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第79話 バレンタイン狂想曲(ラプソディ)

第79話 バレンタイン狂想曲(ラプソディ)


(セント)バレンタインデー。2月14日に祝われ世界各地で男女の愛の誓いの日とされる。(ウィキペディアより抜粋)


さて、この物語でこのようなイベントで最も活躍する人といえば・・・

「さぁ♪このチョコレートで島岡先輩のハートを狙い撃ちよ♪」

勿論、我らのエンジェル(?)大倉である。個人的に私のお気に入りのキャラクターでもある。

そんな彼女の手元には、2つのボールと攪拌機があった。どちらのボールにも溶かしたチョコレートが入ってあり、まさに手作りチョコ作成の真っ最中といったところである。

そして机には・・・なんだか怪しげなビンが・・・ぱっと見て、バニラエッセンスにも見えないこともないが、彼女が持つと何だか違う物に見える。それを片方のボールに一滴入れる。一瞬煙みたいな物が見えたが、気にしない。そのまま丁寧に混ぜる。そのときである。

「里美~、ちょっと手伝ってくれない。」

店舗から母親の声が聞こえる。ちなみに彼女の家はコーヒー専門店。といっても喫茶店ではない。コーヒー豆を売る小売店である。いつも家の中はコーヒーのいい香りが漂う。

「は~い♪ちょっとまってね~♪」

大倉は大きく返事をし、手早く混ぜ終えるとそのまま母親の方へ向かう。これが悲劇(喜劇?)の幕開けになるとは知らずに・・・


日が変わって2月14日。

この日は一部の女子生徒が気持ちを込めたチョコレートを持ち、多くの女子生徒が大量の義理チョコを持って登校する。飢えた男共はその限られた心のこもったチョコレートを、誰が貰うかで一喜一憂する。まぁ、義理は義理で貰って嬉しい物だが・・・


放課後・・・

ホルンの野郎たちは音楽室に集まっていた。そしてチョコレートを頬張っている。

女子部員が各自で持ち合ったチョコレートを音楽室中央のグランドピアノの上に置いていたのだ。

安いブロックチョコからちょっと高そうな包装に包んだチョコまで様々だ。

「ほんま、今日はチョコレートの日やな。」

「島岡先輩、そんなに食べて太らないんですか?」

「大丈夫や。甘いモンは別腹やからな。」

「お前は甘いモン好きやっもんな。」

「でもあれやな、義理ばっかりもちょっと寂しいな・・・」

島岡・三浦・松島・石村がそれぞれ言う。

そんな彼らに愛の手を伸ばす人がいた。

「松島く~ん」

その声に松島は振り返る。そこには楠田がいた。手には綺麗に包装した小さな箱があった。

「楠田か~なんや~」

松島はちょっと雑に言うがその顔は少し綻んでいた。

「はい、これ。家に帰ったら開けてね♪」

楠田はさっと松島にその箱を渡すと、すぐさま音楽室を出て行った。彼らには見えなかったのであるが、その顔は真っ赤である。

「なぁ~松島~」

島岡はニヤニヤしながら言う。

「な、なんや・・・」

「何時の間にそんな仲になったんや・・・こうしてくれるわ~」

「わっ、ちょっと待て。ギブ、ギブ」

島岡は一気に松島に詰め寄ると一気にヘッドロックをする。中々良い所に決まってるようで、松島はすぐタップをする。

そんな中、さらに一人の女の子が彼らに近づく。朝倉だ。

「相変わらず仲いいのね。はい、三浦君。チョコレート。結構時間かかったんだから味わって食べなさいよ~」

「え?俺?あ、ありがとう。」

三浦は突然手渡されたので驚いたがすぐさまその箱を仕舞う。島岡に見つかったら何を言われるかたまったものではないからだ。

「三浦~ええのう・・・」

騒ぎにタッチしていない石村はシミジミ言う。どこか背中が煤けた様に見える。

しかし、ここでもう一人天使が舞い降りた。

「石村先輩~」

そこに現れたのは大原であった。その両手には大きな箱を抱えている。

そんな様子を見た三浦は、大原と石村を交互に見てそう思う。

(これは・・・もしかして、もしかするのか?)

確かにこの二人。朝も部活の時間も二人っきりの時が多い。それに冬休みにも逢っていたというではないか。勘繰らない方がおかしい。

「はい♪これ・・・いつもお世話になっているお礼です。」

大原は少し恥ずかしそうにその大きな箱を石村に手渡す。石村は何だか嬉しそうだ。

「あ、ありがとな~・・・ってこれ大きすぎやしないか?ってまあいか。」

石村はちょっと不思議に思ったが、彼女のゴージャスな家を知っているだけに納得してしまう。

「さっそく開けていいか?」

「いいですよ~」

大原はあっけらかんと答える。この時点で怪しいものである。本命チョコならこっそり開けて欲しいはずなのであるが、石村は嬉しさにそんなことなど微塵(みじん)に思っていない。横で騒いでいた島岡と松島もその箱に注目する。

そこには予想通り・・・

「「「・・・でっかい、義理チョコ・・・」」」

「・・・orz」

そう、そこには1ホールのチョコレートケーキに大きく『義理』と書かれていたのであった。

しかし、ここまでは前奏。ここから一気に中間部をすり抜け再現部が始まるのである。

「はいはいは~い♪今度は私が島岡先輩にチョコを届ける出番ですよ~♪」

奏でるのは大倉だ。声と共に足音も無くその場に出現する。島岡を除く4人は一瞬飛びのくが、いつもの事なので冷静にその場を移動する。どうせ相手(いけにえ)は島岡だ。

「はい♪私の手作りのチョコですよ~♪今すぐ開けて今すぐ食べてくださいね♪」

怪しい。明らかに怪しい。特に最後の言葉が決定的である。

しかし、音楽以外まったく洞察力の無い島岡は「そうか~じゃぁ、いただきま~す。」と言ってそのチョコレートを食べた。その瞬間大倉は、妖しい笑みを浮かべてその瞬間を待った。

「おっ、なかなか美味しいな。ありがとうやで~大倉~」

島岡はそういって大倉を見る。大倉は心の中で(かかりましたね~♪)とほくそ笑む。

しかし・・・何も変化はなかった。

それでも島岡は本当に嬉しかった様で、その顔は優しい笑顔で微笑んでいる。体の割りに大きな手で大倉の頭を『クシャクシャ』と撫でたのであった。

大倉は思わずキョトンとした後、顔を真っ赤にする。

(う~ん、まぁいっか♪こうなるんだったら、無理しなくても良かったかな~?)

大倉はそう思った。が、その幸せが長く続くことは無かった。

「「「「大倉~~~~好きだ~~~~~!!!!」」」」

「え?!ま、まさか・・・」

大倉は声のする方に振り返る。そこには沢木・辻本・金沢・寺嶋・平田などなど多くの男子部員がいた。彼らはグランドピアノの上に置かれていた大倉特製の『何か妖しい薬の入った義理チョコ』を食べたのである。

この後、どうなったかは誰も多くは語らなかったという・・・


はい、バレンタインデーの一コマでした。黄金のベタベタネタでどうもすいません・・・

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