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第59話 え?この時期に?

第59話 え?この時期に?


『合同』のメインも決まったが、まだ譜面は届いていない。

そんな中間試験の1週間前に入ろうかという日であった。

教室では、三浦・松島共にが『エル・カミーノ・レアル』に悪戦苦闘している。今は島岡は用事で音楽室にいる為個人練習だ。

三浦は初めの旋律部分はなんとかできるようになったので、指回しの難しいところである、木管との旋律部分を練習する。

「くそ~なんやここは。木管と同じ指回しって・・・」

「ぼやくなぼやくな。俺なんてまだ初めの所もできてへんねんやから・・・」

松島にいたってはまだ初めの旋律部分に悪戦苦闘中だ。16分音符が絡むところがインテンポでできていない。本当にこの曲は、速いテンポでやたら16分音符が出てくる。

「120位でやったらできるんやけど、インテンポでやったら音がぐちゃぐちゃになるもんなぁ。」

三浦がそうぼやくと教室の扉が「ガララッ」と開いた。島岡である。

三浦と松島はその方向に向くと、島岡の他にもう一人見たことが無い女の子がいた。

女の子・・・そう、まさしく女の子だ。身長がかなり低い。部員の中で一番低い大倉より低いのではないだろうか。まるで中学・・・いや下手すれば小学生に見える。

「お~やっとるやっとる。どんな感じや~」

「ええ、まぁ、ぼちぼちやってますけど・・・それよりその子は?」

「まさか、お前の隠し子ちゃうんやろうな?」

「松島・・・お前よう判ったな。」

「「ええ~~~~~~!!」」

島岡の言葉に絶叫をする二人。しかし、島岡はニヤニヤ顔だ。その女の子も「クスクス」と笑っている。

「嘘に決まってるやろうが・・・まったく。」

「で、ですよね。あ~びっくりした。」

「じゃぁその子は誰の子供や。」

松島はさらに言う。

「まだ言うか~そろそろ失礼にあたるっちゅ~もんや。この子はな・・・」

島岡の紹介をする前に、その女の子が話し出す。

「1年の大原 亜由美といいます。今日からこのパートに入ることになりました。よろしくお願いします。」

「へ~そうなんや。よろしく~」

「よろしくな。」

ぺこりと元気良く挨拶した大原に、2人は軽く挨拶をする。

「ちゅ~わけでや、俺は大原さんを教えるから、二人とも後は頼んだで。」

挨拶が終わったと思った島岡はそう二人に言った。

「分かりました。」

「ごゆっくり~」

二人はそれぞれ島岡に声を掛けた後、島岡は大原を連れて教室を出たのであった。


「しかし、この時期に入部なんてあるんですね。」

三浦は少し不思議そうに言う。

「あほか~俺も去年この時期に入ったぞ?」

「あ、そういえばそうでした・・・」

三浦は頭を掻いてごまかした。

「それに、辻本も楠田も同じ時期やで~」

「・・・ということは、案外この時期に入る人って多いんですね。」

「そういうこっちゃ。」

松島はなぜかちょっと威張りながら言った。その時、三浦はちょっと疑問があったので松島に聞いてみた。

「松島先輩はこの部に入った動機ってなんだったんです?」

「えっ・・・せやな~」

松島は暫く考えてからちょっともったいぶって答える。

「ほら・・・今高祭で吹奏楽部演奏してたやろ・・・」

(へ~演奏に感動して入ったのか・・・)

三浦は松島の言葉でそう予想したが・・・

「その時な、演奏してる女の子がやたら多かったから・・・って何やそのがっかり顔は・・・」

「ええ・・・予想通りの答えでがっかりです・・・」

三浦はそういうと、そそくさと個人練習の続きを始めるのであった。

松島も同じく楽器を持ち、譜面とにらめっこを始める。

(演奏聞いて感動したから入った、って臭いこと言えるかいな・・・)

松島はそう心の中で思いながら個人練習を行うのであった。


(困った・・・)

いつもの渡り廊下で島岡は大原と二人でいた。大原は今からどんな練習を始めるのか、少し期待している顔である。しかし横の島岡は困った顔をしていた。なぜ困っているかというと・・・

(腹式どうやって教えよう・・・)

そう、腹式呼吸を教える場合はお腹を触ったり手本の為に触らせたりと、ちょっとしたスキンシップがあるのだ。

但し、それをちょっとラッキーと思うか、気恥ずかしいと思うかは人それぞれである。

島岡は自分が触られる分なら全然平気なのであるが、自分から女の子に触るとなると恥ずかしいのだ。

だが、いつまでもぼーと突っ立っている訳にはいかないので、意を決して行動に出る。

「ふ、腹式~」

「腹式?」

いきなりの島岡の発言に大原は思わず復唱する。

(おちつけ、おちつけ~)

島岡は必死に気を落ち着かせる。

「いやあのな、楽器吹くときは腹式呼吸ちゅう~のがあってやな・・・」

「ええ、知ってますよ。」

「へ?!」

大原の言葉に島岡は気の抜けた声を出す。ちょっと間抜けだ。

「言ってなかったでしたっけ?私、中学の時合唱部だったんです。この学校、合唱部ないから吹奏楽部に入ったんです。」

「なるほど。じゃぁなんでこの時期に入ったんや?」

島岡はふと思った疑問をぶつけてみた。

「え~とですね、今高祭の演奏聞いて私もやってみたいと思って・・・」

「それは・・・なんか光栄やな。」

島岡は頭を掻きながら答えた。

そうやって和んでいると大原は何かを思い出したかのように言った。

「あっ、そうそう腹式でしたね。こうしたらできてるか良くわかりますよ。」

「へ?!」

いきなり大原は島岡の手を掴むと自分のお腹の上に持っていく。手がお腹の上にあることを確認した大原は腹式呼吸を始めた。さすがに元合唱部、完璧な腹式である。しかし、島岡はいきなりの展開に顔を赤くしている。

そんな様子を見た大原もちょっと顔を赤くした。

「もう、先輩がそんな顔してたら私まで恥ずかしくなるじゃないですか。」

「あっ、そうか、すまんすまん。」

島岡はそう言うと手を引っ込めるが、気を取り直してゆっくりと大原のお腹に触る。

それを確認して大原は再び腹式呼吸を始める。

「お~すげ~、完璧や~」

島岡は体の割にしっかりとした腹式を確認し、手を離す。

大原も島岡の言葉で満足したのかニコニコ笑顔を向けた。

「でしょ~、中学のとき結構頑張ったんですから。」

「そやな、じゃぁ早速マッピで練習するか~」

「はい!」

大原は元気良く答えると島岡から渡されたホルンのマウスピースを手に取るのであった。


そんな二人の様子を遠くから見詰める一人の女子がいた。頭には何故か画用紙で書かれた草むらの被り物をしている。

「あ、あれは唯の練習なんだから・・・ま、負けないもん」

誰かは敢えて書かないでおこう・・・

ホルンパートにもう一人の1年生が登場です。実際、この時期に入部する人が多かったです。今高祭効果でしょうか・・・

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