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第64話 朝練習

第64話 朝練習


朝練習・・・

このクラブでは余り盛んではない。自主練習というところもあるが、やはり朝は学校が始まるぎりぎりまで、布団の中で眠っていたいものだ。それに時間にしても知れている。8時に来たところで30分も練習できないからだ。しかし、これを毎日続ければどうであろうか?一週間6日でそれは3時間にもなる。

それを6時半という早朝からくれば・・・12時間という累積時間となるのだ。特に初心者にはこの時間は非常に大きいかもしれない・・・


「おっ、今日もきたか。」

島岡は三浦に声をかけた。

今の時間は7時。三浦はあれからこの時間に学校に来ている。

「ええ、曲の練習したいですし、結構この時間に吹くとなんか気持ち良くて・・・合宿で早朝吹いたの思い出すんです。」

「そうかそうか。まぁ、俺は日課みたいになってるからな。あんまり気にしたこと無いな。始めた頃もとにかくがむしゃらやったからな、よう覚えてへんわ。」

「一体、何時から始めてたんですか?朝練。」

三浦は聞くと島岡は「う~ん」と少し考え込む。暫くすると思い出したのか話し出した。

「・・・確か中間終わってホルンに持ち替えた頃やったから・・・去年の6月やな。さすがに1年は俺しかおらんかったわ。」

「へ~って、それから毎日ですか?」

「せやな・・・学校がない日以外は毎日かもしれんな。当時はまだ7時半位にきてたな。6時半にきだしたのは去年の今高祭終わってからや。」

三浦はその言葉を聞くと、今の島岡の演奏力は人よりも多くの練習の積み重ねでは無いかと思った。時間で言うと普通の人の倍練習していることになる。

三浦が感心してそう思っていると島岡は思い出したかのように言った。

「せやせや、お前音楽室の鍵の貰い方知らんやろ。今のうちに教えとくわ。」

「鍵・・・ですか?」

「そや。まぁ付いて来い。」

島岡はホルンを脇に抱えると渡り廊下へ歩き出した。校舎の方へ向かう。三浦もその後に付いていく。

すると前から柏原が校舎から現れた。

「よう、おはよう~相変わらず早いな。」

「まぁな。」

「おはようございます。」

「おっ、三浦もとうとう朝練組の仲間入りやな。で・・・どこかいくんか?これから。」

柏原は不思議そうに二人に言う。

「ああ、ちょっとな。音楽室の鍵の貰い方教えとこうかと思ってな。」

「あ~そやな~。知らんかったら音楽室一番乗りした時困るもんな。まぁ、この1年間はお前が主みたいなもんやからな。」

柏原は笑いながら言うと島岡は「ほっとけ。」と軽く言って柏原と別れたのである。

着いた先はいつも教室の鍵を取りに来る守衛室の前であった。

教室の鍵は廊下側にあるのでいつもは入らないが、音楽室も鍵は別であった。島岡はそのまま守衛室に入る。

「しつれいしま~す。」

島岡は元気良く挨拶をして入る。

「おや?何か忘れ物でもしたんかいな?」

そこには初老の守衛がいた。

「ちゃうちゃう~こいつに鍵の貰い方教えようと思ってん。」

「そうか~まぁ、毎日ご苦労さんやな。頑張ってな。」

「おっちゃんもな。三浦~ちょっとこっち来てみ。」

島岡は三浦を呼ぶ。三浦は軽く「失礼します」と言い守衛室に入った。

中は8畳ほどの部屋だ。手前4畳がセメントの床であり、そこには机と2脚のパイプ椅子がある。奥の4畳ほどが居間になっている。守衛はここで寝泊りするようだ。

島岡が居るのは扉から入って直ぐ横のロッカー台の前だ。そのロッカーの上に帳面があり、記入するにはちょうど良い高さだ。さらにその上の壁に多くの鍵が鎮座している。

「これに氏名と学年と受け取った時間を記入してな、鍵を取るんや。」

島岡がそういって帳面を三浦に見せる。その帳面には「島岡」の名前が並んでいる。勿論時間は「6:30」と書かれてある。

「なんか改めて見ると凄いですね。毎日6時半というのも。」

「そ、そうか~まぁあれや。楽器吹かんと一日の始まりがけえへん感じがするわ。」

「・・・で、授業中に居眠りすると?」

三浦は意地悪く答える。

「ほっとけ。」

島岡はばつが悪そうに頭をかいて言ったが、顔は笑っていた。

その後、音楽室に戻った三浦たちは再び練習をする。

「うん、そこはええ感じになってきたな。」

「ありがとうございます。」

「しかし・・・ここは難しいな。」

「ですよねぇ。」

島岡が指をさした箇所を三浦も見て頷く。そこは、『エルカミ』の木管との旋律前のところだ。ちょうど旋律の繋ぎの所であり、吹き伸ばしの前に16分音符が高音で動いている。それも厄介なところがユニゾンではなく和音なのである。

「デモテープでここ聞いたんですけど、やっぱり揃わないと聞こえが悪そうですね。」

「せやな~この『タンタララー』は外せんよな。前半の最後の盛り上がり前の重要なとこやし。決まるとめっちゃかっこええしな・・・まぁ、気長に練習して合わすしかない・・・」

「おはようございます。」

島岡と三浦が話していると、誰からか挨拶された。まだ8時少し前であろうか。声をかけられた方を見ると、そこには大原がいた。

「おはよう~」

「おはよう~早いな~どうしたんや。」

三浦は軽く挨拶を、島岡は少し不思議に思いながら挨拶をした。

「えとですね。石村さんに早くうまくなりたいと言ったら、朝練に誘われまして・・・」

「あ~なるほどな。ええこっちゃええこっちゃ。今は1分でも多く吹くことが大切やからな。で、石村さんは何時にくるんや?」

島岡は納得するとそう大原に聞いた。

「8時前に来るって言ってましたけど・・・まだ来てません?」

「まだ来てないですね。」

三浦が大原の問いに答える。

「まぁ、ええ。とりあえず石村さん来るまで見といたるから、楽器持ってき~や。」

「はい」

大原は元気良く答えると音楽室へと上がって行った。

「あれやな・・・」

「なんです?」

「お前うかうかしてたら大原に抜かれるで~しっかりきばり~や。」

「は、はい」

島岡の激に三浦は背筋を伸ばして答えるのであった。


ちなみに、石村が音楽室に現れたのは8時15分になった頃であった。

「すまん、すまん・・・久しぶりすぎて目覚まししとくの忘れたんや~」

との事である。


三浦もようやく朝練習に参加するようになりました。大原も早く上手くなろうと必死ですね。あれ、何か忘れているような・・・松島「俺や俺。」

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