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若宮VS橘 ミッション2 未来の新旧会長対決です…。
「それで、せりかちゃんに避けられているみたいだけど、それで、彼女を守れるのかしら?」
一応、こちらの意向は伊藤が伝えてくれたらしい。最初は、伊藤の事をミイラ取りがミイラにならなければいいなと心配していたのに、若宮もしっかりミイラ側の心配性団体の一員だった。
「仲間に協力を仰ぎます。結構俺達並みに過保護なのがいますから、面倒見てもらいます」
「せりかちゃんの周りってやっぱりそういう人が多いのねぇ」
と若宮は溜息を洩らした。
「それで、せりかちゃんの好きな人って如何いう人なの?付き合っている相手がいるのに半年以上も忘れられないって、よっぽどでしょう?!」
「本庄綾人といって、一年の頃から俺達と同じクラスです。大企業の御曹司で、従兄妹で婚約者が同じクラスにいる更科真綾です。この間お世話になった子です…」
「彼女って、婚約者だったの?それで、従兄妹って、本当にせりかちゃんには、望みが無いってわけね…。なんでそんな報われないの分かってる所に落ちて行っちゃうのかしら?!せりかちゃんてば…」
「それでも仕方無いくらい本庄が出来過ぎた奴なんです」
「橘くんよりも?……」
「比べ物になりません。残念ながら…」
「謙遜じゃないみたいね」
「ええ、もちろん。一つだけ、若宮先輩にもいい情報ですけど、本庄を書記に引っ張ってきます。更科さんを会計にすると思いますけど…」
「それじゃ、せりかちゃんが、可哀想じゃないの?」
「それ迄には忘れて貰います。本人もそう、望んでますし!」
「橘君が忘れさせてあげられるのかしら?一回、振られているんでしょう?」
「っ!若宮先輩は痛い所突きますね…。一回引いたのは、彼女は玲人の事を行く行くは選ぶと思ったんです。本庄に惹かれてはいても,玲人への愛情があるのは、見ていて明らかでしたから…」
「そこにあの、玲人くんが不憫すぎる、恋愛対象に見られない!っていう所に来る訳ね」
「何処まで、聞いているんですか?………」
「殆んど全部かしら?本庄君の事は、相手の個人情報だから、彼女持ちだけど、今でも好きな人っていう表現どまりだったけど?」
「………若宮先輩も結構ドSですねぇ…俺が分かっている事でも彼女がそうはっきり言ったのを聞かされたら、痛手を受けるのは解ってらっしゃるでしょうに…」
「だってぇ、せりかちゃんったら彼氏立候補者の中に『橘くんと張り合える人は、いますか?勿論、顔じゃなくて腹黒さでっ』…って言うのよ?!聞いた時は泣きそうになったわ。私が!」
「彼女は意外と本庄を除けば、趣味が悪いんですよ!玲人と俺が心配になる位には…」
「そうなのよ!って流石に失礼かとは思うけど、心配になっちゃって貴方達と手を取る事にしたのよ…不本意ながら…」
「さすがに先輩方は、聡明な方々だなと、俺が言うと失礼ですが、伊藤先輩から昨日話を持ちかけられた時に、改めて思いましたよ」
「せりかちゃんを裏切っているみたいで心苦しいのよ?でも、せりかちゃんが、変な男に騙されるのを放って置けないわ」
「彼女が選んだ人でも、勿論、幸せになれるかもしれないし、そういう確率の方が高めだったら、傍観者でいるつもりだったんですけど…」
「嘘ばっかり!橘君は、いくら綺麗ごといっても最後は欲しい物は手に入れるタイプでしょう?」
「何を根拠にそんな事を仰るのか解りませんが?」
「だって、橘君って伊藤君に似てるわ。彼も今迄見て来て、そういう人なのよ…一緒の匂いがするわ」
「……彼女にも同じ事を言われました。…憧れの先輩と似ているなんて光栄ですが……」
「ふふっ!気を悪くしないで。良い意味でも似てるわよ。優秀で、サッカー上手くて、容姿も良い……ってこれは、伊藤君と比べたら、橘君に悪いわね…後は、駆け引き上手だし、他人に考えを読ませないし、…」
「褒め殺すつもりならその辺で、勘弁して下さい……。でも最後のは褒め言葉じゃ無い気がしますが?」
「いいえ、他の部の部長連中と渡り合わなくちゃ成らないから、会長としては、必要な資質なのよ。何も貴方が学年で首席だから、会長候補に選んだ訳じゃないのよ」
「それ、この間、椎名さんに抜かれたので、もう違いますから!」
「そうなのー!せりかちゃんやるわね~!流石、私の弟子だわ」
「貴女の弟子は俺になる筈ですけど……」
橘が呆れたように言うと流石の若宮も、「そうだったわね」と誤魔化し笑いをしたが、橘は冷たい視線を寄越した。
「とにかく、彼女が俺と玲人を避けても、本庄にフォローを頼みますから、大丈夫です!」
「頼むのって本庄君に頼むつもりなのー?!……!!」
「本庄が一番適任だし、彼女も一番信頼してるんですよ…それに他の男に任すのは、俺も玲人も嫌なので、あとは彼女の親友達に協力を仰ぎます」
「なんだか、本庄君に会ってみたいわねぇ!早めに生徒会に連れて来なさいよ!」
「椎名さんが、本庄よりも俺に気持ちが傾いたら連れて来ますよ!」
「うわー格好いいわねぇ。言われてみたーい♪頑張ってね。ほんの少し応援する気になったわ!」
「どうも!ほんの少しですか………?弟子なので、もう少しだけ加点して頂けませんか?」
「ふふっ!おみやげ、バタークッキーサンドで手を打つわ!」
「意外と良心的ですね……こちらも助かります。先輩達に邪魔をされてしまうと計画が致命的に駄目になりそうだったので、運の良さに感謝しています」
そう言って、嬉しそうに微笑んだ橘は、壮絶に美しくて、流石の若宮も息を吞んだ。




