枯れ葉のいろは
しいな ここみ様 主催の
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秋のホラー企画【いろはに】
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の参加作品(テーマは”枯葉”と”月”、ついでに”いろは”)になります!
文字数(空白・改行含む):1972字
文字数(空白・改行含まない):1682字
に出来ました!
(;´・ω・)<でも、ホラーだから気を付けてね?
・・ざわ・・ざわ・・
風に吹かれ、無数の枯葉が地面を擦る音が、ひとつの呻き声のように夜を満たしていた。
その夜、とある廃村に忍び込んだのは、私を含め三人の同級生だった。
肝試しだと誰かが言い出したのだ。
月が異様に赤い夜だった。
「この辺りさ、戦後すぐに一家心中があったらしい」
薄暗い懐中電灯を振りながら、”俊”が笑う。
「子どもだけ生き残ったんだって。でも見つかったとき、口いっぱいに枯葉を詰めこんで・・“歌”を歌ってたらしい」
いつもの様に、ふざけて言ったに過ぎない。
「枯葉を口いっぱいに入れて歌えるワケないだろ?・・デマカセ言うなよ、なあ?」
いつも強気な、”亮”が鼻で笑う。
「・・親が死んで、その子は食べるモノが見つからなかったのかも知れない…」
戦後の混乱の中、何があったのかは想像の域を出ない。
「・・周り中にある、枯葉以外は…」
三人の足が落ち葉を踏みつける。
季節は秋から冬に移り変わろうとしていた。
また繰り返す、夏の残り火を感じさせる短い秋。
だが、私の背筋は冷えていた。
目的の場所に近付くほど、少なくなる口数。
「・・ここだ…」
立ち入り禁止のローブを潜り、かつて村を治めていた者の屋敷跡に入った。
ひび割れた木の板、破れた落ちた障子。
廊下は腐り、畳は水気を含んで沈む。
壁一面に落書きのような黒い染みが広がっている。
ふと気付くと、外のざわめきが強まっていた。
まるで屋内にまで枯葉が吹き込んでいるように。
「おい、音・・変じゃね?」
後ろを歩いていた、亮が立ち止まった。
確かに、葉擦れの音に混じって「くちゃ、くちゃ」という咀嚼音が聞こえる。
俊と亮が顔を見合わせた。
「――いろはにほへと、ちりぬるを・・」
葉擦れの音に、低く歌う声が混じった。
廊下の奥に、小さな背中がしゃがみ込んでいた。
子どもだ。
髪は乱れ、薄汚れた赤い着物のような布切れをまとっている。
足元には山盛りの枯葉。
そして夢中でそれを食べながら、口を動かしていた。
「・・いっしょに、うたお? いっしょに、たべよ?」
振り向いた顔に月光が射した。
枯れ枝のように、あり得ないほど細い体。
真っ暗な眼窩の奥で赤い光が揺れる。
唇の端から、枯葉が濡れた塊となって垂れていく。
家全体がざわめいた。
「うわああっ!?」
俊が叫び、逃げようとした瞬間、足首にからみついた葉の束に引きずり倒された。
壁の染みがざわざわと蠢き、天井からも、床の隙間からも、無数の枯葉が吹き出してくる。
それらは意思を持つように渦を巻き、私たちの口や鼻に飛び込もうとする。
「うげっ!?・・ぐぉぉっ!?」
俊の口に、枯葉が滝のように流れ込み――喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
「がぁあっ!?・・・わかよ・・たれそ・・・つね・・ならむ・・」
俊の最後に叫んだ口が、詰め込まれた葉によって強引に歌わされる。
――違う――
口を奪った葉が歌っているのだ。
「な、なんなんだよっこれはっ!?・・ぐわっ!?」
亮も私の腕を掴んだまま、葉に咳き込み、倒れ込んだ。
「た、助けて…ぐぅえっ!?・・・うゐのおくやま・・けふこえて……」
亮も喉をふさがれ、嗚咽とともに"子どもと俊の歌"に声を合わせた。
「うわぁぁぁぁぁっーーー!?」
私は亮の腕を振りほどき、必死に廊下を駆け抜けた。
背後で「くちゃ、くちゃ」という音が合唱のように響く。
戸口を蹴破り外に飛び出すと、血の様に真っ赤な月が世界を覆っていた。
その光の下、村の全ての地面がざわめいていた。
庭も道も畑も、すべて"枯葉"に覆われ、人の形を作って立ち上がっていく。
顔のない葉の人影が、ゆっくりとこちらに首を傾けた。
彼らも同じ歌を口ずさんでいる。
「――あさきゆめみし、ゑひもせす……」
耳を塞いでも無駄だった。
耳を塞いでも、声は頭蓋の奥で鳴り響いた。
世界が“いろは歌”と"咀嚼音"に満ちていく。
逃げ場などない。
赤い月が落ち葉を照らし、腐った葉の匂いで満たされていく。
私は最後に、自分の口の中がざらついた感触を覚えた。
気付けば私の口も動いていた。
――いつの間にか、頬張っていたのだ。
ぱさり、ぱさりと。
無数の枯葉を咀嚼しながら。
「――ん」
最後の一音を、赤い月が見届けた。
(了)
田舎は枯れ葉や落ち葉の掃除が大変なのです・・
ウチのモノじゃないのに大量に・・(。-_-。)←マテ
(追記)
小池ともか様の素晴らしいご意見を受けて、全体1682 (いろはに)文字数にすることが出来ました!(≧▽≦)<ありがとうございます!




