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幼馴染の親友  作者: 世羅
2章
23/128

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シリアスモードです。

玲人の様子がおかしい事に橘は気付いていた。元気に部活に励む姿だけ見ていればそんなには変わらない。


しかし今日のクラスでの玲人はかなりうつろだった。昨日も少しは感じていたが、今日は見逃せるレベルを超えていた。


親友といっても男同士そんなにべったりした関係では無い。二人とも振られてしまったけれどせりかを巡ってのライバル関係でもあった。しかし仲の良い幼馴染の二人に自分が割り込むような形になった事を玲人だけには申し訳なく思う気持ちも橘の中にはあった。


あまり立ち入るべきで無い事は百も承知だが、放っておけるのも友達として限界のところまで来ている。元来楽天的な性格の玲人が此処まで悩むのはせりかの事以外にありえない。何があったのかせりかに聞いてみたいが、それは玲人の傷口を広げる様に思えたので、ずは玲人本人に直接聞くのが一番近道だと考えて今日の帰りに話を聞く事に決めた。勿論、玲人が何も話してくれない場合はそれ以上踏み込まれたくないのだから、静観するしかないのだが…。




「あのさー最近、玲人珍しくちょっと落ちてるじゃん?どうかしたの?椎名さんと喧嘩とかあった?」


遠慮がちに重くならないように軽い口調で切り出した。


玲人は軽く目を瞠ったが「流石だな」と言って軽く苦笑した。


「やっぱり何か悩んでるんだ?良ければ相談に乗るけど……話したくなければ勿論いいんだけど…」


「いや、有難う。俺も最近、少しシンドクなって来てたから、ここらで忍に聞いてもらった方がいいかもしれない……実は、最近、せりが妙に優しいのが気になって…」


「はぁ~?!惚気のろけてんの?俺の傷口に塩塗らないでくれる?」


「違うんだ。嬉しくて浮かれてるとかじゃ無いんだ。うまく伝わらないかもしれないけど、優しいのは罪悪感からの裏返しに思えてくるんだ…」


「罪悪感って、クラスであまり近寄らせない事?それは俺も原因の一部だから悪いとは思ってるけど…その他にも何か有る訳?」


「それは、俺が今迄無神経過ぎたくらいだから少しっていうか大分寂しいけど、それだけが原因で優しいわけじゃない気がするんだ」


「…玲人は何か思い当たる事がある訳?」


「多分、好きな奴でも出来たんじゃないかと思うんだ……」


「それは…椎名さんは、まだ本庄の事好きだろう?それは、玲人も分かってる事じゃないの?本庄とどうこうなるって事は無いだろうし…まあ、普通の友達以上に本庄も椎名さんには甘いから誤解も、もしかしたらするかもしれないけど……」


「違う。本庄以外で気になる奴が出来て、俺に罪悪感を感じてるんじゃないかと俺は思ってる」


「本庄以外って、椎名さんは今でも確実に本庄の事が好きだよ。この間だって委員の仕事手伝って貰って嬉しそうにしてたし、それにそれ以外ってなると、普段は結構俺といるし、家に帰っても玲人と勉強で、塾とか行き出したりしてないでしょう?そうすると出会いが無いと思うよ。俺の把握範囲だとね」


「そうなると、忍の事がやっぱり好きなんじゃないかと思う」


「………何言ってるの?俺はもう振られてるんだよ?結構きっぱり断られたし!今はふっ切って友達なのに玲人も妙な事言い出すね。大体椎名さんがそう言ったわけじゃないよね?何を根拠にそういう考えに到った訳?」


「…消去法……」


「…あのさぁ、俺は結構玲人の事を本気で心配してる訳!それでその結論じゃ、なんだか、もう力が抜けて来たわ…」


「ごめん。理不尽な事を言ってるし、お前に対してもこんな憶測で無神経だって分かってるんだけど、俺、せりの事になると頭に血が昇っちゃって訳分からなくなって、自分でも堂々巡りになってる」


「玲人はさぁー、ずっと椎名さんしか見てないのが良く無いと思うんだよ…前にも言ったけど、思い詰め方が結構キツイから両方ともが辛くなるよ。…椎名さん以外で一番良いと思う人と付き合ってみるっていう考えにならない?一緒にいれば情が湧くっていったら年寄り臭いって言われるかもしれないけど…そういう風に無理にでもどうにか気持ちを他に向けた方が良いんじゃないかな?…でも、相手は慎重に選んでね。恨まれると結構女の人って恐いから!これは俺の実体験のマジな話だから。それだけは気を付けて後は、誠実に付き合えば玲人だったらうまく行くと思うよ。俺とは違うもん」


「何が違うか分からないけど、忍だって、せりに振られてから他の子と付き合って無いじゃないか!それで俺だけに勧められても納得出来ない」


「俺はさ、中学の時、結構年上のお姉さん達といいかげんな付き合い方をしてたら、ストーカーされて刺されそうになったんだ」


「……忍が?信じられないけど」


「それで、ちょっと女の人が恐くなって、まだ少し引き摺ってるから、椎名さんを忘れて無理やりっていうのお前に勧めといてなんだけど俺にはまだ時期が早いと思ってる。玲人はそういうんじゃ無いし、明るいから付き合っても相手の子も楽しくさせられるだろうし、自分も一緒に楽しくなれるトコあるだろう?そう考えると俺には無理だけど玲人はそうした方がいいんじゃないかと思ってるけど、押し付けられる意見でもないから聞き流してくれていいんだけど…解決法として思い付くのはその辺しか無いんだ……ゴメン」


「いや、真剣に俺の為に言ってくれてるのは分かった。出来るかどうかは別だけど、忍の言った事考えてみるよ」


「最近、玲人があまりにも虚ろだったから、心配になってさ…切り替えが出来る方法があれば、良いんだけど…部活とかに力入れるとかでもアリなんだけど、今でも充分に力入ってるから、気分的な逃げ道に成らないみたいだから、ここのところどうするのが良いか考えてたんだ。聞く前から椎名さん絡みなのは予想が付いてたから」


「そっか…。心配掛けたんだな、悪い!変な事も言ったし・・・」


「椎名さんが俺をっていう話?玲人が落ち込んでるの如何にかして浮上してくれれば気にしないから」


「わかった。ありがとう」


今迄、目を逸らして来たが、橘と話してみて玲人は根本的にせりかへの気持ちを諦める方法を見つけなくてはいけないのだと改めて認識させられ、自分が岐路に立たされている事をひしひしと感じた。どこの道を歩くのかは、まだ未知の領域だが、その道の選択肢に忍の言った事もあるのは確かだろうというのは判った。


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