄目だよ?自分は好きだからって言う、理由があるかもしれないけど、椎名さんからすれば何とも思わない君に肩を掴まれたら怖いし、不快なだけだよ」


耳元で囁くと本庄がせりかの前で恥をかかせない様に小声で言ってくれた事を認識出来る程度には良識がある奴なのだろう。「悪かった」と小声で本庄に言った。せりかにも


「椎名さんごめん!!本当に悪かったよ!なんだか椎名さんが俺の事を、少しは好きなのかもって誤解しちゃったみたいで、怖がらせちゃって本当にごめんね……考えたらそんな事を一言も言われてないのに俺の思い込みだった」


「ううん。気持ちは有り難う。今迄通りというのは、田村君も難しいと思うけど……私の方は気にして無いから…」


天然に酷い事をいうせりかに、相手の男に同情してしまった。気にしないってそれは、気にしてやれよ!と本庄でさえ思うのだから、振られた相手の受けた打撃は相当なものだろう。


「とにかく、ごめんね!」と居たたまれず相手が去っていってしまったのは仕方が無いと思う。


本庄達も少し冷える非常階段から帰ろうとしたが、せりかに引き止められた。


「新たな恋を探すとかって言ったのに、いざとなると人間って自分に正直になるんだって分かったし、玲人達を過保護だって責めるのもお門違いだって分かった。だって本庄くんが居なかったらって思うとやっぱり危機意識が足りないって思うもの。有難う。一緒に来てくれて………」


「いや、橘が引いた位だから、普段は安全な奴なんだというのは判るけど、人って状況で変わるからね!ちょっとおせっかいかと思ったんだけど良かったよ」


そう言うと、何故かせりかは少し黙りこんでしまったが、しばらくして思いきった様に話し出した。


「……本庄君の親切に縋ってしまって結局こうやって面倒まで見てもらってしまうから甘えてしまってる事はよく判っているんだけど、今から、私も告白するから、きちんと振って貰えないかしら?図々しいのも答えも解っているけど、ちゃんと本庄君から、拒絶の言葉を貰って無いからいつまでもしつこく想っていてしまうんだと思うの。自己満足なのは解ってるんだけど、はっきり私の事なんて何とも思ってないし、彼女がいるから困るって言って貰えないかな?お願い!」


「…………………」


困って黙りこんでしまった本庄に、それでも自分の気持ちをちゃんと伝えられる最後の機会だと思い、せりかは心の中にしまって来た言葉を紡いだ。


「本庄君の事が好きなの……半年前よりも…どうしようも無いくらい…ただ、好きなの…」


本庄は、ここで聖女に懺悔をしても許されるのだろうか…?と突然のせりかの告白の切なさに気持ちが大きく揺れるのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご投票くださる方は下のタグをクリックお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ