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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

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枯れ葉のいろは

しいな ここみ様 主催の

https://mypage.syosetu.com/2175055/

秋のホラー企画【いろはに】

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2175055/blogkey/3500016/

の参加作品(テーマは”枯葉”と”月”、ついでに”いろは”)になります!

文字数(空白・改行含む):1972字

文字数(空白・改行含まない):1682字

に出来ました!


(;´・ω・)<でも、ホラーだから気を付けてね?

・・ざわ・・ざわ・・


風に吹かれ、無数の枯葉が地面を擦る音が、ひとつの呻き声のように夜を満たしていた。


その夜、とある廃村に忍び込んだのは、私を含め三人の同級生(大学生)だった。


肝試しだと誰かが言い出したのだ。


月が異様に赤い夜だった。


「この辺りさ、戦後すぐに一家心中があったらしい」


薄暗い懐中電灯を振りながら、”俊”が笑う。


「子どもだけ生き残ったんだって。でも見つかったとき、口いっぱいに枯葉を詰めこんで・・“歌”を歌ってたらしい」


いつもの様に、ふざけて言ったに過ぎない。


「枯葉を口いっぱいに入れて歌えるワケないだろ?・・デマカセ言うなよ、なあ?」


いつも強気な、”亮”が鼻で笑う。


「・・親が死んで、その子は食べるモノが見つからなかったのかも知れない…」


戦後の混乱の中、何があったのかは想像の域を出ない。


「・・周り中にある、枯葉以外は…」


三人の足が落ち葉を踏みつける。


季節は秋から冬に移り変わろうとしていた。


また繰り返す、夏の残り火を感じさせる短い秋。


だが、私の背筋は冷えていた。


目的の場所に近付くほど、少なくなる口数。


「・・ここだ…」


立ち入り禁止のローブを潜り、かつて村を治めていた者の屋敷跡に入った。


ひび割れた木の板、破れた落ちた障子。


廊下は腐り、畳は水気を含んで沈む。


壁一面に落書きのような黒い染みが広がっている。


ふと気付くと、外のざわめきが強まっていた。


まるで屋内にまで枯葉が吹き込んでいるように。


「おい、音・・変じゃね?」


後ろを歩いていた、亮が立ち止まった。


確かに、葉擦れの音に混じって「くちゃ、くちゃ」という咀嚼音が聞こえる。


俊と亮が顔を見合わせた。


「――いろはにほへと、ちりぬるを・・」


葉擦れの音に、低く歌う声が混じった。


廊下の奥に、小さな背中がしゃがみ込んでいた。


子どもだ。


髪は乱れ、薄汚れた赤い着物のような布切れをまとっている。


足元には山盛りの枯葉。


そして夢中でそれを食べながら、口を動かしていた。


「・・いっしょに、うたお? いっしょに、たべよ?」


振り向いた顔に月光が射した。


枯れ枝のように、あり得ないほど細い体。


真っ暗な眼窩の奥で赤い光が揺れる。


唇の端から、枯葉が濡れた塊となって垂れていく。


家全体がざわめいた。


「うわああっ!?」


俊が叫び、逃げようとした瞬間、足首にからみついた葉の束に引きずり倒された。


壁の染みがざわざわと蠢き、天井からも、床の隙間からも、無数の枯葉が吹き出してくる。


それらは意思を持つように渦を巻き、私たちの口や鼻に飛び込もうとする。


「うげっ!?・・ぐぉぉっ!?」


俊の口に、枯葉が滝のように流れ込み――喉を鳴らしながら飲み込んでいく。


「がぁあっ!?・・・わかよ・・たれそ・・・つね・・ならむ・・」


俊の最後に叫んだ口が、詰め込まれた葉によって強引に歌わされる。


――違う――


()()()()()()()()()()()()()()()


「な、なんなんだよっこれはっ!?・・ぐわっ!?」


亮も私の腕を掴んだまま、葉に咳き込み、倒れ込んだ。


「た、助けて…ぐぅえっ!?・・・うゐのおくやま・・けふこえて……」


亮も喉をふさがれ、嗚咽とともに"子どもと俊の歌"に声を合わせた。


「うわぁぁぁぁぁっーーー!?」


私は亮の腕を振りほどき、必死に廊下を駆け抜けた。


背後で「くちゃ、くちゃ」という音が合唱のように響く。


戸口を蹴破り外に飛び出すと、血の様に真っ赤な月が世界を覆っていた。


その光の下、村の全ての地面がざわめいていた。


庭も道も畑も、すべて"枯葉"に覆われ、人の形を作って立ち上がっていく。


顔のない葉の人影が、ゆっくりとこちらに首を傾けた。


彼らも同じ歌を口ずさんでいる。


「――あさきゆめみし、ゑひもせす……」


耳を塞いでも無駄だった。


耳を塞いでも、声は頭蓋の奥で鳴り響いた。


世界が“いろは歌”と"咀嚼音"に満ちていく。


逃げ場などない。


赤い月が落ち葉を照らし、腐った葉の匂いで満たされていく。


私は最後に、自分の口の中がざらついた感触を覚えた。


気付けば私の口も動いていた。


 ――いつの間にか、頬張っていたのだ。


ぱさり、ぱさりと。

 

無数の枯葉を咀嚼しながら。


「――ん」


最後の一音を、赤い月が見届けた。


挿絵(By みてみん)


           (了)

田舎は枯れ葉や落ち葉の掃除が大変なのです・・

ウチのモノじゃないのに大量に・・(。-_-。)←マテ

(追記)

小池ともか様の素晴らしいご意見を受けて、全体1682 (いろはに)文字数にすることが出来ました!(≧▽≦)<ありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
 恐い~!  考えてみたら、すごい量の枯れ葉って、お掃除的な意味合いは勿論、存在感というか……雰囲気そのものが、かなり恐いですよね。特に、それが夜ともなると……(>_<) 〝いろは歌〟と〝咀嚼音〟と…
あなたは素晴らしい作家ですね。謎と恐怖の描き方が気に入りました。想像力が豊かですね。
 そっちが本体!  そしたら「ひとり」ではなく、「あたり一帯」が恐怖の対象になるのですよね。  それに気づいた絶望感。味わいたくないものです。
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