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少し長くなりそうなので切りました。ちょっと中途半端なところかも(^_^;)
修学旅行の浮かれた雰囲気が伝わるといいなといった回です。
一日目の宿泊先は、湯の川温泉にある大きなホテルだった。
「やった!温泉だー!」
「せりかちゃんて温泉好きなの?」
「嫌いな人なんて、いないんじゃないの?」
「ふふっ。そうね。美人になれそうなお湯があるといいわね」
「でも、此処のお湯ってさらってしてて気持ちいいらしいよ?」
「詳しいのね~。せりかちゃんは、効能よりも、お湯の加減が気になる方なのね?」
「だって~、腰痛とか、膝痛とか、皮膚炎とかっていわれても、効能ってお年寄り向けな感じだし、子宝の湯とかって書いてあったら入りづらいじゃ無い?」
「確かに~!そりゃあ、入れないわ」
「そうすると自分で入った加減が気持ち良いのが一番なんだ~!」
「露天風呂もあるみたいよ。寒いかもしれないけど」
「入れたら、入ってみちゃう?」
「そうね。スキー場で雪の中、入った時も何とかなったから、大丈夫かもね…でもお風呂までが茨の道で、肌を刺すようだったから、急いで転ばない様にしないとね」
「そうなんだー!なんだか楽しくなって来ちゃった!」
きぁあきゃあ言いながら、自分達に割り当てられた時間まで、少し荷物を整理した。此処は一泊しかしない為、あまり荷物を広げないべきだろう。夕食はお風呂の後なので、部屋着には着替えられないなとインナーとお風呂セットと皺にならなくて嵩張らないからと3枚いれた被るだけで着れるゆったりしたワンピースを持っていく事にした。
真綾と美久と弘美も合流して大浴場に行った。
身体を洗ってから、内湯に浸かる……うーん…気持ちがいい。透明でさらさらの湯は清潔感があっていい感じだ。そんなに温泉めぐりをしてはいないが、温泉という言葉だけで気分が浮き立つし、実際大体のところで角質が落ちる成分があるのかツルピカになれる。
うにゃーと満喫していると沙耶が、「行っちゃう?」と言ったので、露天風呂を突撃する事にした。
「ドアはすぐに締めないと中の人に迷惑かけちゃうから、さっといきましょうね」
にゃるほど!露天風呂寒い版には、特別に入る作法があるらしい。
二人で露天風呂に行くドアをぱっと開いてさっと閉じた。
寒い…喋れない…歩くのが…つま先だちになってしまって…すぐ傍にみえるお風呂が…遠い…。
やっとの思いで辿りつきお湯に浸かると、じわーと体中が生き返る様に気持ちが良かった。
「やっぱり、寒いときこそ露天よね?」
「ホント―!沙耶ちゃんが言った通り、途中大変だったけど、極楽~!ってなるね♪」
「見てー!すっごく一杯星が見えるね!」
「本当!空気が綺麗だからかなぁ?」
「そうね。みんなは、流石に勇気が出ないからいいっていってたわ。こんなに良いのに勿体ないわね」
「寒いからねぇ。でも寒いからこそなのにね!」
二人で、しばしこの景色と露天風呂を独占したが、時間もあるので、あがる事にした。帰りは、行きに比べると全然楽だった。ちょっと謎である。元々が寒い所からの移動だからなのだろうか?……。
髪を洗って、シャワーで身体を流して手早く出た。時間が次のクラスまでもう少しだった。
皆は化粧水を塗ったりドライヤーで髪を乾かしていた。お風呂に入ったばかりなのに薄化粧をしだす子までいて流石に驚く。まあ、これから食事だもんね。どうして逆じゃ無いのかと思うが、クラス毎の時間の関係で、夕食前になってしまったのだった。せりかはさっぱりしてからご飯の方が、良かったが、髪を乾かして、一応異性の前に出れる様にしなければ成らない事を思えば、不満を言う子の言い分は最もだった。
「夕食、バイキングなんだって!」
「うわー!好きな物だけ食べちゃいそうだし、食べ過ぎそうね?!」
「せりか、普段結構ダイエットしてるもんね~」
「まあね。過度なものじゃないけど、一回食べ過ぎると胃が大きくなっちゃうからその後辛いんだけど、今回は竜宮城に来たって思ってるから、帰ってから、頑張るわ!」
「せりかちゃん、そんなに細いのにダイエットしてるの~?!」
「せりかは、ちょっとそういう所、病気なのよ!」
「まあね。玲人病とも言うけどね…今話すと夕食が美味しく食べられないから、寝る前に話すね…」
バイキングは、語源は帝国ホテルのお店が付けたらしいから、普通はビュッフェと言ってるところが多いけど、ここではバイキングと書かれていた。なんだかその方が食べるぞーという気合いは入ると思った。元々は海賊の食べる風景ががっつり食べてるイメージがあったから、そう付いたって言う話だった。
蟹は勿論イカや、なんと今の旬のボタンエビ発見!なんだか本当に北海道=竜宮城に思えて来た。一応、お肉類や揚げ物や、おでん、ラーメン、てんぷらと色々なコーナーがあるが、せりかの目は完全に生ものに向いていた。
ボタンエビをほうばると、甘―いトローとした美味しいエビだった。鮮度が違うのか、気分が違うのか、生もの類は全て地元で食べるものと全然違った。だって、イカが透き通ってるってどんだけ新鮮なんだろうって思う。
「せりって、海鮮物見ると、他になんにも食べなくなるよな~。せめて、なにか炭水化物と野菜類取っとけよ。具合悪くなるぞ!」
「サプリメント持ってきたもん!」
「もん?じゃねーよ!小母さんに言われてるの!なんだか浮かれるせりを見て危機感持ったみたいだったぞ?」
「いや!夜の炭水化物は、普段だって余り食べないからいいのよ!温野菜は一応採っとくから!」
「じゃあ、俺が持ってきてやるからそれは全部食えよ?」
「うん。わかった。有難う…」
二人を見ていた外野は唖然として、二人に遣り取りを見ていた。なんだかおうちの居間に居る様子がそのまま再現されている様だった。
「玲人君って意外とマメなのねぇ」
「っていうかお嬢の我儘言うのって、高坂限定なの?普段にありえない我儘っぷりで、まるで真綾みたいだな……」
「綾人、余計な事言わないで頂戴!」
「普段から、あんな感じよ?みんな高校からだから高坂君と一緒のせりかの事、あまり見た事が無いのよ。一年の時はクラス違ったし、二年の初めは近寄らせなかったから」
橘と本庄は、二人の様子を見て、せりかが玲人を恋愛対象から外してしまうのが何と無く分かる気がした。本庄と真綾よりも家も近いし、存在も近かったんだろうと思う。逆に妹に接するような玲人が、せりかを恋愛対象に見れた事の方に疑問を持つくらいだが、そこは人それぞれ、考え方も違うし、こちらがどうこう思える事でも無いだろうと思う。
恋愛対象から外されてしまうのは、困るが、せりかに甘えられてみたいと言う願望が橘の中に生まれたが、多分それは惚れた弱みと彼自体が末っ子の所為だろう。
皆も修学旅行初日の夕食を楽しんだ。玲人とせりかの遣り取りは、その後も面白くて、十分にジュースの肴になった。
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