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せりかは昨日見たドラマの話を本庄としていた。
「あれ、出演の人が変わってからの方がぐっと良くなったよね~」
「そうだね。俺も最近の方がすきかなぁ。前のから面白かったけど…」
「でも、あれって絶対脚本書く人が何人もいると思うんだよね。すっごく話が好みの時とそうじゃない時の差が激しい感じなんだもん」
「ああいうのって、そういうもんなんじゃないの?同じ雰囲気だと見てる方も飽きちゃうでしょう?」
「まあ、そうなのかもね。いちいち確認してみるわけじゃないし、例え好みの人のじゃなくても見ちゃうもんね」
「今、映画もやってるでしょう?見に行った?」
「ううん。まだ行って無い。玲人と今度の休みでも行こうかって言ってるけど…」
「それに付いていったら迷惑かなぁ?真綾から連れてけって言われてるんだ」
「でも、そっちはデートでしょう?二人の方が良いんじゃないの?」
「それは、そちらと一緒で別に今迄も出掛けてたりしてたから特別に珍しい事でも無いんだよ」
「そう。いいわよ。玲人に一応聞いて見るけど嫌だって言わないと思うわ」
「そうだね。高坂は大らかだもんね」
「相変わらず人間観察に余念がないわね。本庄君は」
「半ぶん趣味だからね。一緒に行けるとなったら真綾が喜ぶよ」
「そうね。私も玲人と二人より楽しいかもしれないわね。場所とかは決まってるの?」
「こっちが無理やり付いて行くんだから、そっちの行く予定のところに合わせるよ」
「桜木町のワールドポーターズの上のところに行こうかと思っていたんだけど大丈夫?」
「ああ、あそこね。大丈夫。どうせだから、観覧車でも皆で乗っちゃう?」
「ああいうのはカップルが二人きりで乗るものじゃないの?」
「二人ずつ乗っても良いけどお嬢さん達は少し気詰まりじゃない?」
「別にそんな事もないわよ。積極的に二人きりになりたいって訳では無いけど」
「そう。でも、やっぱりみんな一緒の方が楽しいよね。高坂には俺から誘っとくから任せて貰っていい?」
「うん。じゃあ、玲人と話しておいて。私は後から玲人に聞くから」
それから数日後の土曜日の午後、四人で駅で待ち合わせをしていた。三人で真綾の習い事が終わるのをを待っていた。
「チケット玲人がネットで取ってくれたんでしょう?後ろの方にしてくれた?」
「ああ、せりか前だと気分悪くなるもんな。三時過ぎからのだけど、時間前に何か食べていくよな?」
「うん。朝遅かったから、お昼まだ食べてないし!本庄くんはもう食べちゃった?」
「いや、食べてないよ。真綾も食べてる時間無いと思うよ。みんなを待たせちゃってるから急いで来る筈だから」
「じゃあ、マーヤが来たら、ファミレスでもいくか?」
「ちょっと玲人!本庄君の前で、真綾さんの事呼び捨てにするのは悪いわよ!呼び方変えなさいよ」
「何で?止めた方がいい?」
「真綾が嫌がってないなら構わないよ」
「ほら、良いって!!せりも細かい事気にし過ぎだよ。マーヤもクラスメイトだし、美久とか沙耶とかと一緒だよ」
真綾が息を切らせて走って来るのが見えた。車で来たのだろうに此処まで乗り付けるのは憚られたのだろうかと思うと、玲人と違って真綾は流石本庄の婚約者なだけはあって神経細やかだと思う。
真綾は前に見せてもらった時の洋服の雰囲気とは違い、いかにもお嬢様といった感じのピンクのフリルのついたワンピース姿だった。デートだから?って思ったらピアノの習い事仕様らしく、着替えるつもりだったのに時間が押したので、そのままこちらに向かう事になったのでその格好らしいが、小柄で可愛らしい真綾にはとても似合っていてケースにいれたらまるでお人形さんの様だった。
「マーヤ遅いぞ!!みんな腹減ってんだから、飯食いにいくぞ」
「うん。分かった。ごめんなさ…」
謝罪の言葉を、言い終わらないうちに玲人に引き摺られて連れて行かれてしまった。遅れた事を気に病まない様にわざと乱暴に扱っているのだと分かる。しかし、最近玲人と真綾は本当に仲が良くなった。といっても喧嘩友達の様な感じでマーヤと呼ぶのもミツバチマーヤから取った玲人のつけた愛称だった。玲人は真綾の名前を初めて聞いた時にそのアニメの名前が浮かんでいたそうだ。せりりんは嫌だけど、マーヤは何と無くほのぼのとして可愛い感じがしていた。しかし、聞き様によっては呼び捨てに聞こえるので、本庄がどう思うのかと思っていたが、別に何も思うところは無いらしい。
真綾は玲人が引き摺って行ってしまったので本庄と後を歩いて行く。なんだかどっちがカップルだか分からない取り合わせだが、今日は友達と遊びに来ているんだからいいかとせりかも気にしない玲人を見習う事にした。
「高坂は、優しいよなぁ!真綾も嬉しそうだし、一緒に来て正解だったな」
「そうね。玲人とも随分打ち解けてくれて、少し意外だったわ」
「真綾は結構人見知りだし、人の好き嫌いも激しいから、意外な感じはするかもしれないけど、高坂みたいな人懐こい奴に人見知りなんて出来ないんじゃないの?」
「玲人は花見あたりから、結構真綾さんの事気に入ってちょっかい出してるでしょう?悪気ゼロなんだけど真綾さんの反応が面白いから楽しいみたいなのよね」
「高坂に強気に言い返すのって椎名さんくらいだから、新鮮なんじゃないのかな?」
「まあ、多分そうなんだけど、本庄君の前ではもう少し気を使うかと思っていたんだけど」
「何で?裏表無くていいと思うよ。誰かさんと親友なのに大違いだなって思っちゃうけど」
「玲人も忍は黒い!ってよく愚痴ってるけど、でも橘君とは相性がいいみたい。正反対の方が却っていいものなのかしらね?」
「椎名さんとは似た者同士だけど合ってるよね?」
「私はお腹は黒くないわ」
「あとで見せてもらってもいい?」
「本庄君が言うとセクハラ発言に聞こえないから不思議ね。だけど、勿論だめです!」
「真っ白いのを確かめたら、あの腹黒同盟から脱退させてあげるのに」
「相棒が脱退させてなんてくれないわよ。それに本庄君だって真っ白じゃ無いじゃないの!脱退したところで、グレーに成る位のもんじゃない?意味ないわ」
「流石、容赦無いね。楽しくなっちゃうのは俺も高坂と一緒かもな……」
「私達の反応が面白いってことでしょう?せんせいに敵うって思ってないから、諦めるしかないけどね」
「なんだか、真綾と高坂、写真撮られてるみたいだけど、雑誌の取材とかなのかな!?」
後から歩く私達は随分ゆっくりだった様で、真綾達はカップルと間違われてるらしい。二人とも目立つというか傍からみてもお似合いに見える。真綾はいつもの仕返しとばかりに為りきりを決め込んで玲人を少し困らせていたが、写真を撮って少し質問を受けたら解放されたようだ。
「本物の彼氏が後ろに歩いてるんだから、そっちと取材受けろよ!ハッチ!!」
「うわぁー!子供っぽい。その悪口って小学生の低学年レベルよ。でもハッチも好きだからハッチでもいいもんね~」
「何が付き合って初めてのデートですぅーなんてデタラメ何処からでてくるんだよ!?おかげで汗かいただろう!」
「面白かったじゃない!それに綾人じゃ、取材なんてスル―して受けてくれないもん」
「まあね。もしも雑誌とかに載ったりしたら親がうるさいしね」
「マーヤのところはうるさくないのか?親戚なんだろう?」
「うちは自由だもん。やりたい事とか興味を持った事はやりなさいって言われてるもの」
「道理で我儘娘な訳だ…」
「何か仰られたかしら?」
「いや、何でも無い。過ぎた事はもうどうでもいいわ…」
玲人、大らか過ぎだよと流石のせりかも思うが、本庄は感心したようだった。
そうしてやっと目的のファミレスに着いた。なんだか少しは歩く場所ではあったが、いろいろあって長い道のりだった。
Wデートもどき、次話も続きます。まだご飯も食べらていません…




