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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
29/128

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人の噂も七十五日と言うが、真綾の件は、思っていたよりも(ことわざ)よりも、もっとずっと早くに解決を見た。


こんなにあっさり解決されたのは、若宮と伊藤の存在が大きい。


若宮は各部長に働きかけて、下級生に雑誌の話題を吹聴しないようにしてくれと頼み、下級生はやはり直に関わる先輩からの言葉は重いので、友達諸共、その話題はしなくなった。


伊藤はサッカー部という事もあって実に効果的に動いてくれた。この学校では、サッカー部自体に人気があるが、伊藤は同学年ではその実力からカリスマ的な人気らしい。MFのポジションでチームの司令塔の役割だと橘が教えてくれた。(せりかは練習も試合も見に行った事が無いので分からなかったのだが)


その彼の応援に来てくれている同学年のお姉さま方に今回の件を話してくれた。応援や見学というのは部活動では無いが、毎日の様に顔を合わせれば挨拶もするし、自然と人間関係も出来て、秩序も生まれてくる。応援出来る場所などは学年毎で決まっているという事だった。


伊藤から頼まれたお姉さま達は、早速、二年生の応援する見学者に話を付けてくれたらしい。


ここで言う事を聞かないと、自分達の趣味であるサッカー部の観戦も応援も出来辛くなる事から、一番厄介だと思われていた、熱狂的な玲人ファンの子達は、あっさりと矛を収めた。


その子達が何も言わなくなると、言っている子達が目立って、空気が読めない感じになって来た。まして、学年で知らない者はいないと思われる橘を中心に十数人で守っているのだから、却って真綾に謂われのない悪口を言っている方に主に男子の冷たい視線が行く事になった。其処まで行くと、空気が読めなかったり、色んな伝手(つて)からの協力から漏れた子達で、最後まで悪態をついていた子達も分が悪くなって来たのに気付いて、口をつぐむ様になった。


ここに到るまで、たった四、五日だったのだから、すごい!!生徒会にお手伝いに駆り出されたお蔭で、思わぬ人脈が出来て、本当に助かったと思う。






「ありがとう。お嬢さん達のお蔭で今回は本当に助かったよ。真綾も世間の風に当たって、もう不用意な事はしないと思うし…」


「真綾さんも今回は辛い思いをしたんだから、余り責めないであげてね!みんな、本庄君程、先の予想が付く訳じゃ無いんだし」


「それにしても終息早かったなぁ。今回の事で先輩の偉大さを初めて感じたよ。直接俺がお礼言うのも変だから、言えないけど会長と副会長には、本当に感謝してるよ」


「そうなの。私もすごく感謝してるんだけど、若宮先輩はともかく伊藤先輩は普段おちゃらけた感じだから、今回こんなに力になってくれた事はかなり意外なんだけどね」


「橘に聞いたけど、その伊藤先輩が、かなり真剣に頼んでくれたらしいよ。副会長やってるから、サッカー部では部長も副部長もやってないけど、実力も人望も部内一だって」


「そうなんだってね!びっくりしたよ。いつも私に絡んで、それで橘君の神経を逆撫でて楽しんでたから、そういう部分しか見た事なかったから意外だったよ」


「おれも、真綾の持ち物が無くなったり怪我とかさせられたりしようものなら、無い罪状まで付け加えて訴えて、その親にも責任取らせて、社会的に抹殺しようと思ってたから、汚い事をしないで済んで助かったよ」


「…それって、向こうが助かったっていう気が若干してくるけど…………」


やっぱり、お腹は真っ白なんかじゃ無い!!グレーと言ったのは甘めだった。権力まで持っている分、本当に怒らせると本庄の方が桁違いに怖ろしい事をしそうだった。


それだけ真綾の事を考えているんだろうとは思うが、規模が大き過ぎて少し恐い。いろいろと食い止められて良かったのかも知れない…。


「高坂も、責任感じてるらしくて、いつも以上に愛想を振りまいていて少し痛々しいらしいよ。『あいつって天然にホスト体質なんだからこれ以上やらなくてもいいのに』って橘が言ってたから」


「なんだか、可哀想なんだけど、突っ込む所が多過ぎて、なんて感想言っていいのか分からないわね。橘君も結構頑張ってくれたから口が悪いのも許せるし、玲人も今回の事で現実見た所もあるでしょう」






「椎名さん。お疲れ様!」


「橘くんもね♪お疲れ様。伊藤先輩達には本当に感謝だよね!生徒会に関わって良かったね~」


「うん。いつも遊びに付き合ってあげてて良かったよ。ホント」


「えーー!!付き合ってあげてるっていつものバトルの事~?いつも少しは怒ってるんじゃ無かったの?!」


「ううん。全然。唯、面白がってるみたいだから期待に応えていただけ。時には相手のニーズに応えるのも大事でしょう」


以前にせりかが、本庄に言った言葉と同じ言葉を橘から聞くと微妙な気持ちになった。


「いつも先輩に暴言吐くから、止めようと思ってたんだよ?!」


「でも止めなかったのは、ニーズがあったからでしょう?伊藤先輩も、もしかするとみんなを楽しませようと思ってやってるのかも?だけどね」


「私以外はみんな楽しんではいるかもね~。でも、私も知らない人達の中に溶け込み易かったかもしれない!…伊藤先輩の計算なのかな?」


「聞く気はないけど、そうかもしれないよね~。今回の事でも思ったけど意外と面倒見がいいんだよ。伊藤先輩って」


「そうなんだ……橘君と少し似てるよね」


「えー!それは少し嫌だなぁ」


「そう?良い意味でだよ」


「ホントにー?怪しいけど」


「ごめん。少しだけ違うかも…」


「やっぱり…まあ、いいけどね。体育祭もある事だし、これからまた頑張らないとね?」


「そうだね!私達が会長、副会長になった時に、どう面白く変えるかもこっそり考えちゃおうか~?」


「それ、いいね!兄貴に、変える時のコツを聞いてみるよ。何か先生とかの落とし所を知ってると思うんだよね」


「そういえば顧問の先生って会った事無いけど誰なの?」


「今は三年一組の先生で、来年は俺達のクラスの担任がやるよ」


「なんだか効率いいねー!無駄に探さなくても会長たちが、朝夕会うから、滅多に現れなかったんだね」


「効率的なのって気分が良いよね?」


「そ、そうね。まあ気分は悪くはないけど…」


全体的に指名制といい、顧問といい、割り切りすぎてるんじゃ…この学校とせりかは思ったが、伝統の重みの前にはひれ伏すより他なかった。



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