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第2話 クロミスト川の“沈む影”

セルヴィナス、ギルド「星灯騎士団」の酒場

朝、木のカウンターでスモークティーを眺め、わたし、アリア、ため息。

数年悪霊と戦ってきたけど、昨日も血まみれの花嫁で大暴れ。魔力神クラスなのに、制御ミスで光の魔法がチカチカした!

「マジありえないんだけど! 除霊師って、こんな疲れる生活なの!?」

カウンター向こうで、リオナ先輩がティーカップ掲げてニヤニヤ。

「よぉ、神ちゃん! またグチグチ? 魔力神クラスでもポンコツだな。ほら、新着依頼!」

リオナ先輩、革の依頼書をドサッと投げる。

「クロミスト川の『沈む影』。毎夜、水面で泣き暴れる強力な悪霊。アリアの魔力神クラスでなきゃ祓えないやつだ。報酬はスモークフィッシュ一個、20シルバー。クリアしたら報告な!」

「スモークフィッシュ!? 市場の安売りじゃん! フルーツタルトにしてよ!」

酒場の隅から、カイトがクールに近づく。黒髪がサラッと揺れて、ムカつくくらいカッコいい。

「アリア、その悪霊、俺でも祓える。神ちゃんとか大げさだろ。」

「うっさい! カイトなんかより、わたしが華麗に祓うから!」

リオナ先輩、ゲラゲラ笑いながら肩をバシッ。

「いいね、神ちゃんの意気! でも、川の瘴気はヤバいぞ。溺れんなよ~!」

酒場は冒険者の笑い声とカップの音で騒がしい。

(ライバルだらけの除霊師生活、ほんと疲れるんだけど……)


クロミスト川、夜

セルヴィナスの外れ、紫の瘴気が漂うクロミスト川。水面がボコボコ泡立ち、魔光ランプがチカチカ。めっちゃホラー!

わたし、青いローブの裾握り、震える足で岸辺に立つ。ピンクの髪の星形リボン、緊張でプルプル。

「マジありえないんだけど! 夜の川、怖すぎるって!」

水面に、少年の悪霊が浮かぶ。顔、半分水没。白い目がギロギロ、水の泡がポコポコ。瘴気の紫の波がユラユラ、沈む影がグニャグニャ伸びる。

「助けて……助けて……!」

「ひっ! やばい、めっちゃやばい! 沈む影ってガチ!?」

杖を構え、水の魔法を展開。青い水の渦がふわっと浮かぶけど、制御ミスってポチャポチャ飛び散る。

悪霊がググッと浮上し、水の泡がビュッと飛んでくる!

「やだ、水かぶらないで! マジありえない!」

浄化の呪術を急いで展開! 青い光の結界が泡を弾くけど、制御下手で結界がグラグラ。

悪霊の声、低く唸る。

「裏切った……親友の、誓いを……!」

(リオナ先輩に笑われたくない! カイトに負けたくない!)

深呼吸して、杖握り直す。

「ねえ! 助けてって、なに!? 誰に裏切られたの!? 話してよ!」

悪霊、ピタッと止まる。水没の顔がじーっとわたしを見て、ぽつぽつ。

「あいつと、冒険して……助けてほしかった……でも、置いていかれた……」

(友情のドロドロ系!? わたし、こういうの苦手なのに!)

でも、放っとけない。結界の中で一歩踏み出し、言う。

「そっか。すっごく辛かったよね。でも、冒険したかった気持ち、めっちゃ素晴らしいよ。それ、ちゃんと覚えてて。」

悪霊の目、ギラギラが少し柔らかくなる。

「わたしの、友情……覚えてて、いいの……?」

「うん、絶対! そんな熱い気持ち、忘れられないもん!」

突然、悪霊の瘴気がドカーンと爆発!

「まだ、許せない……!」

水の泡が津波みたいに襲ってくる! 瘴気が紫の渦になって川を包む!

「うそ、話したのに!? こうなったら、魔力神クラスの力でぶっ飛ばす!」

杖を振り上げ、浄化の呪術を全開! 青い光の結界が川を覆い、光の矢がビュンビュン!

泡がバチバチ弾け、瘴気の渦がゴオオと溶ける。

「友情、ちゃんと持ってけよ!」

光の矢が悪霊の胸を貫き、体が光の粒に変わる。悪霊、かすかに微笑む。

「ありがとう……わたしの、友情……」

悪霊がスッと消え、川が静寂に包まれる。


ギルド「星灯騎士団」、クリア報告

夜遅く、ギルドのカウンターにドロドロのローブで戻る。

「沈む影、除霊完了! はい、報告!」

受付の姉貴、ニコッとハンコを押す。

「アリア、さすが魔力神クラス! あの悪霊、アリアじゃないと祓えなかったよ。レート、Sランクキープだね。はい、報酬のスモークフィッシュ!」

ぽんっとスモークフィッシュ(20シルバー、硬め)。

「うそ、スモークフィッシュ!? しょぼすぎ! フルーツタルトがいい!」

リオナ先輩、ワイン片手にゲラゲラ。

「神ちゃん、いいじゃん! スモークフィッシュ、噛めば美味いぞ! ま、わたしなら半分の時間で祓うけど!」

カイト、クールに一瞥。

「次は俺が受ける。アリア、負けないぞ。」

「うっさい! カイトなんかより、わたしの方が派手に祓うから!」

酒場は冒険者の笑い声で騒がしい。

スモークフィッシュかじりながら、ぼやく。

「マジありえない……何年除霊しても、報酬しょぼいし、悪霊増えるし……」

(でも、あの少年、友情の記憶、持ってたんだよね。忘れちゃダメだな)

依頼板に新着。

「古墓地の『ささやく骨』。報酬、スパイスパン20シルバー」

「スパイスパン!? またしょぼい!? フルーツタルト食べたい!」

――何年除霊して来た? いい加減、悪霊増やすのやめてよね!


作者のひとこと

悪霊の未練、友情とか、めっちゃ人間らしい。

でも、わたしには怖さと貧乏の地獄。リオナ先輩、フルーツタルト奢って!

――明日も、除霊だよ!


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