表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/61

エピローグ

 例の建国パーティーの翌年六月。ある、よく晴れた日のことである。

 

 今日は王となったクロードと、王女クリスティーネの結婚式だ。


「お二人ともとても立派でいらっしゃるわ。この国もやっと安心ね」

「ここまで随分長かったね」


 クロードは真っ白な正装に身を包み、国民に向けて堂々と手を振っている。空いた片手では、クリスティーネをしっかり支えていた。彼女は金糸で美しい刺繍の施された、豪華なウェディングドレスを着ている。クリスティーネもまた、笑顔で国民に手を振っており、この国に歓迎されていた。とてもお似合いの二人だ。


 クロードは建国祭が終わってすぐ、十一月になる前に立太子した。そして昨日、クロードは王になった。王位継承の儀式が、無事に終わったのだ。

 

 ニコラは当初の約束通り、大公になった。領地で暮らしながら、魔法の研究振興に力を入れていくらしい。彼は長かった前髪も切り、とても雰囲気が変わった。人の目をしっかり見て話すようになったし、どこか吹っ切れたような、清々しさがあった。


 ヒロインであったマリアは、償いとして地方を回り、人々を癒している。あれから随分と態度が変わり、人が変わったように大人しくしているらしい。今更になって魔法の才能が開花していっているようだから、もしかしたらニコラとの間に、何かがあったのかもしれない。

 

 ヴァレリーは結局、帝国に見捨てられた。動かぬ証拠もある。結局、この国で終身刑に処されることになった。

 ちなみに怪しげな競合店パティスリーエルサには、やはり帝国からの資金が流通していたことが判明した。アデルをおびき寄せて嵌めるための、罠だったようだ。様々な法律に抵触していたようで、無事潰された。

 

「アデル、体調は大丈夫?」

「大丈夫よ。今は安定期だもの。少しは動いた方が良いわ」


 国一番の大聖堂での挙式に参加した後、アデルたちは新王と新王妃のパレードを見ていた。ユリウスが気遣って、ショールを羽織らせてくる。アデルはいま妊娠六ヶ月。妊娠してからと言うもの、ユリウスは随分過保護になっているのだ。


「先月、私たちの結婚式にも参加させちゃったし、無理していないか心配よ」

「エリーゼ、大丈夫よ!ああ、いま、ポコポコ蹴ってる。この子も大丈夫だって言ってるわ」

「ふふふ、可愛いわね!!」


 隣で寄り添うエリーゼとアレックスは、先月結婚式を挙げたばかりの新婚だ。今日が終わったら、新婚旅行に行くのだと言う。とても仲良しの二人は、アデルとユリウスにとっても、共通の大切な友人である。

 今後は、家族ぐるみの付き合いになるだろう。子供同士が同級生になったりすることも、もしかしたらあるかもしれない。


 パティスリーアデルは順調だ。アデルが一時期、悪阻でケーキの焼ける匂いが一切ダメになってしまい、それはもう大変だったが。それ以外は全く問題ない。今月出している季節メニュー、カシスムースとチョコレートガナッシュを合わせたケーキも好評だった。次は色とりどりのマカロンを出そうと思って、試作を重ねているところだ。


 アデルは隣に立つユリウスを見た。もう隣にいるのが当たり前になった、美しい人。夜会で偶然会ったあの日が、遠い昔のことのようだ。


「ねえ、ユリウス」

「何?」

「今日は、良い天気で本当に良かったわね」

「ああ、そうだね」

「本当に良かったわ。何もかも、上手くいって……」

「ああ。君のお陰だ、アデル」


 隣にいるユリウスに、小さく笑いかけられる。アデルはとびっきりの笑顔でユリウスに言った。


「私、ユリウスと結婚できて幸せよ」

「俺も、君と……例え契約でも、結婚して良かったと思ってるよ」

 

 二人は、そっと手を繋いだ。

 シナリオが終わっても、物語はずっと続いていく。




 

 

 fin.

これにて終幕です。読んでいただきありがとうございました。


新連載のお知らせです。

★「薄幸令嬢、第二王子に拉致される。〜彼とクーデター起こします〜」

https://ncode.syosetu.com/n4095jl/

主役二人が国を立て直していくお話です!宜しくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ