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不倫の神様  作者: 天狗
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LOG.1|ミカを見た日|First Sight






神様って、いると思うか?






俺は、いると思う。


誰かが、


誰かを、


勝手に神格化した末路…だと思う。


つまり、

ただの人間だった人を、

勝手に神様扱いしただけだと思うんだ。


凄い人だ!


神様だ!


と、嫌な部分には蓋をして…


バイアスかけて、

他人を持ち上げてるだけだ。



だから神様は全員、

元はただの努力家の人間なんだろうな。




それを、


憧れや、執着を、のせて、


何度も作り直して…。



それが、神様なんじゃないかな。




…俺はさ、

今になって思うんだ。




この日、

俺は「選んだ」つもりでいた。




でも本当は……


この時点でもう、

ミカに選ばれていたんだと思う。







ミカと出会う前の俺は…

仕事に命を燃やしていた。




俺の経営する、

整体院は人気店だった。






整体の予約は常にパンパン。




口コミは勝手に増える。


金も増える。





その頃は確かに伸び盛りだった。




シンさん、凄いですね!



シンさん、教えてください!


シンさん!


シンさん!



周りのみんなが、

俺を見る目を変えた。





人生が、

ちゃんと上に向いている感覚があった。







ーーー







仕事の終わりはだいたい夜10時すぎ。


そこから、

いつものバーへ歩いて行く。




そのバーは俺のお気に入りだった。




飯がうまい。

雰囲気がいい。


カウンター越しに

他愛もない話ができる。




仕事でパンパンになった頭を、

バーカウンターでリセットする。




そのルーティンが好きだった。






もちろん、

この日も呑みに行った。








カウンターのいつもの席につく。



一番、端の席。




マスターが

「今日もお疲れ。」と

麦焼酎を出してくれる。




マスターの店は、

住宅街の中にぽつんとある


情報の中心地だ。






マスター自身は、


見た目50手前とは

思えないほどイケおじで、


困ったことがあれば、

ここに来てマスターに相談する。


この街の正解ルートだ。







だから今日も、






シン

「マスター、俺インスタ伸ばしたいんだ。」

「なんか、モデルの知り合いとかいない?」






マスター

「モデル? 珍しいこと言うなぁ」






シン

「ガチだって。」

「店も伸びてきたし…」

「撮りたいんだよ、インスタで映える動画。」

「で、何万再生もブン回してさ!」

「集客、もっと頑張りたいんだ!」






マスターが少し悩む。






マスター

「うーん、モデルなぁ…」

「……まぁ、いるよ。」






シン

「おっ」






マスター

「ミカっていう子なんだけど、」






その瞬間だった。




マスターがスマホを取り出し、

画面をこちらに向けた。




そこに写っていたのは、

事務所の宣材写真の

完璧すぎるほど綺麗なミカだった。






息が止まった。






正直に言う。






この時、

「綺麗だ」とか

「タイプだ」とか


そういう感想は出てこなかった。






ただ一つだけ、

はっきり思ったことがある。









この女に、触れたら、終わる。










画面越しなのに、

ミカの視線が脳に刺さって動けなかった。



それに何故か、

懐かしい感じがした。


初めて会った気がしない。




何回も会ってる。


何回も、何回も。


そんな気が、したんだ…。






マスター

「現役モデルなんだよ…!」

「恋愛リアリティショーにも出てたんだよ!」

「番組名は…忘れたけどな!」







名前も、肩書きも、

その時はどうでもよかった。





ただ、


危険だと分かっていても、

何度だって、この人を選ぶ気がした。



この人と、一緒になりたい。







本気で一目惚れだった。








マスター

「ただし、条件がある」






空気が一気に現実に戻る。




マスター

「この子、俺の親戚なんだよ。」





シン

「…あぁ」





マスター

「……でよ、」

「撮影以外で会うな。」

「連絡も俺を通せ。」

「直接交換は禁止だ。」

「ミカの事務所は管理が厳しい」

「それに俺も心配だ。」

「頼むぞ、シン」






シン

「……あぁ」







マスター

「条件守ってくれるなら…」

「今、ここに呼んでみるぞ?」

「LINEしてみるか?」







シン

「……あぁ」







マスター

「聞いてんのか!?」







シン

「あぁ……聞いてるよ……」

「え?今呼ぶの!?」







マスター

「そうだっつの!」

「……ったく!」

「LINEしてみるぞ。」








今から会えるのか。


あんな美女と……!





ミカが綺麗すぎて、

脳から映像が離れてなかった。




ごめんな、マスター。


俺はもう、

条件を守れる自信が無いや……。





この瞬間から、

俺の歯車は静かに狂い始めた。





この出会いが、




俺の人生を、


俺の世界観を、


片っ端から塗り替えていくことになる。




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