表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
33/128

33

ある日のLHRで委員長であるせりかと橘は教室の教壇に立って、修学旅行の説明をしていた。担任は横のパイプ椅子に座っている。


「行き先は北海道で四泊五日です」


「班行動があるので、四人一組でお願いします」


橘とせりかが交互に話す。


「班が決まったら、班長を決めて、点呼の時には、確認後、報告に来て下さい。人数の都合上、五人になってもかまいません」


「班長になった人は、班の人の氏名を書いて、こちらに提出してください。尚、班長はこの後も連絡係となりますので、宜しくお願いします」


ざわざわと皆で班を決めて、記入しだした。班長は押し付け合いに少しなっていたが、じゃんけんで決まったり、一番面倒見が良いものが、なってくれたりと、皆、マチマチの決め方で、記入をしていた。


せりか達の班は、せりか、玲人、橘、沙耶だった。美久達は、弘美と本庄と真綾で一組だった。


せりか達の班は、元一組の子達から、委員長チームとひやかされた。玲人と沙耶は元、一組委員長を一年やってきた。せりか達、二人は、新一組の委員長二人だからだった。


「班長は玲人がやって欲しいんだけど」


「忍じゃないのか?適任だろう?」


「橘くんは委員の仕事も被るから…玲人の方がいいと思うんだけど」


「分かった。沙耶も忍も俺が班長でいいのか?」


「もちろん。悪いな!」


「玲人君、よろしくね」


「じゃあ、俺のいう事をよく聞くよーに!!」


「「「はーい!」」」


委員長チームというと堅苦しい印象だが、内情はこんな感じだった。小学生の遠足か?!と突っ込みたくなるが、明るい玲人が班長なのはこういう楽しい効果も産んだ。


美久達のところは当然のように紳士な本庄が、班長を引き受けた。


用紙を集め終えて、人数が合っているか確認して、説明を終えた。






帰ってから、玲人と恒例の勉強会を終えてから、旅行の話になった。


「修学旅行って二年生で行くのは知ってたけど早いよね!」


「まあ、こんなもんじゃないの?夏休み位から夏期講習とか受験モードになるから」


「遊べるのも今のうちって感じだねぇ」


「寂しいけど、そうだよな」


「北海道ってやっぱり寒いのかなぁ?」


「こっちよりは、寒いだろうけど、旅行の頃は過ごし易いくらいで丁度良いんじゃないの?こっちは雨ばっかりだし」


「楽しみだねー!」


「そうだな。中学の時と違って、私服だから、荷物増えそうだけどな」


「そうだよねぇ!カバンあったかな?!これを機会に買ってもらおうかな」


「俺も買おうと思ってたから、明日出掛けるか?」


「ジーンズとかも見たいんだけど、付き合ってくれる?」


「ああ、じゃあ、この間行った、ワールドポーターズがいいんじゃないか?あそこは、インポートものとかアウトレット価格だし」


「ついでに、上のインド料理屋で、久しぶりにカレー食べたいな。ナンも食べたいし!」


「そうだなぁ。それ、いいよなぁ!じゃあ、明日は十時に迎えに来るから」


「わかった。まってるね♪」




翌日、せりかは、お気に入りのローラアシュレイの水色のワンピースに紺の薄いカーディガンを羽織った。かばんは同じブランドのトートバッグを持った。


仕上げにUVの効いたファンデ―ションを軽く塗って、眉、アイシャドウ、グロスと、ワンピースに合わせて淡い色のお化粧を施した。


そして、美久から貰ったネックレスと橘からもらったイヤリングを付けた。弘美から貰ったブレスレットは、三つするとくどくなるので、しない事にした。ブレスレットは少し夏っぽいので、もう少ししたら、出番が増えるだろうと思う。


せりかは鏡の前でクルンと一周りして、出来に満足して、玲人が来るのを玄関で待った。


玲人がチャイムを鳴らしたので、五センチヒールの茶色の革のサンダルを、履いて、外に出た。


玲人はラフなシャツにストレートのジーンズをあわせたシンプルな装いだが、前に雑誌に載った、『ナチュラル系イケメン彼氏』という見出しを思い出し、元が良ければ、シンプルでいいんだろうと結論を出す。却って、飾りたてるとナルシストっぽくなってしまって元の良さが損なわれてしまいそうだ。


「おはよう。天気が良くて、良かったなー」


「そうね。お出掛け日和ね」


と短く答えるせりかの顔を玲人は、なかなか直視出来なかった。いつも可愛いが、今日のせりは反則だと思う。ラビスラズリのイヤリングがゆらゆらと揺れて、それに気を取られて、真正面からいきなり顔を見てしまった。


玲人は、今自分の顔が、紅くなっていないか心配だった。必死に他の事を考えて意識を他に向けるが、せりかがじーと玲人をみつめて思考の波に吞まれたので、少し安堵する。せりかの態度から察するに、玲人の不自然さには、気が付いていない。


「玲人は元がいいから、何を着ても似合うわよねー」


珍しく、玲人の外見を褒めてくれる事に不気味さを感じながらも、少し照れる。


せりかが、普段外見を褒めるのは、可愛い女の子か、橘忍くらいだ。忍は中身はとても腹黒いが、外見は、誰の目から見ても、一目で美しいと思わせる整った顔立ちに、華やかさが加わった迫力ある容姿の持ち主だ。それでも、あまり表立って騒がせない空気を醸し出していて、適度な距離を保って女子と接する為、皆から、観賞用等と失礼な事を言われているが、本人もそう望んでいるし、相手に無理な期待を抱かせないだけ、親切なのだろう。


俺は、今迄、あまり深く考えずに、みんなも自分も楽しくなれれば良いと思って行動して来た。その為に、マーヤに迷惑を掛けてしまった。


今は、それでもマーヤとの誤解を解く様に、頑張ってくれた女の子達には感謝していたし、応援されると気分も乗るので、声援にも快く応えている。愛想のいい俺を「みんなのもの」と言われているらしい事に気が付いた時には、少し呆れながらも女子の可愛い戯言だと思ったが、忍やせりかに言わせると、身の毛もよだつ恐い話なのだそうだ。俺の感覚が少しおかしいのかと、心配になるが、せりかや忍からは、羨ましいポジティブシンキングなのだから、玲人は玲人のままで良いと言われると、これでいいのかと疑問を抱えつつも現状維持だった。何をどう、変えたらいいのか分からないというのが正直なところだ。


一時はせりかの罪悪感から来ると思われる優しさに心が折れそうになったが、マーヤ達と出掛けた辺りから、そういう事が、無くなり、元のせりかに戻って一安心したら、忍のアドバイスは有り難いが、やはり今はまだ受け入れられない。落ち込む事も無くなった俺に、忍はそれ以上何も言わなかったし、自分の考えを押し付けてくる様な奴では無かったので、この事も現状維持状態だ。


そう考えると、何も自分が先に進めていないのでは無いかと焦った時期も少しあったが、考えすぎるのは性に合わないので、成り行きにまかせて流れてみるのもいいかと思っている。これが、せりか達のいう、楽天的なのか?と思うが自分の事は、なかなかよく分からない。今は玲人は玲人のままで良いと言ってくれた二人の親友の言葉を信じているだけだ。




それにしても今日のせりは可愛い!何時の間にこんなに大人っぽくなってしまったのかと思う。毎日会っているというのに、照れてしまって、顔をよくみれない。せりかに不審がられないうちに何とか態度を改めたいと思う。惚れた欲目を差し引いても、せりかは、可愛いと思うのだが、いくら言ってもせりか自身の自己評価が低いのが解せない。


あまり認めたくないが、あの忍と並んでも、お似合いと周りに思われる容姿で、なぜそれを自覚出来ないのだろう…と思うと数々のせりかへのアプローチしようとする男への妨害が、自覚を薄くしてしまったのではないかと薄らと思う。しかし、あの時は仕方がなかったのだから、今、褒めちぎって自覚してもらえばいい事だという考えに到った。そうだ!今からでも遅くは無い!


「せりかは、何を着ても、すごく可愛いよ!今日の格好もとてもよく似合ってる」


唐突に褒め出した俺を胡散臭げにみる様子に失敗しているのがわかる。


「どうしたの?変なものでも食べた?それともなにか後ろめたい事でもある訳?」


なんだか世の浮気夫の様な言われ様にがくんとする。しかし、思っている事を口にしているのだから、ここで、諦めてはいけない。


「いつも思ってた事を言っただけなのに、信じてくれない訳?」


「なんだか、気持ち悪いけど、買い物に急ごうよ…」


ナチュラルに滅多切りにされてずたぼろだったが、とにかくおしゃれをしたせりかと一緒に街を歩ける嬉しさで、足が軽やかになった。


せりかは、玲人のおかしな様子を取り敢えず見守る事にした。長い付き合いの中では色々あったので、この位の事は、許容の範囲内だった。


玲人君奮闘記は次回へ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご投票くださる方は下のタグをクリックお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ