3/過ごす
──3時間目の終わりを示すチャイムが鳴る。わいわいがやがや。
「…それでさ、13文字の追加曲なんだと思う?」
「えー…13文字って結構長くない?」
「長い」
「私は思いつかないや…叶斗くんは?」
「『マネジャサティスファイサー』かと思ったんだけどVo.が有無だから3Dが成り立たなくてさ…『ハピエンプリンセスアサシン』は僕が好きなんだけど普通に対象年齢4歳は無理だし…」
小林鈴々音。成績優秀で(のちにオール5であることが判明する)、容姿端麗。声も可愛い。誰にも優しいが少しヲタクっぽく、モテないわけがない。
僕の想い人であり、教室後ろ角の席、僕の後ろの席で隣が陽キャの男で鈴々音からして話しにくい…と、僕の文章力で口頭では伝えられないのだが、要は席の関係で授業の休み時間など合間に話せる。おお神様……席運をお授けくださり感謝の限りでございます……!
話題はというと、大抵共通の趣味のVocalbot曲やスマホ音ゲー、主にプロミラの話。鈴々音はBirdseyeallさんみたいな涼しげな曲をよく聴くらしい…あかるいね←ごうりきティガーさんみたいな病み曲ばっか聴いてる人
まぁだから、こんな僕とは多分趣味友以上にはなれなくて。告白とかはしないで上手く大学生とかまで関係続けてお酒のノリで「いや実は好きだったりしたよ〜」的なこと言ってほぼ記憶にも残らなければいいかなと思っている。
「〇〇は?」「1、2、3、4、、14文字じゃね?」「え?あ、ほんとだ…間違ったみたい」などと会話を交わす。数え間違えて照れたような笑み。可愛すぎて記憶が飛ぶ…!
「…親はもう家出てる、と」
記憶が飛ぶと言って本当に場面を飛ばす奴がいるか、とお叱りを受けそうだが、記憶がないものは仕方ない。
仕方ないのでコミュを開く。ルシフェルとふう、管理人のさよはもういるみたい。この数週間で主にふうについての色々があった。
まず、ふうもプロミラ民だったこと。
ふうが偶然僕らと同じ市にいたこと。
発言内容が男すぎて性別偽ってると思われていたふうがコミュの新機能の音声通話をしてみたら超ロリータ声だったこと…はどうでもいいが、その後ルシフェルとふうがリアルで会って付き合い出したのはどうでもよくないだろう。どのくらいまで進展してるんだろう…とは流石に聞けないけど。いや聞きたいけど。
…てか、ほんとに仲良くやってんな。共通の趣味からここまでいけるなら僕と鈴々音もワンチャン…ないか。
いまいち見切りのつかない思いを胸に、親が帰るまでの約1時間通話に入って宿題をするのであった。