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第53話 次の主役たち

第53話 次の主役たち


『合同』の単独のメイン曲が決まってから数日が過ぎた。まだ、楽譜は調達できていない。しかし、この音楽室では相変わらず部員が集まっていた。しかし、そこには2年は岩本が一人のみ。後は1年である。


「じゃぁ、次期の役職決めましょうか。」

岩本がそういうと、役職の名前を黒板に書く。

部長・副部長・マネージャー・会計・楽器係・楽譜係、あと欄外として企画と書く。横には別系統として指揮者と書いた。

「じゃぁ、各役職を説明するわね。」

コホンと一つ咳払いすると続けて話す。1年たちは集中して聞く。

「部長は言うまでも無いわね、このクラブの代表者よ。今は南川君ね。副部長がその補佐、古峰さんがしているわ。そして、マネージャーが雑務全般と対外の交渉役ね。僭越ながら私が担当しています。最後は、技術系の要として指揮者。柏原君がやっているわ。この4人で執行部として、部の運営の中心となるわ。何か質問はある?」

岩本がそういうと周りを見る。現在、担当している人の名前も挙げながら説明しているので把握しやすい。特に無いようである。そのまま話を続ける。

「じゃぁ続けるわね。会計は部費の集金と管理。三村さんと金沢君が受け持っているわ。楽器係は楽器運搬及び楽器の管理と調達ね。島岡君と伊藤さんが中心となって甲斐さん・松島君・沢木君が担当しているわ。そして、楽譜係は楽譜の管理と調達になるわ。坂上君が中心で、犬井さん・辻本君・楠田さん・山郷さん・中嶋君ね。この3つの係は今言った通り複数人で受け持つわ。必ずどれかに所属すること。制限としては、会計は多いと逆に管理がしにくいので2人まで。あと、楽器係はパーカッションの誰か一人が絶対受け持つこと。こんなところね。」

説明を聞いた三浦はふと思い、質問した。

「下の企画ってなんですか?」

それを聞いた岩本は、失敗失敗という顔で説明した。

「ごめんごめん、忘れてたわ。企画は臨時の係なのよ。」

「臨時ですか?」

三浦はちょっと首を傾げて聞きなおす。

「企画は、『合同』の2部の為にある係で、2部の構想を練る係なのよ。この企画が出した内容で2部をするわけ。だから、ここだけは他の係と重複するのよ。」

岩本が言った後、再び三浦が聞く。

「じゃぁ2年では誰が企画なんですか?」

「柏原君と島岡君と辻本君と山郷さんね。指揮者は必ずここに入るわ。」

「な、なんかすごい組み合わせの様に聞こえるんですけど・・・」

小路が思わず口に出す。

「そ、そうね・・・でも、柏原君と島岡君は1年の時も企画だったからベテランといえばベテランよ。」

「へ~」

思わず三浦は感嘆の声を上げる。あの人のことだ。「めんどくさい、じゃまくさい」と言って放り出すんじゃないかと思っていた。本当に、楽器以外のとこには無頓着なのである。きっと柏原が、首根っこを引っ掴んで参加させているのであろう・・・

「とりあえず、企画は後でいいから。まずは部長を決めてね。この先の進行は部長にしてもらうから・・・」

「「え~」」

1年たちはぶつくさ言う。当然だ、ある意味厄介ごとを押し付けられるからだ。

「はいはい、ぶーぶー言わない。じゃぁ、立候補いないかしら。推薦でもいいわよ?」

その声を聞くと皆は一気に静かになる。お互いが顔を見ていた。

「三浦~お前いけよ~」

「え~俺は会計したいんや。鈴木がいけよ~」

二人は小声で押し付けあう。そのとき一人が手を上げる。

「あら、朝倉さん。立候補でいいのかしら?」

岩本がそう聞くと、朝倉は大きく「はい!」と言う。

三浦は思わず朝倉を見て感心してしまった。一番責任が重い役職を自ら立候補したからだ。

「うん、やりたい人がやるのが一番いいからね。他にはいない?」

しかし、他には手が挙がらなかった。

「一応、部の代表になるから、信任の決取るわね。朝倉さんでいいと思う人、拍手して。」

三浦は拍手をする。初めはパチパチと・・・だがやがて大きな拍手となる。満場一致だ。

「じゃぁ、朝倉さん。あと頼むわね。」

岩本がそういうと、黒板の部長の下に『朝倉』と書き音楽室をでるのであった。


「じゃぁ、次に重要な『指揮者』決めちゃいましょう。」

朝倉は軽く言ったが、毎年これがなかなか決まらない。

大体、指揮者というのは今まで中学からの経験者がなっている。例外的には現指揮者の柏原だが、彼はもともとエレクトーンを習っており、音楽とは長年の付き合いなのである。

それを考えると、今の1年に該当するのは大倉・近藤・浅井の3人だ。そして、パートの人数を考えると浅井が一番適任なのだが・・・

「推薦いいですか?」

丸谷が手を上げる。

「いいわよ。誰かしら?」

「三浦君がいいと思います。」

その声を聞いた三浦は「ぶっ!」と吹く。なぜ俺なのかと・・・

「理由はあるのかな?」

朝倉がそう聞くと丸谷はゆっくり答えた。

「え~とですね。合宿で私たち1年だけでアンサンブルしたんだけど・・・ほとんど三浦君の指導であそこまで吹けるようになったの。それが理由かな・・・」

「さすが、あの人の一番弟子ねぇ。」

朝倉は答えを聞くと納得したように言った。

(い、一番弟子って、俺しかおらんやん・・・このままやったらまずい)

そう、三浦は指揮者になるほどまだ腹を括っていないのである。

「推薦いいですか?」

三浦は必死に手を上げる。

「・・・いいわよ・・・」

ちょっと朝倉はジト眼で言った。

「近藤さんがいいと思います。理由は、中学からの経験者だからです。以上。」

三浦は、そそくさと答えると座る。

「え~それじゃ、私は大倉さんを・・・」

「じゃぁ私は浅井さんを・・・」

近藤・大倉が声を上げる。ある意味責任の擦り付けあいである。

「ちょっと待ってよ!!」

朝倉が大きな声で皆を静める。

「確かに、指揮者は大変だと思うの。でも、指揮者だけで演奏するわけでもないし、先輩やOBさんの力を借りれるのよ?もう少し考えて発言して!」

その言葉に皆何も言えなかった。三浦も考える。さっきよりも遥かに前向きにだ。

(果たして、俺にできるんか。指揮者・・・)

だが、彼の自己決定より早く手を上げたものがいた。

「私、やるわ。指揮者。」

近藤であった。その目には揺らぎない信念が宿っているようである。

「近藤さん・・・ありがとう。」

朝倉はちょっと感動しながら言った。

「他にはいない?」

朝倉は再び皆を見るが、それ以上手を上げるものはいなかった。

三浦も先を越されてか、気後れして手をあげずじまいだ。

「じゃぁ、信任取るわね。近藤さんが指揮者でいいと思う人、拍手して。」

その言葉に皆一斉に拍手する。三浦も惜しみない拍手を送る。そしてふと思った。

(ああ、そうか・・・だから、柏原さんに何言われても2年の人たちは皆付いて行くんだな・・・)

三浦は改めて納得すると、今後、近藤から何か言われても、成し遂げようと心の中で誓うのであった。


その後、他の役職はとんとん拍子に決まっていく。

次期体制は以下の通りである。


部長:朝倉 佳代子

副部長:大倉 里美

マネージャー:犬山 明日香

指揮者:近藤 海晴

会計:三浦 浩一・丸谷 美香子

楽器係:大原 忍・小路 篤志・鈴木 健二

楽譜係:浅井 清美・古河 直子・原 祥子

企画(臨時):三浦 浩一・近藤 海晴・鈴木 健二


本来ならば、来年の4月以降にこのメンバーで望むのであるが、案外早くも動くこととなる。

それは『おみやげ会』とうイベントがあるからである・・・


さて、次期の役職が揃い踏みました。各係りは、合同まで先輩に仕事を教えてもらいながら次期につなげます。しかし、『おみやげ会』とは一体・・・

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