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今ならなんと!大特価セール開幕!

――さて、問題はここからだ。


ミレイアが元の姿に戻ったことで、二人の未来に新たな壁が立ちはだかった。


結婚。


いや、普通ならここで「愛があれば身分の違いなんて!」と劇的な展開になるかもしれない。だが、残念ながらここは貴族社会。結婚は個人の感情だけで成立するものではなく、家同士の繋がり、血筋、政治的な関係……そういったものが複雑に絡み合うシステムの中にある。


ミレイアは由緒ある伯爵令嬢。

エリオットは下級騎士の家の出身。


身分の違いは、たとえ互いがどれほど想い合っていようとも、簡単には超えられない壁になり得る。


先程まで微笑み合っていた二人は、互いを見つめ合いながら、目に見えない壁の前で立ち止まっていた。


ミレイアが小さく唇を噛む。


エリオットも何か言おうとして、しかし、言葉を選んでいるようだった。


……おいおい、せっかくここまで来たのに、そんな顔をするなよ。


私は腕を組み、大広間を見渡す。周りの貴族や召使いたちが、二人を心配そうに見守っている。


そして、私は悟る。


――なるほど、ならば。


私は一歩前に出た。


「えー、ではここで、ちょっと皆様にお伝えしたいことがありまーす。」


大広間の視線が、一斉に私へと集まる。


「エリオットはミレイアを心から愛しています!そしてミレイアもまた、エリオットを愛している!!」


ここで拍手が起こる。いや、私は演説のプロではないが、こういうときは勢いが大事なのである。


「しかし!ここで問題が!ミレイアは貴族!エリオットは騎士!このままでは結婚に!障害が…残る!」


ここでざわめきが起こる。いや、知ってるんだよ、皆。私が言うまでもなく、わかってるんだろう。でも、誰も動こうとしないから、私が言うしかない。


「そこで今から!エリオット・ロシュフォール、大特価セールを開催しまーす!」


――さあ、売り込みの時間だ!


私は大広間の中央に立ち、手を広げて堂々と宣言した。


「さあさあ皆様、お待たせいたしました!本日ご紹介するのは、『エリオット・ロシュフォール』! 」


本人は何やら不安そうに目を伏せているが、そんなことは気にしない。今はプレゼンの時間なのだから!


「まずはこちらをご覧ください!」


私はエリオットの肩をばしっと叩く。彼は僅かに揺れたが、耐えている。偉い。


「なんと!文武両道の超ハイスペック騎士!鍛え抜かれた身体に、冷静沈着な判断力、そして忠誠心と誠実さを兼ね備えた最上位クラスの王道イケメンです!」


周囲からざわめきが起こる。


「おお……!」と感心する声が漏れる。うんうん、みんなわかってるじゃない。


「さらに!料理も掃除もこなせる家庭的な一面まで搭載!いやもう、これは一家に一人いたら最高じゃないですか!? 今すぐお手元に欲しいですよね!? 」


私は観客に向かって満面の笑みを浮かべながら煽る。

エリオットは「い、異世界の方……?」と戸惑っているが、気にしない。


「しかもですね! ただの騎士ではない! 今回の目玉ポイントはこちら!!」


私は右手を高らかに掲げる。


「貴族の皆様のご家庭に、なんと!養子として設置可能!!」


この瞬間、大広間の貴族たちが一斉にどよめいた。


「今なら!特別に!期間限定!!!養子に迎えた暁には、ミレイア・ブランフォード伯爵令嬢との縁組特典付き! ブランフォード家のご縁もセットでお届け可能です! 」


「「「な、なんだと!!?」」」


「どうですか? こんなチャンス、滅多にありません!ご希望の方は 今すぐご応募を! 」


――静寂は、ほんの一瞬だった。


「誰もいないならば、我がアッシュフォード家がエリオット君を迎えよう。」


今までの償いなのか、責任を感じているのか。まず声を上げたのは、アッシュフォード伯爵だった。


「…いや、待て!我がメロウ家の方が適任だ!」


「エリオット殿、ぜひ我がカンネンベルク家へ!どこぞの貧乏貴族より、我が家は名門ですぞ!」


「エリオット殿を迎えたいのはどこも同じだ!」


「うちは立派な家柄に相応しい教育を施すと約束しよう!」


――立候補、続々!


先ほどまで沈黙していた貴族たちが、次々と手を挙げ始める。

しかも、その中には名の知れた大貴族や名門貴族まで含まれているではないか。


私はすかさず動いた。


「受付はこちらでーす!」


手をぴしっと上げる。


――ここに『エリオット貴族養子受付』窓口を開設!


「まずは家名と希望の理由をどうぞ!なお、本人の意向もございますので、誠意あるご提案をよろしくお願いしまーす!」


いつの間にか、私の横に紙とペンを用意する使用人たち。何気に机まで用意されている。


え、なんでこんなに準備がいいの?まさか、みんなこの展開を予想してた……?


「異世界の方、これは一体……?」


エリオットが戸惑いながら尋ねてくる。


「だって貴族にならないと、ミレイアと正式に結婚できないんでしょ?」


私は胸を張る。


「なら、最高の家を見つけて、一番良い条件で貴族になっちゃいなよ!」


「……な、なるほど?」


呆然とするエリオットの隣で、ミレイアは顔を真っ赤にしていた。


「さあ皆さん、どうぞ順番に!希望者多数の場合はオークション形式になる可能性もありますので、早めのご決断を!」


貴族たちが真剣な表情で順番待ちを始める。


エリオット、これでお前も貴族入り確定だよ!

通販番組風にプレゼンするって最高に楽しいね!!

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